いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

「東京藝大ものがたり」 あららぎ菜名(著)の感想【3浪するほど情熱を注げるもの】

3浪するほど情熱を注げるもの

主人公の女性が、東京藝術大学に、3浪して入学するまでの話です

主人公が浪人時代、友人から、

いつまでそんなことしているつもりなの

と言われます。

主人公が東京藝術大学に行きたくて、と説明しますが、

みんな

もう次のステップに進んでるよ

と言われてしまいます。

私も、友人側の意見でした。みんなから遅れをとりたくありませんでした。

遅れをとりたくない私は浪人せず、現役で大学に入りました。

第一志望、第二志望の大学に落ち、後期試験で受かった大学に入学したので、どこか憂鬱でした。

仮面浪人(受かった大学に通いながら他の大学の受験勉強をすること)をしましたが、受験に落ちました。

主人公は、好きで浪人しているわけではなく、東京藝術大学に入れなかったから浪人しているだけです

私のような、第一志望、第二志望というような大学の受け方とは全く違います。

主人公がラジオのお悩み相談コーナーにメールを出すと、パーソナリティと直接電話することになりました

パーソナリティは言います。

俺は美大受験がどんなモノか詳しくは知らない

だが何年もその大学を受け続けるっていうのは物凄い情熱だよ

その熱意は必ず役に立つ

お前はこの試験のために今までやってきたんだろう

普通はそこまでできない

3浪してまで行きたい大学は、私にはありませんでした。

そこまで強い情熱を持てるものがあるのが、うらやましいです。

本書を読んでいると、3浪するほど情熱を注げるものは何かを考えざるを得ません。

今の私には、主人公のような情熱がありません。

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3浪するほどの情熱を持てていません。

情けないと思う一方で、情熱を注いだところで何にもならないと、諦めています。

どうにもならないなら、気楽にやった方が続くとすら思っています。

三浪での日々のその多くは……

大学に落ちたというトラウマとの戦いであった

私にとって、センター試験の重苦しい雰囲気は、もう二度と受けたくないと思わせるものでした。

それを4回も受けるなんて、精神力が持ちません。

主人公がカフェで勉強していると、年配の女性に声を掛けられ、雑談します。帰り際、女性に、

あなたに話しかけたのは

すごく真剣な顔をしていたからなの

私も若い時にそんな風になりたかったわ

と言われます。

真剣な顔で何かに取り組むのっていいです。

国会図書館に行ったとき、来館者からエネルギーを感じたことを思い出しました。

本書には、物語の面白さ同様に、主人公の人間性も出ていました

例えば、

  • 合格時に大学からもらう「芸大合格」の袋を、鞄にしまう(落ちた人を傷つけるかもしれないから)
  • バイトの面接の一言目に、「本日はお忙しいところお時間を頂き有難うございます」と言う(それがバイト採用の決め手だったとのこと)

バイトの先輩や予備校の先生に応援してもらえるのは、主人公の人間性ゆえでしょう。

ちなみに、私も主人公同様、「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」のリスナーで、大いに笑わせてもらっていました。