芥川賞は、今村夏子『むらさきのスカートの女』
今村さんは受賞すると思っていなかったようです。
(受賞会見から)
(受賞は)驚きました。とても嬉しいです。
手応えは正直ありませんでした。自分らしいものが書けたなというのはありました。
(芥川賞は)とても手の届かない、一生取れないもの。
今村さんのような、賞をいくつも受賞している作家でも、謙虚で低姿勢なんですね。
意外なのは、小説を書くのがそこまで好きではなさそうなことです。
(受賞会見から)
書くのはすごくつらいですし、嫌だと思うことの方が多いですけど、楽しい。
集中している一瞬が楽しくて、またその楽しさを味わいたくて書いている感じです。
今村さんは、太宰賞、三島賞、芥川賞を受賞しましたが、この3人の文豪の作品はあまり読んだことがないらしいです。
(受賞会見から)
芥川龍之介の本は知りません、すみません。
芥川の小説を読んでいなくても芥川賞を取れる今村さん、すごいです。
選評
選考委員の小川洋子さんの会見は、産経新聞の記事からの引用です。
今村作品が最初の投票で過半数を獲得し、2回目の投票でさらに点数を伸ばしました。
最初の投票では、高山羽根子さんの『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』と、李琴峰さんの『五つ数えれば三日月が』の2作品を強く推す選考委員もいました。
今村作品は、常軌を逸した人間本人を語り手にして描いています。
選考委員からは「こういう奇妙な世界を描けるのは今村さんだけだ」という意見もありました。
狂気を突き抜けた先にある哀れさのようなものを描ける人だと再認識できました。
受賞予想が当たりました。
私は『むらさきのスカートの女』に○、『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』と『五つ数えれば三日月が』に△を付けました。決選投票の3作と同じです。
自分の読みに自信を持つことができました。
詳細はこちらです。
今村さんの『むらさきのスカートの女』の感想はこちらです。
直木賞は、大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』
今村さんと同様、大島さんも受賞に驚いていました。
(受賞会見から)
びっくりしています。あまり実感はないです。
大島さんは、中学3年生で文筆家になると決めていたようです。
(受賞会見から)
なぜだかわからないけど(今まで)書いてきた。
あんまり苦労していなくて、書けちゃったんですけど。
(小説の)結末を決めないで書いている。
今村さんと違い、書くのが好きな人という感じが伝わりました。
選評
選考委員の桐野夏生さんの会見は、NHKの記事からの引用です。
最初の投票で朝倉かすみさんと大島真寿美さん、窪美澄さんがの3作が、過半数までいかないがきっ抗した点数で抜きん出て、このほかの3作は最初の選考で外れた。
柔らかな大阪弁の語り口がすばらしいと絶賛する意見があった。
作品世界が成熟していて、観客の心をつかんで、別世界のように生き生きと生きていくところがすごくリアルで、そこがおもしろいという意見があった。
私の第161回芥川賞の予想はこちらです。
芥川賞・直木賞を予想した番組、ラジオ日本『大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想篇)』の感想はこちらです。