いじめられない理由
主人公は、中学3年生の女子です。
両親は、ある宗教を信仰しています。
きっかけは、主人公が幼い頃にできた湿疹でした。
両親がどんな手を尽くしても、湿疹は良くなりません。
損害保険会社で働く父親が、何気なく同僚に口にしたところ、同僚は、
それは水が悪いのです
と言います。
翌日、同僚から「金星のめぐみ」という水を貰いました。
「金星のめぐみ」を使うと、主人公の湿疹の症状は良くなりました。
両親は、「金星のめぐみ」ひいてはその水を出している団体のとりこになります。
両親が団体の活動にも精力的になり、主人公の家庭は少しずつ貧乏になります。
- 父親は損害保険会社の仕事を辞め、
- 引っ越しの度に家は狭くなり、
- 両親は食事をあまりとらなくなります。
ある日公園で、緑色のジャージ姿の両親が、頭にタオルを乗せ、頭上から水を掛け合っている姿を見ます。
主人公のそばには、教員と2人の同級生がいました。教員は不審がっています。
主人公は、水を掛け合っている2人が、自分の両親だとは言えませんでした。
後日、仲の良い同級生に、自分の両親だと告げると、同級生は知っていました。
同級生は、主人公の両親が不審者であることを、知っていたのです。
同級生一人が知っているということは、複数人が知っていることでしょう。
不審な行動をする両親がいたら、主人公に対して何かしらのアクション(いじめなど)がありそうですが、主人公はいじめられることなく、学校生活を送っています。
なぜなのでしょう。
考えられるのは、
- 主人公の友人に、美人で頭が良くスポーツのできる同級生がいるから
- 主人公の顔がかわいいから
- あやしげな宗教に関わりのある主人公と距離を置きたいから(無視)
です。
主人公には、家出した姉がいます。
姉は、叔父と協力し、「金星のめぐみ」にはまる両親を、目覚めさせようとしました。
「金星のめぐみ」を水道水と入れ替え、効果がないことを証明しようとします。
ですが両親は、水を入れ替えた叔父を罵倒しました。
恐ろしいことに、叔父と協力した姉も、叔父を罵倒します。
姉は、同級生からいじめを受けていたのではないかと思います。
最後に主人公が見た姉の手には、
無数の傷と謎のラクガキに覆われて
いました。
いじめの原因となる「金星のめぐみ」や団体から、両親を切り離そうとしたのでしょう。
予想外に、両親が叔父を罵倒し始めたので、姉は両親に味方に立つという歪んだ結果になりました。
宗教が悪いという話ではありません。
「金星のめぐみ」で湿疹が良くなった前例があるために、すがりたい気持ちはわかります。
ただ、宗教を信じるばかりに、家庭を顧みずに崩壊を辿ることは、馬鹿げていると思いました。