いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『いなくなくならなくならないで』向坂くじら(著)の感想【迷惑な居候】(芥川賞候補)

迷惑な居候

タイトルに驚きます。

「いなくならないで」の間に、

  • なく:否定
  • ならなく:否定

があります。

いなく(なく)(ならなく)ならないで。

いなくならないでの否定の否定なので、

結果としては、いなくならないで、でしょうか。

とはいえ、

  • なく
  • ならなく

があるとおり、いなくなってほしいときもあります。

いなくなってほしかったり、いなくならないでほしかったりする相手は、主人公の友達です。

主人公は大学4年生で、就職先は決まってます。

友達は、主人公の通っていた中高一貫校で同じクラスでした。

死んだはずの友だちから電話がかかってきて、明日会いたいと言われた

友達は、高校2年生のときに死んだはずでした。

主人公は、彼女の母親を名乗るメールで、死んだことを知らされました。

メールには、

  • 自殺したこと
  • 引っ越しすること
  • メールについては、隠しておいてほしいこと

が書かれてました。

主人公は、友達の葬儀に出てません。

友達の死を直接確認してません。

高校2年生以来、4年半ぶりに連絡が来ました。

友達に会いたいと言われ、翌日会うことができました。

友達は生きていました。

幽霊なのか、生きてたのか、わかりません。

主人公は、友達に帰る家がないことを知ります。

一人暮らししてた部屋で、友達と一緒に住むようになります。

友達は、次の部屋を決めるつもりがないのか、主人公の部屋に居座ります。

主人公は、就職するタイミングで、部屋を出て実家に戻ることになります。

友達はどうするのか。

主人公が母に連絡すると、友達も一緒に住んでいいと言われます。

友達はバイトをするものの、続きません。

バイトを辞めては次のバイトを始め、また辞めてを繰り返します。

主人公は友達に、音信不通になった4年半のことを聞けずにいました。

なぜ聞けないのかと、母が言うと、

聞かないでしょ、ふつう、怖くて、聞けないでしょ、他人のことをそんなに!

と、主人公は答えます。

主人公の母が友達に聞いたところ、

お母さんが亡くなったから急に引越しすることになって、親戚に預けられたり、でもだめで施設に入ったり、あちこち転々としてたんだって

と、友達は言ったそうです。

4年半どうしてたかを聞けない関係で、友達と言えるのかは疑問です。

主人公は、友達のことを「他人」って言ってますし。

それに、友達が母に言ったことを、主人公は信用してません。

不動産屋で、偽名を名乗る友達です。主人公は、友達が嘘をついてることを疑ってます。

読み手の私にとって、友達は、ただ迷惑な居候にしか見えません。

いなくならないでと思う要素を、感じさせません。

主人公は、ある日気づきます。

わたしは、死んだ朝日に会いたかったのであって、死んでいない朝日に会いたかったわけではない

(中略)朝日は死んでいない。だからもう、出て行ってもらったほうがいい

友達の名前が、朝日です。

死んだ友達に会いたかったのであって、死んでいない友達に会いたかったわけではない。というのが良いです。

友達は主人公に、

いるっていうことは、かかるっていうことだよ

と言います。

  • お金もかかる
  • 時間もかかる
  • 世話もかかる

主人公の実家には、友達の分をかける余裕がありました。

家出した、主人公の姉の分があったからです。

母にとって、友達は、主人公の姉の代わりのようになってました。

しかし、主人公は違います。

新社会人で働いて帰って、リビングのソファでゴロゴロしてる友達を見たら、出て行ってほしいと思うのは、自然でしょう。

主人公の姉が実家に帰ってきたとき、母の関心が姉に向きます、

友達は居心地悪そうに見えます。

そんな友達を見た主人公は、

かわいそうだと思ったしかしだれもそれに気づいていない以上、自分が朝日を守ってやらないといけない

読み手の私は、このときが友達を追い出すチャンスだろうと思いました。

主人公が友達を擁護しなければいけない理由は、ありません。

友達の存在が、読み手の私にも、ただ迷惑な居候以外にあれば良かったのですが、図太い嫌な奴にしか感じられませんでした。

読み心地がよくありませんでした。

  • 友達は、主人公の実家を出るのか出ないのか
  • 出るならどういう形で出るのか
  • 出ないならどういう形で残るのか
  • 友達は、4年半どうしてたのか
  • 今はどこからお金をもらってるのか

決着をつけてほしいので、続編を希望します。