いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『図書館員をめざす人へ』の感想【図書館の役割と図書館に求めること】

図書館の役割と図書館に求めること

私の図書館の使い方は、

  • 本を借りる(事前にインターネットで予約)
  • 雑誌の最新刊を読む(最新刊は貸し出ししていない)
  • 本を閲覧する

の3つです。

本書では、これからの図書館は課題解決支援サービスが重要であるように感じました。

課題解決支援サービスとは、

「日常生活で直面する課題や地域の課題解決への実用的な情報提供」を目的とするサービス

を言います。

例えば、ビジネス支援、行政情報提供、医療関係情報提供、法務関連情報提供、地域情報提供などが挙げられています。

高齢者の人だったら医療や健康情報だし、当館も絵本の部屋がありますけども、そこに来る子ども連れのお父さん、お母さんには子育て情報のコーナーを設けたらいいのではないか、ですね。

あとは、今活躍している世代の方向けにビジネス情報コーナーとか。そういう考え方でコーナーをつくったり、関連のセミナーを開催したりしています

ただ、このようなサービスを提供できる図書館は、少ないと思います。私の近所の図書館で、そうしたサービスを行っているのを、聞いたことがありません。

私が図書館に行くときは、ネットで予約していた本を受け取ることが大半で、図書館の職員の方と話すこと自体、ほとんどありません。

そもそも、図書館の司書に、ビジネス支援ができるのでしょうか

それに、図書館の利用者は、司書にそこまでの専門知識を求めているでしょうか

私は求めていませんし、期待していません。

では、私が図書館に何を求めるかというと、資料収集と資料リストの展示・発信です

司書は本を選ぶプロです。世の中に出版された本の中から、住民に役に立つと思われる本を選び、図書館の蔵書に加えることができるでしょう。

ただ、蔵書に入れただけでは住民の目に触れにくいので、資料リストを作成して、館内での展示及びホームページやSNSなどで発信することで、住民が資料にリーチしやすくなります

例えばビジネス支援では、

  • ビジネス支援に関する資料の収集
  • ビジネス支援に関する資料リストの作成・発信

です。資料リストを作成する理由は、コーナーをつくって資料を置くだけだと、資料を誰かが借りてしまったら、コーナーに置かれた資料がなくなり、資料構成が崩れるからです。

貸し出し中であっても、資料リストがあれば、利用者は予約や書店での購入を検討できます。

それに、ホームページやSNSでリストを発信すれば、住民は図書館にいなくともリストを見ることができますし、予約することもできます

試しに、私の住んでいる自治体の図書館のTwitterを検索してみましたが、アカウントすらありませんでした。

おそらく、図書館の委託化が関係しているからでしょう。

委託された図書館で行えることは、限られた予算で、できるだけ住民サービスを向上させることだと思います。

SNSのアカウントを作成するだけで人件費がかかります。それに、SNSで発信したからといって、効果が見えにくいのは確かです。

図書館が、本を貸すことをメインとする役割になってしまうと、蔵書が充足していれば予算や人は削られていく一方でしょう。

司書が選書された本をリスト化し、発信すれば、本が選ばれるのを待つ図書館から、本を選んでもらえるよう発信できる図書館に変わります

ビジネス支援の例でも、

  • 自分がどんな本から読めばいいのか
  • その本にどんなことが書かれているのか

がリスト化されていたら、利用者は、自分に合った本を選び取ることができます

とはいえ、リスト化するには、資料の内容を把握しておく必要がありますし、資料の内容を把握するには人件費がかかります

ですが、そのリスト化された情報には価値あります。

多様な情報が溢れている中で、公的な存在である図書館が、整理された情報を提供することに、価値はあるはずです

公立図書館の職員というのも、利用者のほうだけ見ていても駄目で、今自分の勤めている市区町村の全体の予算がいくらで、医療費がいくら足りなくて、人口のうちの高齢者層は何人で、小学生が何人いて、だから図書館としてはこういう支援が必要なんだというふうに言えないと。図書館は市民の知の発信地であってという、そういう美しい言葉や理想を掲げるのは、やっぱりどうしても嫌な話ですけど、数字的裏づけというのが必要で。(中略)感情論や一般論だと、一番強いお金の議論には簡単に負けてしまう

整理された情報を提供するにしても、

  • なぜ、その情報が必要なのか
  • その情報があることで、どういう効果があるのか

を、数字的裏づけを持って説明する必要がありそうです。

一方で、数字的裏づけを持った説明は大変なので、それならば現状維持を選択して新たなサービスを展開しない図書館の方針も、理解できます。