沖縄について考えることから考える
「はじめての沖縄」というタイトルですが、初心者向けの沖縄旅行本ではありません。
この本は、沖縄の時事問題や歴史的事件についてわかりやすく解説した、「役に立つ」本ではない。むしろ、そんなことを考えて何になるのかと言われそうな、めんどくさい、読みづらい本である。(p.25)
序章のタイトルが「沖縄について考えることについて考える」ですからね。めんどくささがうかがえます。
著者の岸さんは、20代中盤で沖縄を訪れて、「沖縄病」にかかったそうです。
(沖縄病とは、沖縄の魅力にはまり、熱病に浮かされたように沖縄に恋焦がれてしまう状態とのことです)
そんな岸さんの、
- 沖縄に出会ったときのこと
- 沖縄での個人的体験
- 沖縄について考えたこと
が書かれています。
例えば、
- 信号待ちの間、紙ナプキンでバレリーナを作ったタクシー運転手
- 自分が帰りたいからと、行き先の途中で乗客を降ろすタクシー運転手
- 寒い中図書館で調べものをしていると、自分が使っていた電気ストーブを貸してくれた職員
- 基地問題や歴史をめぐる、米兵との言い合い
- 古き良き沖縄と、インフラが整った沖縄
- 米軍に見つからないために、泣く赤ちゃんを親が殺すこと
- 離島で会った美しい少女への妄想
沖縄や、マイノリティ、境界線について考えたい人におすすめです。
沖縄について考えた結果
私は考えるのを放棄してしまいました。
私のとっての沖縄は、日常から離れ、くつろげる場所だからです。
基地問題とか、部落問題とか、
政治的な問題を抱える人からすると、お気楽ですよね。
私は沖縄で生まれたわけではないし、
沖縄の政治的な問題に関心を持っていません。
関心を持つべきなのかもしれませんが、
私はただ、沖縄の風や、木々や、海や、夕日や、料理が好きなだけです。
非日常を求め、つかの間の休息ののち、日常に戻ります。
沖縄に行く前、どこへ行くか計画を立て、
帰ってきた後、ここが良かった、次はどこへ行こう、と考えます。
そこに政治的な問題が入り込む余地はありません。
旅行者がやすやすと語るべき内容ではないとも思います。
沖縄という対象をどのように語るにしても、沖縄というものに対する政治的態度、位置取り、理想化や相対化から自由になることは、とても難しいのだ。(P.239)
沖縄に限らず、何かを語るのは難しいです。
知らぬ間に相手を傷つけたり、不快にさせているからです。
沖縄へ行って、お金を使う。
もちろん、お金を使ってあげているという意識はありません。
ただ好きだから、使う価値があるからです。
沖縄に行きたくなってきました。
次は、目的など決めず、だらだらと過ごしたいです。
調べた言葉
- 生き馬の目を抜く:すばしっこく、油断のならないこと
- 糧食:食糧
- アノミー:共通の価値・道徳が失われて無規範と混乱にまみれた社会の状態
- エスノグラフィ:民族誌
- 頼母子講(たのもしこう):互助的な金融組合
- 包摂:ある範囲の中に包み入れること