強制収容所に入れられたら
感想①はこちらです。
ナチス強制収容所のような出来事は二度とないと信じたいです。
ただ万が一、強制収容所に入れられたら、どうしたらよいでしょうか。
本書を読んで、外面的、内面的に対処法があると考えました。
まず外面の対処法について。
けっして目立たない、どんなささいなことでも親衛隊員の注意をひかないことは、必死の思いでなされることであって、これこそは収容所で身を守るための要諦だった。
とにかく目立たない。ひっそりしていることが重要です。
また、自分にできることをして、権力者に気に入られることも大事です。
著者は、作業グループの監督者に好感を持たれます。
専門家として親身に耳を傾け、彼の性格を分析し、セラピストとして助言したおかげで、好感をもってくれたのだ
同じ作業グループのメンバーからは嫌われるかもしれませんが、生存戦略として、監督者に気に入られることは重要です。
静養できるなら、体を休めるのも生存戦略です。
病気と認められ、収容所から足並みそろえて作業現場に向かわなくもいいのだ。
(中略)二日の静養を認められ、さらに二日の延長を認められるということが、生き延びるためにどれだけ大きな意味をもっていたことか。
一方、働けないとガス室送りになる可能性もあるので、静養してばかりは危険です。
まとめると、
- 目立たずに
- 自分のできることをして
- 休めるときに休む
社会人の働き方にも、通ずるところがあります。
職場で目立たなければ、余計な仕事を振られることはありません。
自分のできることをすれば、ゆとりを持てます。
休めるときに休むことで、疲労を軽減できます。
強制収容所の立ち振る舞いは、職場での立ち振る舞いに近いです。
続いて、内面の対処法について。
著者は自分自身にトリックをかけます。
豪華な大ホールの演題に立っていた。わたしの前には坐り心地のいいシートにおさまって、熱心に耳を傾ける聴衆。そして、わたしは語るのだ。講演のテーマは、なんと、強制収容所の心理学。今わたしをこれほど苦しめうちひしいでいるすべては客観化され、学問という一段高いところから観察され、描写される
すべてネタにできる精神。芸人さんみたいです。
嫌なことがあっても、時が経てば笑い話になることはあります。
ただ、強制収容所にいる真っ只中で、自分を客体化できるでしょうか。
あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない
本書で引用されている詩人の言葉です。
強制収容所では、服や持ち物、指輪や装飾品まで、すべて手放すよう命じられます。
ただ、経験だけは奪えません。
わたしたちが過去の充実した生活のなか、豊かな経験のなかで実現し、心の宝物としていることは、なにもだれも奪えないのだ。
内面の対処法をまとめると、
- 自分を客観視しネタにする
- 過去の経験を思い返す
瞑想に近いですね。
思考も他人には奪えません。考えているだけでは他人には伝わりません。
辛い経験を、「どうネタにするか」考えられるか。
いつ出られるかわからない強制収容所で、できるのでしょうか。
わかりません。一日を過ごすことに必死で、早く楽になりたいと、思ってしまう気がします。