小説を書くこととは
タイトルに小説入門とありますが、簡単な内容ではありません。
冒頭、保坂さんは、
ここに書いてあることを全部マスターして、及第点を取ろうと思うような律儀な人は小説家にはなれない
と、釘を刺します。
小説の書き方を学ぶノウハウ本ではありません。
本書をどんなふうに読めばいいのかというと、
- 私の言うことをできるだけ直観的・感覚的に受け止めてほしい
- 誤解したり、歪めてもいいから、その人なりの感覚で何かを感じ取ること
と、保坂さんは言います。
「小説を書く」とは、まずは他人が発した言葉を自分の言葉に置き換えることから始まるのだ。
読者自身が、読んだときの感覚を素直に受け取って、自分なりに解釈してくださいということでしょう。
お言葉に甘えて、直観的に良いと感じたところを、無秩序に3つ抜粋していこうと思います。
- 小説を書くこと
- 風景を書く難しさと重要性
- 細部に力を注ぐこと
です。
まずは、小説を書くことについて、
小説を書きながら、それを書いている時間を通じて自分が考えたいことは何なのかということを考えてください。
小説を書くことについて、私は「文章で物語を構成する作業」という認識でした。
ですが保坂さんは、「小説を書いている間に自分が考えたいことは何なのか」から考えるよう言います。
その理由を私は、考えたくもないことを書いたところで、良い小説にはならないからとして受け取りました。興味があるから深堀りして考えられるし、興味の対象について書くことができるのだと。
次に、風景を書く難しさと重要性について、
風景を書くことで書き手は鍛えられ、粘り強くなり、それによって人物の記述も全体の展開も通り一遍の出来で妥協しないで、難しいところでそこに踏みとどまって、何度でも書き直すことができるようになる。小説家が小説を書くことによって成長することができるのは、難しいところで簡単に済まさずにそこに踏みとどまるからだ。
できていることを続けるのではなく、難しいことから逃げずに踏みとどまるというのは、小説を書くことに限った話ではないと感じました。自分のできる範囲から抜け出さない限り、成長はありえないのでしょう。
最後に、細部に力を注ぐことについて、
読みながらいろいろなことを感じたり、思い出したりするものが小説であって、感じたり思い出したりするものは、その作品に書かれていることから離れたものも含む。つまり、読み手の実人生のいろいろなところと響き合うのが小説で、そのために作者は細部に力を注ぐ。
細部に力を注ぐことで、読者とリンクできる先を張り巡らせるわけですね。
誰にでも当てはまる大きな事柄より、その人の琴線にしか触れないであろう些細な事柄を、細かく丁寧に書く方が、読者に深く刺さるのでしょう。
小説を読みながら、小説の内容とは別のことが頭に浮かび、それを考えているなんともいえない時間が、どうしようもなくいいですよね。
感想②はこちらです。