いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いています。

『幼な子の聖戦』木村友祐(著)の感想【幼なじみの選挙を妨害】(芥川賞候補)

幼なじみの選挙を妨害

 地元の村長選に、幼なじみが立候補しました。

 現職の村長が、スキャンダルを期に辞任したからです。

 村議会議員をしている主人公は、幼なじみを応援する予定でした。

 ですが、村の有力者の応援を受けて対立候補が出馬し、その応援者から、主人公はあることを引き合いに脅されます

 主人公は、対立候補の応援者の妻と不倫関係にあったのです。

 人妻クラブというサークル(女3人男7人)がきっかけでした。

そういう抜け穴のようなものがないと、この村の暮らしに、というより、何かをなしとげることはもうないとわかっている自分の人生そのものに耐えられなかった。(p.13)

 しかし、不倫現場をとらえられ、脅されます。

  • 同級生全員に、対立候補に投票するよう声を掛けること
  • 幼なじみのイメージを落とすこと

 それをしなければ、不倫現場の動画がネットに流されます。主人公の議員生活は終わるでしょう。

 無所属新人の幼なじみにそこまでしなくても、村の有力者の応援を受けた対立候補が村長になるとは思いますが、幼なじみは女性や若者を中心に支持者を拡大していきます。

女の人の知恵を貸りたい、ではなくて、女の人自身が政治を動がすんです。(中略)女の人だぢが住みよい村は、おらだぢ男にとっても住みよい村になるはずだがらです。(p.51)

 主人公は、同級生たちに対立候補への投票を呼びかけ、イメージを落とすため怪文書を送ります。

 以下に興味がある人におすすめです。

  • 仕事と友情
  • 田舎の選挙
  • 信念 
幼な子の聖戦

幼な子の聖戦

  • 作者:木村 友祐
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

一言あらすじ

 村議会議員の主人公は、村長選挙に立候補した幼なじみを妨害するよう、脅された。対立候補の応援者に弱みを握られたからだ。主人公は同級生に対立候補への投票を呼びかけ、イメージダウンの怪文書を作成する。

 

主要人物

  • おれ:主人公。
  • 山蕗:主人公の幼なじみ。村長選に立候補する

 

仕事と友情

 主人公は、山蕗の妨害のため、同級生たちに連絡をとります。

 同級生たちは、主人公の言葉で、対立候補に投票することを決めます

 なぜなら、

  • 対立候補に投票すれば昇進や昇給
  • 対立候補に投票しなければ昇進の見送りや解雇

 と、生活に影響を及ぼすことを告げたからです。

仕事、つまり「食いぶち」は、「信念」だの「友情」だのを無効にする破壊力があるのだ。これはこの村だけにかぎった話じゃない。世界共通の真理だ。(p.40)

 どちらにメリットがあるか考えた結果、生活を重視するのは、悲しいですが当然です。

 主人公だって、幼なじみの対立候補を応援するのは、そうしなければネットに動画がばらまかれ、辞職に追い込まれるからです。

 行き詰まりや、やむを得ない感じが、読ませる文章で語られます。 

幼な子の聖戦

幼な子の聖戦

  • 作者:木村 友祐
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

調べた言葉

  • 酒池肉林(しゅちにくりん):酒は池のごとく、肉は林のごとく、たくさんあること
  • 煎餅布団:薄くて堅い、粗末な布団
  • 顕現:はっきりとした姿、形をとって現れること
  • 鼻もちならない:言動が嫌みでがまんならない
  • 暗澹(あんたん):将来に見通しが立たず暗い気分になるさま

 

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