カジノで106億負けた理由
著者の井川さんは、42歳で大王製紙の社長になった方です。
- 筑波大学附属駒場中学校・高等学校
- 東京大学法学部
を経て、祖父が創業した大王製紙に入社しています。
東大に入っておけば、少なくとも学歴面で「あいつは所詮ボンボンだ」と陰口を叩かれることはない。(中略)東大への進学は、私が大王製紙の経営者を継ぐための第一ステップだった。
小学校のときに受けた模試で、全国2位だったようです。
なぜ、エリートである井川さんが、カジノ(ギャンブル)に106億も、つぎ込んだのでしょうか。
ギャンブル依存症に陥る人間の心理はまったく同じだ。たまたま億単位のカネを動かせる立場だったがために、私のギャンブル依存症は数百万円どころかケタをいくつも飛び越えてしまっただけだ。
たまたま使える金があったから、ギャンブルに注ぎ込んだというのは、恐ろしいです。
「自分は破滅するかもしれない」という瀬戸際でやっているからこそ、ギャンブルにはたまらない快感がある。(中略)「この次負ければサラ金を返せなくなって、逃げなければいけない。あるいは首をくくらなければいけない」。こういう瀬戸際で勝ったときの快感はたまらない。
ギャンブル依存症ですね。カイジの世界に生きているような方です。
カジノ側の、金持ちを手放さないための策略もすごいです。
スイートルームなりセミスイートなりに泊まると普通は1泊30~40万円はするわけだが、私の場合いつも無料で泊まることができた。往復の飛行機はビジネスクラスを確保してくれ、もちろんフライト代も無料だ。
負けてしまった場合のフォローも欠かしません。
客から身ぐるみをはぎとるわけではなく、帰りの飛行機代と食事代くらいは残しておいてあげる。そんな武士の情けのようなサービスがあるおかげで、「次回またリベンジしてやろう」という気分になれる。
また、ジャンケットという、カジノと客の間に入るマネージャーがいます。
ジャンケットは、身の回りの世話(飛行機や宿泊の手配など)だけでなく、借金の手配もします。
ジャンケットが近くにいてくれさえすれば、いよいよ種銭が底をついたときにさらにもう一勝負できる。(中略)カジノにとってはジャンケットは客からカネを引き出すための極めて重要な手駒だった。
ジャンケットには、売上の一部がカジノから支払われるそうです。
ジャンケットは、客が勝っても負けても(むしろ負けた方が)売上の一部が支払われるおいしい仕事である一方で、客をギャンブル沼から這い上がれなくする仕事だと感じました。
なぜ、井川さんはギャンブルで勝てなかったのでしょうか。
資金の上限を定め、これ以上は勝負してはいけないというリミッターを設けておく限り、さほど大負けすることはない。資金と時間のリミッターをはずして狂乱の勝負に打って出るから、ギャンブラーは負けが込んでしまう。(中略)負けが込んだときほど次々とカネを投入してしまう。熱くなってはまずいとわかっていながら、自分でつくったはずのルールを無視して暴走してしまう。
ギャンブルは、一人でやってはいけませんね。
自分一人で資金の上限を決めても、そのルールを破るのは簡単です。使える限りのお金を使ってしまうでしょう。
誰かに強引にでも止めてもらわないと、際限ありません。ジャンケットのような、借金の手配をする人間がそばにいては、なおさら危ないでしょう。
ちなみに、井川さんの弟さんは、麻雀にはまらず、カジノではリミッターを外すことがなかったそうです。
麻雀なんてスキルがモノをいうゲームだ。あとから始めた人間は、自分より経験がある人間に絶対に勝てるわけがない
勝つためには、勝てる勝負を選ぶ必要があるのでしょう。
ギャンブルをするときは、
- 資金の上限を決める
- 資金がいくらになったら止めるかを決める
- 強引に止めてもらえる人と行く
続編『熔ける 再び そして会社も失った』の感想はこちらです。