自分にしか書けない小説を書く方法
小説の書き方の本というより、小説に対する考え方の本です。
著者の高橋さんは、小説を書きたい人に向けて、
あなたが書かねばならない、あなたにしか書けない小説
を書くよう、言います。
小説を書くには「バカ」でなければならないそうで、
「バカ」は、なにも知らない。世界が、どうなっているかを。自分が、なにものであるかを。だから、知りたくなる。知りたくて、知りたくて、目を開く。
無知を受け入れるだけの「バカ」ではなく、普通の人が感じない視点を持つべきだということでしょう。
普通の人が素通りするところを、立ち止まって考えなければ、「バカ」で終わってしまいそうです。
世界を、まったくちがうように見る、あるいは、世界が、まったくちがうように見えるまで、待つ
小説を書くには、他の小説との差別化を図ることが、一番大切だと感じました。
小説だけに限らず、他との差別化は、世に出るものすべてに共通している気がします。
では、自分にしか書けない小説を書くにはどうしたらいいのでしょう。
高橋さんは具体的な方法を教えてくれます。
好きにならずにいられないものを見つけてください。
それから、それをまねして、ください。
何度も、何度も、読んでください。 読んで、読んで、それから、書き写してください。
- あなたが書かねばならない、あなたにしか書けない小説
- 世界を、まったくちがうように見る
- 世界が、まったくちがうように見えるまで、待つ
という一方で、まずは自分の好きなものの真似をするというのが、意外でした。
その次は、その文章で、それを書いた人の視線で、世界を見てください。それを書いた人の感覚で世界を歩き、触ってください。
抽象的になり、難しくなりました。
好きな小説の文章や作家の視点で、自分の話を書くことだと、私はとらえました。
他人のものである感覚や、視線も、少しずつ自分の中に吸収され、自分の感覚や視線と混じり合い、新しい感覚や視線に変化していくでしょう。
私は、この感覚を体験したことはありませんが、
- 好きな小説や作家の視点を自分の中に取り入れることで、
- 自分が持っているものと混ざり合って、
- 新しい感覚や視点が生まれる
ということだと理解しました。
他の作品をまねるという点で、本書には「小説家になるためのブックガイド」があります。全作品を読むべきと紹介されている作家は、
- 太宰治
- 芥川龍之介
- 武者小路実篤
- 小林秀雄
- 片岡義男
です。
小説を書くにあたり、高橋さんは最後の助言をします。
自分のことを書きなさい、ただし、ほんの少しだけ、楽しいウソをついて
自分にしか書けないのは、自分のことですが、「ほんの少しだけ、楽しいウソ」が入ることで、ユーモアが入り、読みやすくなるのだと感じました。