いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『赤い砂を蹴る』石原燃(著)の感想【亡き母の代わりにブラジルへ】(芥川賞候補)

亡き母の代わりにブラジルへ

40代半ばの主人公は、亡き母の代わりに、母の友人とブラジルへ行きます

母は、友人とブラジルに行くのを楽しみにしていました。

ですが、母に癌が見つかり、旅行どころではなくなりました

母の友人は、ブラジルで育った日系ブラジル人で、日本に帰化する準備のため、ブラジルに行くと言います。

ブラジルには行ってみたいと思っていた主人公も、行くことにします。

旅行の間、母との記憶が呼び覚まされます。

  • 母の死
  • 弟の死
  • 母の友人の夫の死

大切な人の死との向き合い方に興味がある人におすすめです。

文學界 (2020年6月号)

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  • 発売日: 2020/05/07
  • メディア: 雑誌
 

大切な人の死との向き合い方

大切な人が死んだとき、自分を責めてしまうのは仕方ないのでしょうか

もし自分が○○していたら、△△できてれば――、と。

主人公は小学校のとき、弟を亡くします。お風呂での突然死でした。

主人公は、テレビドラマの見よう見まねで人工呼吸をしますが、うまくいきません。

後になって、やり方が間違っていたと知ります。

自分のせいかもしれないと言ってみたところで、そんなことないよ、と言われるのはわかっている。だから、自分を責めて見せたところで、それは嘘だし、自己陶酔だと思う。

また、母が亡くなった直後、詰まっていた痰が口から出てきます。

主人公は直前に、看護師に痰の吸引をしなくて大丈夫かと聞いています。

これが取れてたらすっきりしたのに、と思った。

主人公は看護師を責めません。

すっきりしたのに」と思うだけで、「もっと生きられたのに」とは思いません。

弟と母、

ふたりの存在を肯定するためには、死んでしまったことも全部ひっくるめて、肯定せざるをえない

死を否定せず、死を含めて肯定することで、主人公は自分を肯定しています。

一方、母の友人は、自分の夫の死に責任を感じています。

主人公は「あなたのせいじゃない」となだめながらも、

人間はそんなに完璧じゃないどうにかできたと思うのは思い上がりだ。

と考えます。

母の友人が、親族を亡くしたときも、

人間はそんなに万能じゃない、とつぶやく。自分が救えたと思うなんておこがましい

と、主人公は、人の死をどうにかできるとは思っていません。

母の友人は、死から救うことはできないとわかっていながら、

どうしてこうなったしまったのかを考えたいなにがあの人を追いこんだのかそれを考えるのが自分を肯定するってことだと思うから。

と言います。

  • 主人公:死を含めて肯定することで、自分を肯定する
  • 母の友人:死についてを考えることで、自分を肯定する

どちらが良いかはわかりません。

大切な人の死にどうやって向き合うか

私は、死を含めて肯定できる主人公ほど強くないし、死について考え続けられる母の友人ほど強くもありません。

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調べた言葉

  • コロニア:植民地
  • シャーマン:予言・治病などを行う宗教的職能者

第163回芥川賞の候補作、受賞予想はこちらです。