自傷する若者の集まり
「日曜日の人々」とは、自助グループのメンバーが書いた原稿を、まとめた冊子です。
そのグループは、病を語れる場所があればというきっかけでできました。
活動場所は、ワンルームマンションの一室です。
原稿をメンバーの前で読んだり、他のメンバーの話を聞いたり、自由です。
ただし、聞いた内容を、
- 否定しない
- 追求しない
- 口外しない
がルールです。
主人公の大学生は、従妹の死にその自助グループが関わっていたことを知り、そこを訪れます。
メンバーは、
- 窃盗癖の男
- 拒食症の女
- 不眠症の男
などで、抱えている病や悩みを話します。
主人公の従妹も、その自助グループで原稿を読んでいたようです。
主人公は、従妹の原稿を読もうとしますが、入会して6か月経たないと読めなかったので、グループに加わります。
極限の精神状態で生きる若者の自助グループや、
その人たちに関わるとどうなるかに興味がある人におすすめです。
自助グループに関わること
この自助グループで、病や病気から解放された人もいれば、自殺した人もいます。
グループを管理する人間が、
「このグループのせいで自殺した」
と、思うのは仕方ないことでしょう。
グループがなければ自殺しなかったのにと、悔やむ気持ちはわかります。
医療機関につないでいれば、という思いもあったかもしれません。
死んでしまった人でも、外から見れば健全で、他の人と区別できません。
一見して普通の人なのに、その内に抱えているのは、精神を追い込む病や悩みです。
人の自殺を自分の責任として負い過ぎた人には、死の選択肢が浮かびます。
主人公は、自助グループに加わったことで、多くの死の可能性に触れます。
死を意識すると言う管理人に、首を吊るのを手伝うとまで言います。
「就寝中に、吊るのが理想かな」
「就寝中じゃ、自分で吊れませんよ」
「助手でも居てくれればいいんだけどね」
「そのときは、僕がお手伝いします」
生きる苦しみが分かるからこそ、その解放のために自殺を手助けする。
するとグループ内で死の連鎖を導いてしまいます。
では、自殺を選ぶ前に、医療機関につなげればいいのでしょうか。
病や悩みをグループのメンバーに話すことで一時的な安らぎを得るのではなく、
専門職に治療してもらえることができれば、状況が変わる可能性はあります。
ただ、治療を受けて回復すればいいのですが、治療を受ける間や回復しなかったときの苦しみを考えると、完全に正しいかは微妙です。
自助グループに漂う死の香りは、ほんのり甘く、一度入ったら抜け出すのは困難でしょう。
最初から自助グループには近づかず、追い込まれた精神状態のときには医療機関を選択するのが賢明です。
調べた言葉
- ご破算:そろばんで、計算を終えて元の状態に戻すこと
- 健忘:よく物忘れをすること
- 御多分に洩れず:他の多くの者と同じく
- 春時雨:春の、急に振っては止む、にわか雨
- 碧空(へきくう):青空
- 篝火(かがりび):周囲を照らすために焚く火
- 膝が笑う:膝に力が入らず踏んばりがきかない状態になる
- 白日:照り輝く太陽
- 轢死(れきし):自動車・電車などに引かれて死ぬこと
- 胸がすく:胸のつかえがとれて、さわやかになる
- 気丈:気持ちが丈夫
- 灌木:低い木
- 白妙(しろたえ):樫の木の皮の繊維で織った布