ファンになった理由
村上春樹さんはヤクルト・スワローズのファンです。
高校までは神戸に住んでいたので、阪神タイガースのファンだったそうですが、上京を期にスワローズファンになったそうです。
住んでいる場所から最短距離にある球場で、そのホームチームを応援する――それが僕にとっての野球観戦の、どこまでも正しいあり方だった。(p.48)
近さが条件のようです。読売ジャイアンツの球場が一番近かったようですが……。
村上さんは、野球をテレビで見るより、球場で見る方を好みます。
テレビで試合を見ていると、いつも何かいちばん大事なものを見逃しているような気がする。つまりセックスに喩えれば……いや、それはやめよう(p.46)
小説というより、エッセイです。
以下に興味がある人におすすめです。
- スワローズファン
- 野球好き
- 軽く読めるエッセイ
- 弱者
ヤクルト・スワローズ詩集を自費出版
村上さんは作家になる前、ノートとペンを持って球場へ行き、試合の中断している間に、詩(と呼ばれるもの)を書いていました。
それを書き溜めたものが『ヤクルト・スワローズ詩集』(本作とは別)です。
作家になってから、自費出版しました。
以下は、掲載されている一部のタイトルです。
- 右翼手
- 鳥の影
- 外野手のお尻
- 海流の中の島
出版年は1982年で、村上さんが作家になって3年目、『羊をめぐる冒険』を出版する前くらいです。
500部刷って300部ほど売れ、残りは知り合いに配り、村上さんは2冊所有しているそう。
今は相当な値段が付いているのだろうと、検索をかけてみましたが、実物はヒットしませんでした。
実在するなら、是非読んでみたいです。
負けに備える
ファンの方には申し訳ないですが、ヤクルト・スワローズに強い印象はありません。
だからなのか、村上さんは、負けているスワローズに、まあしょうがないというまなざしを向けているように見えます。温かく見守っています。
負けているときには、「まあ人生、負けることに慣れておくのも大事だから」と考えるようにしていた。(p.49)
(中略)
人生は勝つことより、負けることの方が数多いのだ。そして人生の本当の知恵は「どのように相手に勝つか」よりはむしろ、「どのようにうまく負けるか」というところから育っていく。(p.50)
自身の作家人生を言っているように感じました。
芥川賞を二度落選していますし、ノーベル賞を受賞するではないかと毎年期待されていますが受賞していません。
そうした負けのときに、感情的になるのではなく、まあそういうものだろうと受け入れることが大事なのでしょう。