会社の部活に熱心な社会人
部活が楽しみで、中学校や高校に通っている学生は多いでしょう。
では、部活を楽しみに会社に通う社会人はどれくらいいるのでしょうか。
私の周りにはいません。
仕事が終わったら、なるべく早く帰りたいです。
飲み会に行くと仕事の話になるし、仕事を思い出してしまいます。
主人公は、バドミントン部の活動を楽しみに会社に通っています。
出版社の新入社員ですが、営業成績を気にせず、部活を楽しみに生きています。
新入社員同士でダブルスを組んでおり、二人には暗黙のテーマがあります。
たかが会社の部活をどれほどの熱意でつづけていくのか(p.303)
「たかが会社の部活」と思わないで、熱意を持ち続けるモチベーションはどこからくるのでしょうか。
どうせ部活だし楽しければいい! と思いたくなりますが、二人はそうではありません。
以下に興味がある人のおすすめです。
- 会社の部活
- バドミントン
- 記憶
一言あらすじ
出版社に就職した主人公は、バドミントン部に入りダブルスを組む。「たかが会社の部活」と思わず、部活動に励む。
主要人物
- 鳥井:出版社で勤務する。バドミントン部で菅とダブルスを組む
- 菅:出版社で勤務する。バドミントン部で鳥井とダブルスを組む
二人の境界線
鳥井と菅は、
- 出版社の同期
- ダブルスの相手
ですが、それ以上に二人には共通点があります。
共通の記憶があって、台風の日に波にさらわれた男の子の映像をみたっていう。それと、小学校以外の記憶がない。毎日の記憶がないんです。
(中略)
おれたちのどちらかが、或いは片方が死んでいるみたいです(p.319)
鳥井と菅の境界線は、あいまいです。
文中に「鳥井は」とか「菅は」があればわかりますが、主語が書かれてないと、どちらのことを言っているのかわかりません。
それが悪いわけではありません。
いろんなものが混じり合っているような感覚を抱かせ、ふわりとした町屋さんの文章に合っています。
では同一人物なのかというと、そうでもありません。
最初は二人の違いがわからなかったですが、しだいにわかってきます。
外から見ると似た者同士でも、読んでいると、二人の違いに気づいていきます。
カタストロフの意味
二人の違いがはっきりしていった結果が、タイトルの「カタストロフ」につながっている気がします。
「カタストロフ」とは、悲劇的な結末です。
出版社で働いて、部活をする生活の、先にある悲劇とは何でしょう。
やわらかな文章が、カタストロフを隠しています(和らげています)。
ただ、バトミントンをしている二人の姿にあるのは、無であり、うらやましいほどの没頭でした。
調べた言葉
断罪:罪をさばくこと
ひろやか:広々としているさま
稚気(ちき):子供っぽいようす
剣呑:あぶないさま
カタストロフ:悲劇的な結末