いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『火花』又吉直樹(著)の感想②【結果が出ないことに挑戦すること】(芥川賞受賞、三島賞候補)

結果が出ないことに挑戦すること

感想①はこちらです。

主人公も、慕っていた先輩芸人も、大して売れません。

では、芸人をしていたことは無駄だったのでしょうか

必要がないことを長い時間をかけてやり続けることは怖いだろう? 一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。 

売れなかったとしても、芸人をしていた期間は無駄じゃなかったと思いたいところですが、無駄じゃなかったと言えるのでしょうか。

無駄じゃなかったと、自分に思い込ませているだけではないでしょうか。

先輩は言います。

淘汰された奴等の存在って、絶対に無駄じゃないねん。(中略)例えば優勝したコンビ以外はやらん方がよかったんかって言うたら絶対そんなことないやん。一組だけしかおらんかったら、絶対にそんな面白くなってないと思うで

全体から見れば、淘汰された存在は必要でしょう。参加人数が多いことで、レベルが向上するのは、芸人の世界だけではありません。

では、淘汰された側が、「自分たちは淘汰されたけど、この世界のレベルを高めるためには必要だった」と思うでしょうか。思わないでしょう。

淘汰された奴等の存在が無駄じゃない」と言えるのは、淘汰されていない人間だと思います。

なので、売れていない先輩が「無駄じゃない」と言うのは現実的ではありません。このセリフは、芸人としてすでに売れた又吉さんの息のかかっているように感じました

淘汰された人間は、負けた存在です。全体のレベルを高める歯車にはなれたかもしれませんが、淘汰された本人は、貴重な時間を割いた分の見返りを得ることなく終わっていきます

良いとか悪いではありません。事実です。

ですから、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦することは、客観的に見たら、やめた方がいいです。

例えば、私が友人から「売れないから芸人をやめようか迷っている」と相談されたとしたら、「やめて普通に働いたら?」とありきたりでつまらない返答をするでしょう。

理由は3つです。

  1. 社会人として働けという同調
  2. 続けることを勧めて売れなかったときの責任回避
  3. 万が一売れてしまったときの嫉妬

1について、社会人として働くのは大変です。まず、毎朝起きて会社に行くのがつらいです。そしてほぼ一日拘束されます。

売れない芸人として、いくら収入が少ないとはいえ、日中あくせく働かなくて自尊心が傷つかないでいられるのはうらやましいです。そこから脱却したいと言われるのですから、私は「働いたら?」と言うでしょう。

2について、その人にいくら才能があると感じても、売れなかったときの責任は負えません

「お前が続けた方がいいって言ったから」と言われても、何の解決にもならず、険悪になるだけです。一方で、「お前が続けた方がいいって言ってくれたから売れた」とは、言われないでしょう。

3について、知り合いが売れてしまったら、自分と比較してしまいます。何に嫉妬するかというと、日々の労働から脱却できたことだと思います。

芸人が労働ではないとは思いませんが、会社で一日拘束されることに比べれば、拘束時間は短いですし、やりたい仕事の分、労働色は薄いです。

芸人を続けても売れず、30歳前後になった主人公と先輩は、どうやって生きていくのでしょう。

一般論でいえば、才能のない人は努力の方向性を変えるべきです。その時間を他に使った方が有意義です。

ただ、才能の有無を自分で判断するのは難しいです。それに、他人に判断されて「はい、そうですか」と引き下がるわけにもいきません。困ったものです。

結果が出ないことに挑戦するかどうかの判断基準は、

その道で信頼できる人からそのまま続けても芽が出ないよ」と言われたときに、

それでも構わずにやるか、そこでやめるかだと思いました。

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