庵野監督がエヴァでやりたかったこと
漫画家の安野さんが、夫である庵野監督(カントクくん)との生活を描きます。
庵野監督は、肉と魚が一切食べられないそうです。理由は不明です。
主食は、
- サッポロポテトバーベQあじ
- ベビースターラーメン
- お好み焼き
- うどん、パスタ、ピザ
- 野菜カレー
- たまごサンドイッチ
と、偏食です。
安野さんが家にいないと、庵野監督は着替えをせず、風呂に入りません。
着替えをせず、風呂に入らなくても成り立つ生活に驚きます。
会社員では無理でしょう。個人事業主の特権です。
巻末で、庵野監督自身が安野さんの漫画について語っています。
嫁さんのマンガのすごいところは、マンガを現実からの避難場所にしていないとこなんですよ。今のマンガは、読者を現実から逃避させて、そこで満足させちゃう装置でしかないものが大半なんです。
確かに、現実とはかけ離れた世界を描く作品は多いです。
庵野監督も、自身の作品を「読者を現実から逃避させて、そこで満足させちゃう装置」として認識しているのかもしれません。
現実とは別の世界を描くことが、逃避場所とは限りません。
ただ、受け手側に現実を忘れさせてくれる点で、現実に目を向けずに済みます。
嫁さんのマンガは、マンガを読んで現実に還る時に、読者の中にエネルギーが残るようなマンガなんですね。読んでくれた人が内側にこもるんじゃなくて、外側に出て行動したくなる、そういった力が湧いて来るマンガなんですよ。現実に対処して他人の中で生きていくためのマンガなんです。(中略)『エヴァ』で自分が最後までできなかったことが嫁さんのマンガでは実現されていたんです。
庵野監督が『エヴァ』でやりたかったのは、
- 現実に還る時に、読者の中にエネルギーが残る作品
- 内側にこもるのではなく、外側に出て行動したくなる力が湧いて来る作品
- 現実に対処して他人の中で生きていくための作品
にすることだったのでしょう。
『エヴァンゲリオン』は面白い作品です。
しかし、作品を見て、
- 現実に還ったとき、エネルギーが残ったか
- 行動したくなる力が湧いてきたか
- 現実に対処して他人の中で生きていけたか
と言われたら、私は首を傾げるしかありません。
『エヴァンゲリオン』は、私にとって現実に対処するための作品ではありません。
- 世界観に没入できるエンターテイメント作品
- 「これはどういう意味なんだろう」と、考察しがいのある作品
- 作品を通じて他者と会話ができる作品
それだけで十分です。
私は『エヴァンゲリオン』に、現実と戦う力を期待していません。
『エヴァンゲリオン』で描かれるのは、現実とはかけ離れた世界ですが、だからといって現実からの逃避場所ではありません。
逃避場所にしているのは、作り手ではなく、受け手でしょう。
受け手次第で、エネルギーは残るし、行動したくなるし、現実に対処して他人の中で生きていこうと思えるでしょう。
作り手が、受け手の影響をそこまで背負わなくて良いと思いました。ただ、庵野監督は受け手への影響まで考え、作品を作っているのはわかりました。
ちなみに私は、「サッポロポテトバーベQあじ」が食べたくなって、さっそくいただきました。