いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『背高泡立草』古川真人(著)の感想【草刈りする理由】(芥川賞受賞)

草刈りする理由

主人公の母の実家に、使われないまま放置されている納屋があります。

納屋の周りには草が生い茂っており、その草を刈るため、親族が集まります

  • 主人公
  • 母の姉
  • 母の姉の子
  • 母の兄

主人公は、草を刈る必要はないと思っています。

納屋は使われていないし、連休の最終日に草刈りに連れられて、不満たらたらです。

草刈りをする母の言い分は、

  • できる限り修繕しておくべき
  • 誰かに頼むのは気が引ける
  • ごみを不法投棄される

などですが、主人公は納得できません。

この作品は、納屋の周りに生えた草を刈りに親族が集まる話にとどまりません

主人公はじめ親族にとっては、「納屋の周りに生えた草を刈りに集まる」のですが、読み手にとっては違います。

読者には、放置された物や出来事の過去が語られます

過去が語られるのは納屋だけでなく、

  • 母の実家
  • 実家の隣の家にあるカヌー
  • 母の兄が話した捕鯨

などと、目に映ったり誰かに語られたりしたことを機に、それが現役だった過去へワープします。

その過去は、主人公が生きる現在の視点ではなく、その当時の状況が描かれます。

以下に興味がある人におすすめです。

  • 家族のつながり
  • 空間のつながり
  • 歴史 
【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

  • 作者:古川 真人
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

一言あらすじ

納屋の周りの草を刈る現在の話と、目に移ったり誰かに語られたりしたものを機にワープする過去の話が、交互に語られる。

主要人物

  • 奈美:主人公。30歳手前の会社員
  • 美穂:奈美の母
  • 敬子:美穂の生みの親。90歳近く。納屋の持ち主

空間のつながり

現在(納屋周りの草刈り)とワープする過去に、物語のつながりはありません。

ですが、空間(場所)は同じです。

空間は、過去から引き継がれていきます。

この作品を読むと、空間そのものにも歴史はあると思わされます。

そう考えると、主人公たちが草刈りをしている現在の空間も、次の世代に引き継がれていきます。

では、タイトルの「背高泡立草」は何を示すのでしょう。

「納屋」でも「蔓」でもなく、納屋に茂っていた何種類もの植物の一つである「背高泡立草」がタイトルにつけられているのか。

背高泡立草の花言葉は、「生命力」です。

背高泡立草が「母の親族」を示しているように感じました。

「納屋」と「背高泡立草」の関係=「空間」と「母の親族」の関係というように。

では、背高泡立草(生命力)を刈るのは、親族の終わりを示すのかというと、そうではないと思います。(30歳手前の主人公や従妹に子どもはいませんが)

草刈りを終え、伯父が言います。

もう当分は生えんやろ。来年まではすっきりしとるよ

(中略)

ええ、たったの一年?

刈ってもまた生えてくるのですから。

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

  • 作者:古川 真人
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本
 

調べた言葉

  • 一再ならず:一度や二度ではなく、何度も
  • 半畳を入れる:他人の言動に非難やからかいの言葉を投げかける
  • 仮借なく:見逃したり許したりすることがなく
  • とっくり:十分に念を入れて物事をするさま
  • こもごも:次々に
  • 観照:主観を交えずに、冷静な観察と思索から物事の本質を認識しようとすること
  • 鷹揚:ゆったりとして落ち着いていること
  • 耄碌(もうろく):老いぼれること
  • 床上げ(とこあげ):病気や出産の後、体力が回復して寝床を片付けること
  • 筆まめ:おっくうがらずに手紙や文章をよく書くこと
  • おめおめ:恥とわかっていながら何もしないでいるさま
  • 雄飛:大きな志を抱いて意気盛んに活動すること
  • 艱難辛苦(かんなんしんく):悩むことと苦しむこと
  • おぞけをふるう:恐ろしくて体がふるえる
  • 哨戒:敵の襲撃を警戒して見張ること
  • はしこい:動作が素早い
  • 豪胆:度胸があって、ものに動じないこと
  • 誉れ:ほめられて誇りに思うこと
  • 疫痢:赤痢菌によって起こる伝染性感染症
  • 口さがない:口うるさく、やたらと言いふらす
  • 猖獗(しょうけつ):悪いものの勢いがさかんなこと
  • 遊山:気晴らしに外出する
  • 反目:仲たがいしてにらみ合うこと
  • 打擲(ちょうちゃく):人をたたくこと
  • 喉が鳴る:ご馳走を見て、食欲が盛んに起こる

 

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 第162回芥川賞・直木賞の結果発表、会見、選評の感想はこちらです。