いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『ミスター・チームリーダー』石田夏穂(著)の感想【コントのような面白さ】

コントのような面白さ

主人公は、会社のチームリーダー(係長)です。

主人公は、ボディビルの大会に出るため、減量してます。

デブが嫌いだった自分の身体に対するリスペクトに欠けているから自分の体型なんて、自分の意志で、どうにでもなることなのに

主人公の会社には、太ってる人が多いです。

同じ係内にも、バクバク食べてる部下がいます。

何の役にも立たない体脂肪そうだ、こいつは身体の中の、いらない部分組織の中でも、いらない部分

体脂肪を落とすように、主人公は部下を手放します。

いらない部下を、チームから外せないか、上司に相談します。

相談後、部下は別の部署に異動になりました。

異動の引継ぎは、20分で終わりました。

一人がいなくなったことで、残った者らが活性化している自分たちはいままでと同じ仕事を、より少ない数でこなしている

無駄が削減されたと、主人公は感じてます。

この気持ちよさは、減量が上手くいっているときの体感と同じ昨日より体重が減っているときの感動と同じ

主人公にとって、チームの体脂肪といえる部下は、一人ではありません。

いらない部下を削ぎ落していきます。

ボディビルの大会に向けた減量も、着々と進みます。

一方、主人公が、上司からの仕事を依頼を断ったとき、異変を感じます。

いま、腹の肉が揺れなかったか?

(中略)いまの自分は体脂肪なのだ。組織の意志に従わないから

主人公は、一度断った上司の依頼を、受け直すことにします。

すると、腹の肉の揺れを感じなくなりました。

組織の意志に従わない人材は、体脂肪。

コントのようだと思いました。

特に感じたのが、差し入れのケーキのやりとりです。

主人公は、ある工務店の訪問時、ケーキの差し入れを受け取ります。

差し入れのケーキを、主人公は職場に持ち帰らず、ごみ箱に破棄します。

誰にも見られてなかったはずですが、一人感づいた女性社員がいました。

その工務店は、訪問時にいつも差し入れを持ってきてました。

女性社員は工務店に確認します。(普通確認までするかなとは思いますが、これはコントです。)

女性社員の確認の結果、工務店が差し入れをしていたことが判明します。

女性社員は、主人公を問い詰めます。

主人公は、差し入れの分のケーキを、自費で準備することになりました。

二人だけの秘密でしたが、主人公がケーキを準備しなかったことで、他の同僚も知ることになります。

女性社員は、

いただいたケーキを、ぜんぶ一人で着服したんですよ?

と周りに言いますが、主人公は、

俺がそんなことするわけないじゃないですか!

(中略)ケーキなんてもう十年近く食べてないし……

と返します。

それに加えて、

  • 自分がケーキ食べたの忘れちゃったんじゃないの?
  • デブの癖にエラソーな口きくな!
  • あんたはこの職場にいちばんいらない

と言い放ちます。

主人公の発言が悪いのに、周りの社員は、女性社員をなだめます。

  • おいしすぎてあっという間に食べちゃったんだよ
  • 一口で瞬殺だったんじゃない?
  • これを機にダイエットしたら?

女性社員は食べてないのに、この言われようです。

これは、パワハラ、セクハラ、なにハラでしょうか。

ただ、これはコントとして面白いわけです。

現実には、こんなことないでしょうから。

女性社員は、メンタル休暇で休むことになります。

チームの人員が減ったのに、主人公は悲観しません。

それどころか、チームが最高にスリムになったととらえ、主人公が体重計に、

いま乗っちゃおうかな、いま乗っちゃおうかな

とワクワクするさまには、笑ってしまいました。

やはり石田さんの作品は面白い。

文章で笑わせる作家さんは稀有です。