純粋に欲を追求した結果
主人公の亜沙は、自分が差し出した物を食べてもらいたいのですが、食べてもらえません。
例えば、
- ひまわりの種:園児に、本当に食べられるものかと訝しがられる
- クッキー:小学生に、クッキー嫌いだからと突き返される
というように。
母にクッキーを渡すと、病院の受診があるからと、食べてもらえませんでした。
給食当番でインゲン豆を渡そうとすると、インゲン豆の食中毒のニュースがあったため、生徒から拒否されます。
亜沙はタイミングが悪く、差し出した物を受け取ってもらえません。
しまいには、金魚に餌を食べてもらえません。
もはやタイミングだけの問題ではなく、亜沙の天性としか思えません。
(金魚に餌を食べてもらえないのは極端でしょうが……)
誰にも食べてもらえなかった亜沙は、杉の木になり、割りばしになります。
割りばしになった亜沙は、若者の手に渡ります。
亜沙は割りばしとして、若者に唐揚げや白飯を食べさせることができました。
念願が叶ってめでたしめでたし……ではありませんでした!
単純に欲を純粋に追及したらどうなるか、興味がある人におすすめです。
純粋に欲を追求した者たち
亜沙は、「食べてもらいたい」欲を追求した結果、割りばしに変化しました。
亜沙の他にも変化した者たちがいます。
例えば、
- 抱きしめたい欲が、掛け布団に変化
- 抱きしめられたい欲が、毛布に変化
- 握手したい欲が、ドアノブに変化
- 服を着せてもらいたい欲が、ハンガーに変化
- おんぶしてもらいたい欲が、リュックサックに変化
- 良い子良い子してもらいたい欲が、ペコちゃん人形に変化
と、純粋に欲を追求した結果、体現する物に変化しています。
変化したのは、亜沙と同じく、生前の欲がかなえられなかったからでしょう。
欲を追求し、変化した物たちも、亜沙と同じ若者の家に集まります。
若者は、掛け布団に抱きしめられ、毛布を抱きしめ、ドアノブと握手し、ハンガーに服を着せ、リュックサックをおんぶし、ペコちゃん人形を良い子良い子します。
変化した物たちも、若者に欲をかなえてもらいました。
割りばしになった亜沙は、若者に何回も洗われて、ご飯を食べさせます。
若者の恋人は、割りばしを洗って使うのはやめた方がいいと言い、割りばしを捨てようとします。
若者は拒み、恋人とけんか別れしてしまいます。
若者は「物をずっと使う」欲に駆られていました。
あらゆる物を、汚くなっても使い続けます。その結果は悲惨です。
「物を捨てずに使い続けよう」と、教訓めいた方向にいかないのが良いです。
純粋な欲であれ、極端は危険なのでしょう。
文章は軽いタッチですが、内容はずしんと重いです。