性に奔放な夫婦
一文目から強烈です。
妻の機嫌を治すために、男と寝ることになった。
妻の機嫌を損ねたのは、主人公が隠れて浮気をしたからです。
主人公は、著者本人に近しい、純文学の小説家です。ゲイやバイではありません。
BL(ボーイズラブ)漫画家である妻は、
落とし前つけろよ。男とセックスするんだ。ボクの目の前でな
と言います。
妻が紹介した男は、駆け出し漫画家である、20代前半の美青年でした。
主人公との交わりに、
絵として描き甲斐がある
からと、妻はその青年を選んだようでした。
本作は最初から最後まで、下ネタ満載です。読み手を選ぶ作品です。
私は、読んでいて不快になることはなく、むしろ時折声を出して笑い、最後まで一気に読みました。清々しさすら抱いています。一体何が起きているんでしょう。
登場人物が大抵ぶっとんでいます。
主人公と妻は、性に奔放です。主人公の浮気について、妻は、
別に浮気してもいいよ。その代わり、浮気する前にちゃんと申告してね。隠れてこそこそやることが気持ち悪くて嫌なんだ
と言います。 主人公が事前に浮気を申告していれば、男と寝る罰を受けることはなかったかもしれません。
主人公が凝りたかと思えば、そうではありません。家庭教師の教え子である女子中学生に手を出しています。
膨らみかけの胸と生えかけの陰毛、幼い顔と発達した骨盤。(中略)会うたびに成長する。子供でいるのをやめようとしている。これが彼女の最も淫靡なところだ。
ちなみに主人公は、女子中学生の母親とも関係を持っています。
妻は妻で、主人公に紹介した美男子と浮気しています。
浮気現場を発見した主人公に、妻や美青年への怒りはありませんでした。
私は今でも妻を世界で一番大切に思っている。毎日のように喧嘩もするし、お互いに死ねと言い合うことも日常茶飯事だが、それでも彼女と離婚するなんて考えられなかった。
美男子は土下座します。主人公は、
お前なんか、性犯罪すら犯してない小物じゃないか
と言い放ちます。まるで性犯罪をしているのがえらいかのように。
性に奔放な夫婦ですが、楽しそうに生きています。
一見エンタメ小説に感じますが、この作品が純文学なのは、時代を風刺しているように読めるところです。
他人の不倫や浮気に、関係ない人間がとやかく言うべきでないと、思わせます。本人らの問題に首を突っ込むなと。
抑圧されていることに我慢しなくていいと、思わせます。「○○してはいけない」と縛るのではなく。もっと開放したらいいと。
我慢の対極にある登場人物たちが、自由気ままに振る舞うさまは、人生を謳歌しているとしか思えません。