いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『星の子』今村夏子(著)の感想【いじめられない理由】(野間文芸新人賞受賞、芥川賞候補)

いじめられない理由

主人公は、中学3年生の女子です。

両親は、ある宗教を信仰しています

きっかけは、主人公が幼い頃にできた湿疹でした。

両親がどんな手を尽くしても、湿疹は良くなりません。

損害保険会社で働く父親が、何気なく同僚に口にしたところ、同僚は、

それは水が悪いのです

と言います。

翌日、同僚から「金星のめぐみ」という水を貰いました。

「金星のめぐみ」を使うと、主人公の湿疹の症状は良くなりました

両親は、「金星のめぐみ」ひいてはその水を出している団体のとりこになります。

両親が団体の活動にも精力的になり、主人公の家庭は少しずつ貧乏になります。

  • 父親は損害保険会社の仕事を辞め
  • 引っ越しの度に家は狭くなり
  • 両親は食事をあまりとらなくなります

ある日公園で、緑色のジャージ姿の両親が、頭にタオルを乗せ、頭上から水を掛け合っている姿を見ます。

主人公のそばには、教員と2人の同級生がいました。教員は不審がっています。

主人公は、水を掛け合っている2人が、自分の両親だとは言えませんでした。

後日、仲の良い同級生に、自分の両親だと告げると、同級生は知っていました。

同級生は、主人公の両親が不審者であることを、知っていたのです。

同級生一人が知っているということは、複数人が知っていることでしょう。

不審な行動をする両親がいたら、主人公に対して何かしらのアクション(いじめなど)がありそうですが、主人公はいじめられることなく、学校生活を送っています

なぜなのでしょう。

考えられるのは、

  1. 主人公の友人に、美人で頭が良くスポーツのできる同級生がいるから
  2. 主人公の顔がかわいいから
  3. あやしげな宗教に関わりのある主人公と距離を置きたいから(無視)

です。

主人公には、家出した姉がいます。

姉は、叔父と協力し、「金星のめぐみ」にはまる両親を、目覚めさせようとしました。

「金星のめぐみ」を水道水と入れ替え、効果がないことを証明しようとします。

ですが両親は、水を入れ替えた叔父を罵倒しました。

恐ろしいことに、叔父と協力した姉も、叔父を罵倒します。

姉は、同級生からいじめを受けていたのではないかと思います。

最後に主人公が見た姉の手には、

無数の傷と謎のラクガキに覆われて

いました。

いじめの原因となる「金星のめぐみ」や団体から、両親を切り離そうとしたのでしょう。

予想外に、両親が叔父を罵倒し始めたので、姉は両親に味方に立つという歪んだ結果になりました。

宗教が悪いという話ではありません

「金星のめぐみ」で湿疹が良くなった前例があるために、すがりたい気持ちはわかります。

ただ、宗教を信じるばかりに、家庭を顧みずに崩壊を辿ることは、馬鹿げていると思いました。

星の子 (朝日文庫)

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