北海道がロシアから攻められる
北海道がロシア軍に攻められます。
自衛隊に所属する主人公は、初めての戦闘で、部下を指揮しています。
迫りくるロシア軍に備え、主人公は、民間人の母子に避難するよう働きかけますが、うまくいきません。
どこにも身よりはいないし、どこにも生活の拠点がないんだったら、どうしようもないじゃん
と言われます。
確かに、主人公は「避難しろ」とは言いますが、どこに避難するかまでは言いません。避難した後の生活は自己責任というわけです。
ロシア軍の攻撃に備える主人公は、
恐怖とか緊張とかではなく、ただ単純に面倒だった。
(中略)
風呂に入ってコーラが飲みたかった。戦闘なんか、しなくていいならしなければいい。
という考えですが、命令なので、ふてくされながらも任務を行います。
やるべきことをやれば、
指揮官から、統裁部から評価される
一方で、
だからなんだというんだ。誰もその後のことは教えてくれなかったぞ
と愚痴りながら、仕事を全うします。先が見えなければ動かない母子とは逆です。
軍事の専門用語が多用されるので、読んでいて最初はとまどいますが、慣れてくると、戦闘がリアルに伝わる描写だとわかります。
ただ、ロシア軍が攻めてくる理由は描かれません。
戦争は有無を言わさず突然始まるということかもしれませんが、ロシア軍が攻めてくる経緯がわからないので、その疑問は残ったままです。
現代の日本を舞台にした戦争ですが、さほど世間の関心事にはなっていないようです。ラジオをつけると、
普通に放送をしていた。おれたちのことには一言も触れていなかった。
戦闘に従事する自衛隊がいる一方で、避難した一般人は普通に生活を送っているのでしょうか。
住民を住んでいる地域から避難させたのあれば、一大ニュースになっている気がします。上で挙げた母子のような、避難先が見つけられない人も多くいるでしょう。
移動自粛でこれだけニュースになる日本ですから、戦争関連のニュースが流れないのは不自然です。情報を規制しているとしても、避難所や避難物資の情報は流れる気がします。
主人公は2人殺しました。
- 敵であるロシア人を射殺
- 戦意喪失して逃げ出そうとした部下を戦場に置き去り
主人公はこの2人について、
ひょっとして、おれはこの二つをずっと引きずっていかなくちゃいけないのか。心臓が締め付けられる。
と悩み、仲間が大勢殺されたことに、
次はこっちの番だ
と言いながら、戦場から離れます。
荒らされたセブンイレブンに入り、飲み物と食べ物に加え、Amazonギフトカードを持ち去ります。
その場では使えないAmazonギフトカードを持ち出すことは、主人公の生きていく意思と今後の生活の厳しさを表しているように感じました。
調べた言葉
- 隷下(れいか):部下として従属している人
- 歩哨:警戒や監視をすること
- 空挺:地上部隊が航空機で敵陣へ乗り込むこと
- 錯雑:入り混じること
- 交々(こもごも):多くのものが入り混じっているさま
- 籠絡:他人を巧みに言いくるめてあやつること
- 教範:教育の模範となる書物
- 過早(かそう):早すぎること
- 黒子:表に出ないで裏で物事を処理する人のたとえ
- 彼我(ひが):相手と自分
- 食玩(しょくがん):おまけとしておもちゃを添付した商品
- 接収:公権力が個人の所有物を強制的に取り上げること
- 別示:別途指示
- オミット:除外すること
- 開豁(かいかつ):広々と開けて、眺めがよいさま
- 偽騙(ぎへん):だます
- 旅団:軍隊の構成単位の一
- おおわらわ:懸命になって物事をするさま
- 悄然(しょうぜん):うちしおれて元気のないさま
- 携行糧食:軍隊がとる携帯型の食糧
- 抱懐:ある考えを心の中に抱くこと
- 矩形(くけい):長方形
- 擱座(かくざ):戦車などが壊れて動けなくなること
- 掩体(えんたい):射撃しやすいように掩護する諸設備
- ガク引き:射撃の反動で焦点がぶれること
- 捨て鉢:自信や希望をなくして、やけになること
- 焦眉(しょうび):危険が身に迫っていること
- 卸下(しゃか):人員や装備品などを車両から下ろすこと