臆病さゆえのDV男
30歳過ぎの主人公は、6歳下の女性と同棲します。
この主人公が、清々しいクズっぷりです。
- 300万円を彼女の親から借りる
- 彼女をパートに行かせ、主人公は働きに出ない
- 彼女の料理の段取りの悪さ(ラーメンの味が違う、麺をゆですぎ)に暴言を吐く
- 彼女にトイレでの無様な姿(便器に右足を掛け尻を拭く)を見られたため、張り飛ばす
張り飛ばされた彼女は、主人公に泣いて詫びます。
その後、彼女は言います。
普通ならあんなの笑い話で済むことなのにぶたれもしたから、即、別れようと思った
それなのに、彼女は同棲を続けます。
主人公は考えます。
どこまでやればこの女は逃げ出すのか、それは本当に逃げられてしまったら大いに困るが、そうならない為にもギリギリの臨界点と云うのを把握しておきたい
主人公のクズっぷりはエスカレートします。
- 水族館やプラネタリウムに行きたい彼女の意見を無視し、動物園に行くことを決めるが、途中で酒を飲み過ぎ、動物園をすべて回れない
- 本屋の棚の前に立つ男が邪魔だからと、身体をぶつけ、「邪魔だ」「臭えから立ちふさがんな、百姓」と言う
帰宅後、彼女が主人公の悪行を指摘すると、改善するどころか、その場から逃げた彼女に逆上します。
彼女は泣き、部屋にこもり、家を出ることもありますが、同棲を続けています。
池袋でナンパされたことを喜ぶ彼女に、主人公は、
その場で女を倒し込み、そのマン毛に情痴の匂いが残っていないかをチェックする、強制わいせつじみた恥知らずな行為をも発作的にしてのけてしまうのである。無論、そのあとでは女が仮眠をとってる間に、念の為にその携帯電話を調べておくことも、おさおさ怠らないのだ。
考えたことをすぐ行動に移しています。
主人公は、彼女の過去への嫉妬や、
この女は、もっと私に従順であるべきだと思う。
という考えを持っています。
臆病さゆえのDV男に興味がある人におすすめです。
臆病さに魅力がある
主人公は、暴言を吐き、暴行し、他人に喧嘩を売る人間です。
それなのに、なぜか魅力があります。
主人公の暴言や暴行が、臆病さから生じているからです。
- 彼女と同棲を続けたいが、やさしくすれば彼女が傲慢になるだろうから、力で押さえつける
- 他人に喧嘩を売っても力を誇示すればひるむはずだが、ひるまなければ自分が負け彼女に失望されてしまうと思い、他人に下手に出る
臆病な部分や相手が従順であってほしいという気持ちは理解できます。
理解できないのは、主人公が暴言や暴力という形で体現していることです。
彼女が主人公と同棲するのがいいとは思えません。
ですが、逃げられない彼女の状況が、主人公の暴言や暴力に拍車をかけています。
調べた言葉
- お為(ため)ごかし:相手のためになるように見せかけて、自分の利益をはかること
- あきたりない:満足のゆかない
- 禁治産(きんちさん):心神喪失の状況にある人を法律上保護するために、後見人をつけて財産を管理すること
- 鼻っ柱が強い:強く主張して譲らない
- 低廉:金額が低い事
- 衆生(しゅじょう):仏教で、生命あるすべてのもの
- 黄白:金と銀、お金
- 後架:便所
- 忘恩:恩知らず
- 殊更:わざわざ
- 随喜:心からありがたく喜ぶこと
- インフェリオリティコンプレックス:劣等感
- 嗜虐:残虐なことを好むこと
- 掃苔(そうたい):墓参り
- 頑是(がんぜ)ない:幼くてまだものの是非がわからないさま
- 義憤:道義・正義に外れたことへのいきどおり
- 義侠:正義を重んじ、弱い者を助けること
- 鼻白む:ひるむ
- 蓬髪(ほうはつ):よもぎのように、伸びてくしゃくしゃに乱れた髪
- 嚆矢(こうし):はじまり
- 旬日(じゅんじつ):10日間