第164回芥川賞予想
1月20日(水)に第164回芥川賞、直木賞が決まります。
「文学賞メッタ斬り!スペシャル」は、受賞作の決定前に、どの作品が受賞するかを予想するラジオ番組です。
予想する方
- 大森望(書評家、SF翻訳家)
- 豊崎由美(書評家)
芥川賞候補作
- 宇佐見りん『推し、燃ゆ』
- 尾崎世界観『母影』
- 木崎みつ子『コンジュジ』
- 砂川文次『小隊』
- 乗代雄介『旅する練習』
芥川賞予想作品
- 大森さん:砂川文次『小隊』
- 豊崎さん:宇佐見りん『推し、燃ゆ』、乗代雄介『旅する練習』のダブル受賞
です。
豊崎さんは、
どれもそれぞれに良さがあって、読んで良かったなと思いました
と言い、メッタ斬りされた(ボロクソ言われた)作品はありませんでした。
大森さんもボロクソ言っている作品はありませんが、
これ以上先に読み進めたくない
作品はあったそうです(『旅する練習』のこと)。読み進めたくないのは、つらい結末が待っているからであり、作品を批判しているわけではありません。
お二人とも『旅する練習』を一番熱く語っているように感じます。
豊崎さんは、『旅する練習』を、
育ちがいい物語、品のいい文章、教養がにじむ小説、山の手小説と呼びたいですね。
サッカー小説でもあり、鹿島アントラーズ小説でもあり、鳥類図鑑小説でもある。ジーコ小説でもある。
と、作品に多様な要素のあることを示しています。
『旅する練習』の結末への導き方について、大森さんはよく思っていないようで、
そこに行きつかなくても良かったと思うし、行きつくなら行きつくで、途中で行きつきますよって言ってほしくなかった
と言います。
豊崎さんは、『旅する練習』の結末について選考委員がどう思うか心配しており、似たような作品のある堀江敏幸さんの選評に注目しているそうです。
豊崎さん自身は、『旅する練習』の結末をネガティブにとらえてはいないようで、
(乗代さんは)小説についての小説を書くっていうところもあって(中略)、物語を書く、小説を書く、文章を書くってどういうことなのっていうことを、忍耐と記憶というテーマで書こうとしているんですよ
と言います。
「メッタ斬り」を聞いて、これだけ熱く語られる『旅する練習』の奥深さを感じました。
芥川賞の選考会でも『旅する練習』の結末の是非は語られると思います。
私は、忍耐しながら書いている主人公が、結末に行くにつれて忍耐できなくなっていく様が、小説ならではの手法で描かれており、結末に肯定的です。
大森さんも豊崎さんも、『旅する練習』を読んで泣いたとおっしゃっており、泣けなかった私は、お二人の読みの深さや感受性をうらやましく思いました。前回の芥川賞候補作(『最高の任務』)のときも、お二人は泣けるとおっしゃっていましたが、私は泣けませんでした。
私の第164回芥川賞の予想はこちらです。