披露宴の滑稽さを高めるため全力で働く
神前酔狂宴を文字どおり読むと、神の前で酔い狂う宴。
主人公は、結婚披露宴の会場の派遣スタッフです。
結婚披露宴って何?(中略)なんでみんな、結婚を披露するの?(p.40)
そう思いながら、時給が高いので働いています。
ただし、斜に構えて働いてるわけではありません。
新郎新婦の愚かしさ、披露宴の滑稽さを限界まで高めることこそ我が使命と考えるようになり、全力で働くようになった。(中略)心の底からくだらないと思うからこそ尊ぶようになった。(p.41)
仕事ぶりが周りから評価されていきます。
式を挙げた人から、名指しで感謝されるようにもなります。
そんな主人公の前に、「自分の本心と結婚したい」女性が現れます。
以下に興味がある人におすすめです。
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- 頑張りたい人
一言あらすじ
結婚式場の派遣スタッフとして働く主人公は、披露宴の滑稽さを高めるため全力で働く。主人公のもとに、自分の本心と結婚したいという女性が現れる。
主要人物
- 浜野:結婚式場の派遣スタッフ
- 梶:浜野の同期
- 倉地:椚神社から働きに来る女性
- 千帆子:自分の本心と結婚したい女性
教えを請う大切さ
全力で働く浜野や梶は、働かない人が目につきます。
それは、椚神社から働きに来る人たちです。
椚神社とは昔からの付き合いで、働きに来る人を受け入れていました。
ですが、ほとんど仕事をしないだけでなく、導線に立っていたりするので邪魔です。
そんなとき、椚神社から働きに来た倉地が、浜野や梶に教えを請います。
どんなふうにしたらいいのか、教えてもらえない? 配膳の基本とか、動き方とか、高堂ふうのやり方とかそういうこと。(p.63)
倉地は、自分たちが足を引っ張って嫌われていることを知っています。それを変えたいと訴えます。
浜野や梶は、快く応えます。
技術を吸収した倉地が、戦力にならなかった椚神社の人を変えていきます。
すると逆に、式場スタッフが、椚神社の人に飲み込まれていきます。
誰に何を誓うのか
永遠の愛を神に誓う。
結婚式で、疑問の余地なく行われる儀式です。
千帆子は疑い、結婚を考えた人に言います。
仮にも神の前に立って、変わらないとは誓えない。自分自身にもあなたにも誠実でいたいと思うからこそ、未来永劫あなたを愛するとは誓えない。(p.111)
千帆子は、自分の本心と連れ添っていきたいと考えます。
そのために式を挙げるのは、馬鹿げているとわかっています。
何のために祈るのか、何のために誓うのか。
祈られた神、誓われた神はそれを望んでいるのか。
当たり前だと思っていたことに、待ったをかける作品です。
調べた言葉
偉勲:すぐれた功績
軍神:戦死した軍人を神とあがめていった語
恭しい:丁重に振る舞うさま
六曜:吉凶を定める基準の、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口
旧弊:古い慣習からくる弊害
居直り強盗:こっそり盗みに入った者が、家の人に見つかり急に強盗に変わること
爆心地:爆発の中心地
魑魅魍魎(ちみもうりょう):山の怪物、川の怪物。さまざまなばけもの
胡乱(うろん):怪しく確かでないさま
空隙(くうげき):すき間
つれない:思いやりがない
滾る(たぎる):激しくわき上がる
志士:高い志をもって国家・民族のために尽くそうとする人
手合い:連中
烏合(うごう)の衆:規律も統制もない群衆
カニバリズム:人の肉を食うこと
第41回野間文芸新人賞の候補作についてはこちらです。