新人賞を受賞する方法
著者の高橋さんは、いくつも文学賞の選考委員をしています。
本書の前半では、
- 文学賞の選考
- 文学賞の選考委員
- 新人作家の条件
が書かれ、後半では高橋さんの選評(群像新人文学賞、すばる文学賞、文藝賞など)が書かれています。
新人文学賞選考とは、選ぶ人と選ばれる人が、小説を介して遭遇する場です。
選ばれる人は、あたらしいものを届ける人です。
選ぶ人は、あたらしいものを見つけ出す人です。
新人賞を受賞するには、「あたらしいもの」を書く必要がありそうです。
では、「あたらしいもの」とは何でしょう。
作中の言葉から推測すると、
- 今流行っていないもの
- 近年の受賞作に似ていないもの
です。また、高橋さんは、
新人に(小説に)、求められているのは、自由であること
で、さらに、
「わからない。でもおもしろい」、これがとても大切
と、言います。
高橋さんは、新人賞に応募するために整えておきたいポイントに、
- 「書く他者」と「読む他者」を育てる
- 書くことにつきまとう恥じらいを意識する
- 「ただしい暴走」でなければならない
を挙げます。
まず、書いて、完成させることです。
つぎに、それを読んでみましょう。
そして、恥ずかしい思いをしましょう。
なぜ、恥ずかしい思いをしなければいけないのかというと、
自分について、書いているから恥ずかしいのではなく、人にいわずに過ごしてもいいことを、わざわざ書いてしまうから
と、高橋さんは言います。
この点について、私はわかりませんでした。
人に言わずに過ごせないことだけど人に言えないから小説に書くのであって、人に言わずに過ごしてもいいことなら、わざわざ書く必要がないと思ったからです。
ですが高橋さんは、
いわずにおけばいいことを、いってしまうところまでもっていくと、小説は格段によくなります。
(中略)
いい小説は、すこし、過剰です。
小説を格段によくするためなら、言わずにおけばいいことを過剰に言ってしまってもいいのかもしれません。それを意識できるかは難しいですが。
3の「ただしい暴走」とは何でしょう。
「暴走」とは、
あなただけのテーマ
だそうです。
すべての文章は、誰かに読まれるために、書かれます。
(中略)
「ただしい」とは、萎縮することでも、機嫌をとることでも、遠慮することでも、ありません。
「暴走」=あなただけのテーマに、どんなかたちをあたえれば、人がそれを小説としてふりかえり、魅了されるのか。それを考えることが、「暴走」を「ただしい暴走」へ仕上げるのです。
「どんなかたちをあたえれば」が、難しいです。
「ただしい暴走」に仕上げる具体的な方法は、自分で考えるほかなさそうです。「暴走」が「ただしくなる」方法に、それぞれ違いがあるとすれば、一概には言えないでしょうし。
「小説という概念を拡張しようとする『無謀な挑戦』」を、「暴走」ではなく「ただしい暴走」にすることが、新人作家の条件なのです。
新人賞を受賞するには、
- 小説という概念を拡張しようとする作品
- ただしい暴走をする作品
である必要がありそうです。どちらも言っていること自体が抽象的で難しいので、要求している具体的な内容は、ピンときませんでした。
一つのヒントは、
ただしい暴走者として、わたしが真っ先に思い出すのは、(中略)「人のセックスを笑うな」の山崎ナオコーラさん
と高橋さんが例を挙げていることでしょう。再読必須です。