いっちの1000字感想文

一応平成生まれ。主に読書感想文を書いてます。

Happy Birthday and White Christmas 村上春樹『風の歌を聴け』(群像新人賞受賞)の感想(1000字)

Happy Birtday and White Christmas

 『Happy Birthday and White Christmas』は、村上春樹さんが本作を応募したときのタイトルです。

 受賞の段になり、タイトルが『風の歌を聴け』に変更されたそうです。

 なぜ、変更されたのかはわかりません。

 確かに『風の歌を聴け』の響きはかっこいいです。

 ですが、物語の内容からすると、『Happy Birthday and White Christmas』が合っていると思うのです。

 どうしてか。

 鼠という主人公の友人が、自作の小説を主人公に送るという箇所に理由があります。

 原稿用紙の一枚目にはいつも、

ハッピー・バースデイ、

 そして

 ホワイト・クリスマス。」

と書かれている。(p.154)

 本作は、鼠という主人公の友人が描いた小説という設定なのです。

 なのに、『風の歌を聴け』にタイトルを変えたらどうでしょう。

 鼠の書いた小説とはなりません。

 ですが、村上さんがしたたかなのは、表紙のカバーを見ていただければわかります。

 『Happy Birthday and White Christmas』と書かれているんですね。

 村上さんはタイトルを変更するのが嫌だったのでしょう。

 しかしこのときは新人ですから、編集者の意見を拒否することはできなかったと推察します。(完全に妄想です)

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

 

一言あらすじ

 東京の大学に通う主人公は、夏の帰省の間、友人の鼠とバーでビールを飲み、小指がない女の子と仲良くなる。退屈な日常を過ごし、東京へと戻っていく。

 

主要人物

  • 僕:東京の大学に通うが、実家に帰省している
  • 鼠:僕の友人。小説を書く
  • 小指のない女の子:僕がバーで介抱した女の子

 

鼠が描いた小説なのか

 毎年クリスマスに、鼠は主人公に小説を送ります。

あい変わらず彼の小説にはセックス・シーンはなく、登場人物は誰一人死なない。(p.154)

 鼠の描く小説であれば、この二つが当てはまります。

 まず、 セックス・シーンはありません。主人公は小指のない女の子とその直前までいくのですが、そういう描写はありません。

 また、誰一人死なないというのも当てはまります。

 小指のない女の子は、堕胎をするのですが、お腹の子供が「登場」人物かというと、本作には登場していないので、鼠の小説の条件に当てはまります。

 とはいえ、この作品が、鼠が主人公にあてた小説だとして、それが何を意図しているのでしょう

 一つ考えられるのは、鼠が主人公の過去を知り尽くしていることから、よほど二人は親密(お互いのことを話すことしかすることのない、退屈な日常を送っている)ということです。

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)