いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『ミスター・チームリーダー』石田夏穂(著)の感想②【ミスターとは何か】

ミスターとは何か

感想①はこちらです。

タイトルにある「チームリーダー」は、主人公のことです。

主人公は会社の係長で、上司から、

頼むよ、チームリーダー

と言われてます。

上司に頼られる係長です。

では、「ミスター」とは何でしょう。

主人公のことでしょうか。

主人公は、「ミスター」とは呼ばれてません。

「ミスター」について、ボディビルで言及されてます。

ボディビルの大会では、階級制で優勝した者が立てる、無差別級のステージがあります。

無差別級のステージの優勝者が、「ミスター」と呼ばれるそうです。

毎年のように「ミスター東京」を輩出するという点で、従来、東京の「八十キロ以下級」はレべチだった

主人公は、「八十キロ以下級」でしたが、「七十五キロ以下級」に変更します。

一つでも上の順位を目指すためです。

「ミスター」を目指すなら、「八十キロ以下級」で優勝し、無差別級を戦った方がよさそうな気もします。

とはいえ、「レベチ」の「八十キロ以下級」より、「七十五キロ以下級」で優勝して無差別級に出場するのが先決、という考えもあるでしょう。

今の主人公は、「ミスター東京」からは遠い場所にいます。

主人公は、ジムで「八十五キロ以下級」の優勝者、無差別級で3位の人を見ます。

そのトレーニング姿を見て、「ミスター東京」と、主人公は思います。

無差別級が3位なので、「ミスター東京」ではないのに、「ミスター東京」と思います。

この界隈におけるミスター云々は、どこまでも自分らだけのものだ

主観的なもの、という意味でしょうか。

無差別級は3位でも、主人公から見たら「ミスター」に見えてしまうような。

では、「チームリーダー」として、主人公が「ミスター」と言えるのか。

  • 職員をデブ呼ばわり
  • 職員に向かって、この職場にいちばんいらないと言い散らす

など、パワハラやセクハラが過ぎます。

仕事のできると思ってた後輩には、辞められてしまいます。

人の体型を気にしないのは、自分の体型を気にしないことと同じだ人のことにシビアになれなければ、自分のことにもシビアになれない自分は、価値のある人間になりたい人に優しいだけの人は、自分にだってそうにしかなれない。だからミスターなんだろ?

「だからミスターなんだろ?」にかかってるのが、「人のことにシビアになれなければ、自分のことにもシビアになれない」だとします。

ボディビルのミスターは、人の体型を気にしてるのでしょうか。

大会出場者の体型は気にしてるかもしれませんが、会社の同僚の体型までは気にしないでしょう。

人にシビアになってるのでしょうか。

自分にはシビアでも、人にシビアかどうかは関係ない気がします。

ボディビルのミスターになるにあたり、人にシビアである必要はないでしょう。

しかし、チームリーダー(係長)は違います。

チームで働く上で、人(同僚や取引先)にシビアになる場面もあるでしょう。

だからといって、体脂肪を減らすように人員削減することが良いとは限りません。

本作は、

  • 会社の係長という組織のマネジメント
  • ボディビルの大会に向けた減量という個人のストイック

を混在させた末路を示してるように感じます。

個人のストイックさを、組織のマネジメントに当てはめていったらどうなるか。

「ミスター・チームリーダー」は主人公のことだと言えます。

チームリーダーである係長の仕事で、ボディビルのミスターのようなストイックさをメンバーに求めすぎた、「ミスター・チームリーダー」。

いい意味ではありません。

面白おかしく書かれてるので、現実に存在するかは別ですが。