物語や人との距離に関心がある人におすすめ
物語って何のためにあるんでしょう。
現実とは異なる架空の出来事ですし、読んだからといって、明日からの人生に役立つわけでもありませんし。
小説家の小川洋子さんは言います。
人は、生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶していくという作業を、必ずやっていると思うんです。(p.45)
身近な人の死や失恋など、自分ではどうすることもできないことに直面したとき、物語の力は発揮されます。
物語や人との距離について、関心がある人におすすめです。
正論では傷は癒えない
臨床心理学者の河合隼雄さんは言います。
「なぜ死んだのか」と問われ、「出血多量です」と答えても無意味なのである。その恐怖や悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる。死に続く生、無の中の有を思い描くこと、つまり物語ることによってようやく、死の存在と折り合いをつけられる。(p.126)
医師から告げられる死因では、傷は癒えません。
その人に寄り添い、自分なりの物語を思い描くことで、折り合いをつけていくしかないのでしょう。
誰しもが物語を描くので、ここでいう物語は小説に限りません。
人を助けるときに
人を助けに行く人はね、強い人が多いんです。(中略)助けられる方はたまったもんじゃないんです。そういう時にスッと相手と同じ力になるというのは、やっぱり専門的に訓練されないと無理ですね。(p.14)
仕事のことを思い出しました。
仕事を教えるときに、相手と同じ力になっているだろうか。
私はできていないような気がします。丁寧な言葉を使っていても、相手と同じ力にはなっていません。
「ここ、私もよく間違いそうになるんです」とか「ここ難しいんですよね」とか、ささいな一言でも、相手にとっては支えの一つになるかもしれません。
相手と同じ力になることを意識しようと思います。
死ぬ自覚を持てばやさしくなれる
やさしさの根本は死ぬ自覚だと書いてます。(中略)あなたも死ぬ、私も死ぬ、ということを日々共有していられれば、お互いが尊重し合える。相手のマイナス面も含めて受け入れられる。(p.30)
人間はいつか死ぬ。それは共通していることです。
でも、自分がいつか死ぬなんてあまり考えないですよね。
嫌なあいつもいつかはどうせ死ぬんだと思えば、少しは楽になるかもしれませんね。