いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『短篇小説講義 増補版』筒井康隆(著)の感想【短編小説の書き方】

短編小説の書き方

小説を書くには、「とにかく読み」「とにかく書く」ことが重要と聞いたことがあります。

著者の筒井さんは、

小説は、何を、どのように書いてもよい自由な文学形式である

と言います。

だからこそ、本書を読んで、「とにかく読み」「とにかく書く」ことの重要性を、より強く感じました。

本書では、主に海外の短編小説をとりあげて、解説しています

とりあげた短編小説について、著者の筒井さんは、

いずれも模倣不可能であり、だからこそ短篇小説作法のお手本にとりあげられることがなかった

と言います。

筒井さんの理想とする短編小説は、

  • 孤高に存在し、誰にも真似られることのない短編小説
  • 独特な形式も技法も、ただその短篇小説だけにしか通用しない短編小説
  • 独特な形式と技法がそのテーマや内容によってしか生かされず、他のいかなるものにも応用のきかない短編小説

だと言います。一言でいうと、唯一無二ですね。

では、唯一無二の作品を書くのに、他の作品を読む理由って何でしょう。

筒井さんは言います。

短篇をお手本にして短篇小説の書きかたを学べ、などというのではない。過去の作品をお手本にして小説を書くことにぼくは疑問を呈しておいた筈だし、これらの作品に似たものを書いたとしても、それらが現代の短篇小説のとして評価されることはほとんどないだろう。

手本にするために他の作品を読むべきではないようです。

となると、他の作品を読む必要性って何でしょう。

評論家の島弘之さんの言葉を借りながら、筒井さんは言います。

その時代を表現する最も新しい小説を生み出すためには、まずそれまでに書かれた小説や同時代の小説をいやというほどたくさん読み、それに飽きあきしなければならない。飽きあきするということは、それらの小説のテーマや内容や技術に飽きあきすることであり、つまりは熟知してしまうことである。飽きあきした以上は、そのひとが新たに小説を書こうとした場合、同じようなものを書く筈はないということになる。

他の作品を読むのは、お手本にするためではなく、消去法をするためですね。

つまり、

  1. 古今東西の小説に目を通し、テーマや内容や技術を知る
  2. すでに使われたテーマや内容や技術を使わずに、小説を書く

これが小説’(短編小説含む)の書き方で、その点において、他の作品を読む必要がありそうです。

ただ、小説をどのくらい読めば、テーマや内容や技術に飽きあきするかは書かれていません。

筒井さんは、本書であげている作品が新鮮な驚きと感動をもたらしたと言い、

ぼくはまだまだ勉強不足であり、新しい作品を生み出すほどにはそれまでの作品に飽きあきしていなかったということになる。

私はいろんな作品を読もうと思います。

短篇小説講義 増補版 (岩波新書)

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