コントのような面白さ
主人公は、会社のチームリーダー(係長)です。
主人公は、ボディビルの大会に出るため、減量してます。
デブが嫌いだった。自分の身体に対するリスペクトに欠けているから。自分の体型なんて、自分の意志で、どうにでもなることなのに。
主人公の会社には、太ってる人が多いです。
同じ係内にも、バクバク食べてる部下がいます。
何の役にも立たない体脂肪。そうだ、こいつは身体の中の、いらない部分。組織の中でも、いらない部分。
体脂肪を落とすように、主人公は部下を手放します。
いらない部下を、チームから外せないか、上司に相談します。
相談後、部下は別の部署に異動になりました。
異動の引継ぎは、20分で終わりました。
一人がいなくなったことで、残った者らが活性化している。自分たちはいままでと同じ仕事を、より少ない数でこなしている。
無駄が削減されたと、主人公は感じてます。
この気持ちよさは、減量が上手くいっているときの体感と同じ。昨日より体重が減っているときの感動と同じ。
主人公にとって、チームの体脂肪といえる部下は、一人ではありません。
いらない部下を削ぎ落していきます。
ボディビルの大会に向けた減量も、着々と進みます。
一方、主人公が、上司からの仕事を依頼を断ったとき、異変を感じます。
いま、腹の肉が揺れなかったか?
(中略)いまの自分は体脂肪なのだ。組織の意志に従わないから。
主人公は、一度断った上司の依頼を、受け直すことにします。
すると、腹の肉の揺れを感じなくなりました。
組織の意志に従わない人材は、体脂肪。
コントのようだと思いました。
特に感じたのが、差し入れのケーキのやりとりです。
主人公は、ある工務店の訪問時、ケーキの差し入れを受け取ります。
差し入れのケーキを、主人公は職場に持ち帰らず、ごみ箱に破棄します。
誰にも見られてなかったはずですが、一人感づいた女性社員がいました。
その工務店は、訪問時にいつも差し入れを持ってきてました。
女性社員は工務店に確認します。(普通確認までするかなとは思いますが、これはコントです。)
女性社員の確認の結果、工務店が差し入れをしていたことが判明します。
女性社員は、主人公を問い詰めます。
主人公は、差し入れの分のケーキを、自費で準備することになりました。
二人だけの秘密でしたが、主人公がケーキを準備しなかったことで、他の同僚も知ることになります。
女性社員は、
いただいたケーキを、ぜんぶ一人で着服したんですよ?
と周りに言いますが、主人公は、
俺がそんなことするわけないじゃないですか!
(中略)ケーキなんてもう十年近く食べてないし……
と返します。
それに加えて、
- 自分がケーキ食べたの忘れちゃったんじゃないの?
- デブの癖にエラソーな口きくな!
- あんたはこの職場にいちばんいらない
と言い放ちます。
主人公の発言が悪いのに、周りの社員は、女性社員をなだめます。
- おいしすぎてあっという間に食べちゃったんだよ
- 一口で瞬殺だったんじゃない?
- これを機にダイエットしたら?
女性社員は食べてないのに、この言われようです。
これは、パワハラ、セクハラ、なにハラでしょうか。
ただ、これはコントとして面白いわけです。
現実には、こんなことないでしょうから。
女性社員は、メンタル休暇で休むことになります。
チームの人員が減ったのに、主人公は悲観しません。
それどころか、チームが最高にスリムになったととらえ、主人公が体重計に、
いま乗っちゃおうかな、いま乗っちゃおうかな
とワクワクするさまには、笑ってしまいました。
やはり石田さんの作品は面白い。
文章で笑わせる作家さんは稀有です。