いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

「夜と霧 新版」フランクル(著)の感想②【強制収容所に入れられたら】

強制収容所に入れられたら

感想①はこちらです。

ナチス強制収容所のような出来事は二度とないと信じたいです。

ただ万が一、強制収容所に入れられたら、どうしたらよいでしょうか

本書を読んで、外面的、内面的に対処法があると考えました。

まず外面の対処法について。

けっして目立たない、どんなささいなことでも親衛隊員の注意をひかないことは、必死の思いでなされることであって、これこそは収容所で身を守るための要諦だった

とにかく目立たない。ひっそりしていることが重要です。

また、自分にできることをして、権力者に気に入られることも大事です。

著者は、作業グループの監督者に好感を持たれます。

専門家として親身に耳を傾け、彼の性格を分析し、セラピストとして助言したおかげで、好感をもってくれたのだ

同じ作業グループのメンバーからは嫌われるかもしれませんが、生存戦略として、監督者に気に入られることは重要です。

静養できるなら、体を休めるのも生存戦略です。

病気と認められ、収容所から足並みそろえて作業現場に向かわなくもいいのだ

(中略)二日の静養を認められ、さらに二日の延長を認められるということが、生き延びるためにどれだけ大きな意味をもっていたことか

一方、働けないとガス室送りになる可能性もあるので、静養してばかりは危険です。

まとめると、

  1. 目立たずに
  2. 自分のできることをして
  3. 休めるときに休む

社会人の働き方にも、通ずるところがあります。

職場で目立たなければ、余計な仕事を振られることはありません。

自分のできることをすれば、ゆとりを持てます。

休めるときに休むことで、疲労を軽減できます。

強制収容所の立ち振る舞いは、職場での立ち振る舞いに近いです。

続いて、内面の対処法について

著者は自分自身にトリックをかけます

豪華な大ホールの演題に立っていた。わたしの前には坐り心地のいいシートにおさまって、熱心に耳を傾ける聴衆。そして、わたしは語るのだ。講演のテーマは、なんと、強制収容所の心理学今わたしをこれほど苦しめうちひしいでいるすべては客観化され、学問という一段高いところから観察され、描写される

すべてネタにできる精神。芸人さんみたいです。

嫌なことがあっても、時が経てば笑い話になることはあります。

ただ、強制収容所にいる真っ只中で、自分を客体化できるでしょうか。

あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない

本書で引用されている詩人の言葉です。

強制収容所では、服や持ち物、指輪や装飾品まで、すべて手放すよう命じられます。

ただ、経験だけは奪えません。

わたしたちが過去の充実した生活のなか、豊かな経験のなかで実現し、心の宝物としていることは、なにもだれも奪えないのだ

内面の対処法をまとめると、

  1. 自分を客観視しネタにする
  2. 過去の経験を思い返す

瞑想に近いですね。

思考も他人には奪えません。考えているだけでは他人には伝わりません。

辛い経験を、「どうネタにするか」考えられるか。

いつ出られるかわからない強制収容所で、できるのでしょうか。

わかりません。一日を過ごすことに必死で、早く楽になりたいと、思ってしまう気がします。