実写のトラウマ
この映画にトラウマが3つあります。
- 昏睡中の女性の裸を見て、主人公が自慰をする
- 一体のエヴァが、鳥型モンスターの集団に襲われ、臓器がむき出しになる
- 突然実写映像に変わり、映画館の観客やパソコン上の暴言が映される
今回見返して、3つ目の実写シーンに、いまだ恐ろしさを感じました。
この映画のキャッチコピーは、
「だからみんな、死んでしまえばいいのに……」
この映画について考えると、悪い方向に持っていかれる感じがあります。
なので、以下にはネガティブな内容が含まれますので、ご注意ください。
夢と現実
実写シーンには、
- 映画館の満員の観客
- 会社入口に赤いスプレーで落書き(「SEX」「レイプマン」など)
- パソコンに表示される暴言「「カルト教団みたいなノリ」「スタジオに火をつけに行ってやる」など)
- 最後に大きく表示される「庵野、殺す!」
なんでこんな映像を入れる必要があったのでしょう。
実写が流れる背後で登場人物が語るのは、夢と現実の話です。
(実写という「夢」を見ている主人公が)「僕の、現実はどこ?」
「それは、夢の終わりよ」
と言い、実写からアニメに戻ります。
主人公にとって、アニメが現実で、実写が夢です。
視聴者にとって、アニメが夢で、実写が現実です。
映画館の観客が映し出されることで、
夢(アニメ)を観ている客に、現実を突きつけます。
アニメ(夢)を観ているのに、現実に引き戻される感じです。
では、アニメを観ることは、現実から目を背けていることなのでしょうか。
現実を忘れられる点で言えば、そうかもしれません。
ですが、アニメを観ている時間も現実です。
落書きや暴言を入れることで、
- いちアニメに熱くなりすぎるな
- 自分の現実に熱くなれよ
というメッセージを感じました。
アニメを観て、殺害予告や放火予告はやりすぎでしょう。
ただ一方で、そのような人たちは、アニメが現実になっているのだと思います。
私が小説を読むのは、現実から目を背けているのかもしれません。
小説という「夢」を体験して、現実を少しでも生きやすくしたい。
ですが、小説は虚構であり、現実に直接活かせてはいません。
世界観に浸かれるアニメ作品だと、後に尾を引いて、その世界のことを考え込みます。
(小説だと自分と作品の間に距離を取れるのですが、アニメだとその世界に潜り込んでしまうことがあります)
例えば、
- 現実を考えたくない
- その作品世界に行けば、自分だって輝けるのに
と思いながら、眠りにつきます。
起きたら仕事の準備をし、職場では「おはようございます!」と挨拶します。
自宅待機が長引くほど、虚構の世界に飲み込まれていきます。
そこに慣れてしまうと、現実に出るのが怖いです。
夢の中にいられたらいいのにと、思ってしまいます。
新劇場版の感想はこちらです。