いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『カタストロフ』町屋良平(著)の感想【会社の部活に熱心な社会人】

会社の部活に熱心な社会人

 部活が楽しみで、中学校や高校に通っている学生は多いでしょう。

 では、部活を楽しみに会社に通う社会人はどれくらいいるのでしょうか。

 私の周りにはいません。

 仕事が終わったら、なるべく早く帰りたいです。

 飲み会に行くと仕事の話になるし、仕事を思い出してしまいます。

 主人公は、バドミントン部の活動を楽しみに会社に通っています。

 出版社の新入社員ですが、営業成績を気にせず、部活を楽しみに生きています

 新入社員同士でダブルスを組んでおり、二人には暗黙のテーマがあります。

たかが会社の部活をどれほどの熱意でつづけていくのか(p.303)

 「たかが会社の部活」と思わないで、熱意を持ち続けるモチベーションはどこからくるのでしょうか。

 どうせ部活だし楽しければいい! と思いたくなりますが、二人はそうではありません。

 以下に興味がある人のおすすめです。

  • 会社の部活
  • バドミントン
  • 記憶
文藝 2019年冬季号

文藝 2019年冬季号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/10/07
  • メディア: 雑誌
 

一言あらすじ

 出版社に就職した主人公は、バドミントン部に入りダブルスを組む。「たかが会社の部活」と思わず、部活動に励む。

 

主要人物

  • 鳥井:出版社で勤務する。バドミントン部で菅とダブルスを組む
  • 菅:出版社で勤務する。バドミントン部で鳥井とダブルスを組む

 

二人の境界線

 鳥井と菅は、

  • 出版社の同期
  • ダブルスの相手

 ですが、それ以上に二人には共通点があります。

共通の記憶があって、台風の日に波にさらわれた男の子の映像をみたっていう。それと、小学校以外の記憶がない。毎日の記憶がないんです。

(中略)

おれたちのどちらかが、或いは片方が死んでいるみたいです(p.319)

 鳥井と菅の境界線は、あいまいです。

 文中に「鳥井は」とか「菅は」があればわかりますが、主語が書かれてないと、どちらのことを言っているのかわかりません。

 それが悪いわけではありません。

 いろんなものが混じり合っているような感覚を抱かせ、ふわりとした町屋さんの文章に合っています。

 では同一人物なのかというと、そうでもありません。

 最初は二人の違いがわからなかったですが、しだいにわかってきます。

 外から見ると似た者同士でも、読んでいると、二人の違いに気づいていきます。

 

カタストロフの意味

 二人の違いがはっきりしていった結果が、タイトルの「カタストロフ」につながっている気がします。

 「カタストロフ」とは、悲劇的な結末です。

 出版社で働いて、部活をする生活の、先にある悲劇とは何でしょう。

 やわらかな文章が、カタストロフを隠しています(和らげています)。

 ただ、バトミントンをしている二人の姿にあるのは、であり、うらやましいほどの没頭でした。 

文藝 2019年冬季号

文藝 2019年冬季号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/10/07
  • メディア: 雑誌
 

調べた言葉

断罪:罪をさばくこと

ひろやか:広々としているさま

稚気(ちき):子供っぽいようす

剣呑:あぶないさま

カタストロフ:悲劇的な結末