いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『後世への最大遺物』内村鑑三(著)の感想【勇ましい高尚なる生涯】

勇ましい高尚なる生涯

本書は、『半農半Xという生き方』の著者、塩見直紀さんに影響を与えた本だそうです。

感想はこちらです。

「後世への最大遺物」というタイトルに、興味を惹かれました。

「最大遺物」とは何だろうか。

著者の内村鑑三は、後世へ遺すべきものとして、

  • 金(寄付)
  • 事業
  • 思想(文学)
  • 教育

を挙げます。

金(寄付)や事業を遺すよりは、文学や教育の方が、やさしいと言います。

とはいえ、文学者にも教育者にもなれなかったら、後世に何も遺すものはないのかというと、それは違います。

誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物があるそれは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います

「勇ましい高尚なる生涯」とは何か。

巻末解説の鈴木範久さんによれば、

文字どおり「勇ましい高尚なる生涯」ではない。(中略)「国人」に捨てられ、「事業に失敗」し、「貧」に迫られ、「不治の病」にかかった人々であっても、唯一残されている可能な生き方の別名である

その生き方とは何か。本文から抜粋します。

この世の中は悲観の世の中ではなくして、歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への遺物としてこの世を去ることであります

抽象的でわかりにくいので、具体例を抜粋します。

後世のために私は弱いものを助けてやった、後世のために私はこれだけの困難に打ち勝ってみた、後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた

  • 弱いものを助ける
  • 困難に打ち勝つ
  • 品性を修練する
  • 義侠心(正義のために弱いものを助ける心)を実行する
  • 情実(私情が絡んで公平な取り扱いができない関係や状態)に勝つ

以上のことは、誰にでもできると言います。

そうした生涯を送れば、後世に最大の遺物を残せると言うわけです。

果たしてそうでしょうか。

確かに、金(寄付)や事業や文学(思想)や教育を遺せない人にとっては、大事な心構えだと思います。

ただ、金や事業や文学や教育を遺せるなら、それに越したことがないと、私は考えます。

金や事業を遺すのは、私にとって難しいです。

ですが、文学(思想)や教育なら遺せるのではないかと、淡い期待が生まれました。

当然、「勇ましい高尚なる生涯」を前提とした上での、文学(思想)や教育です。

本書では、文学を志すことに勇気づけられました。

実にあなたがたの心情をありのままに書いてごらんなさい、それが流暢なる立派な文学であります。(中略)自分が心のありのままに、仮名の間違いがあろうが、文法に合うまいが、かまわないで書いた文の方が私が見ても一番良い文章であって、外の人が評してもまた一番良い文章であるといいます

自分が感じたことを、そのまま文章に書き出す。

そこに文学性があると、私は解釈しました。

では、どうやって文学(思想)を残していくか。

思想そのものだけを遺してゆくには文学によるほかない

著者が生きていた時代では、思想を遺す手段は、文学しかなかったのでしょう。

今は違います。

SNSやYouTubeなど、媒体は多様化してます。

そこで思想を残せばいい。

私には、このブログがあります。

本を題材に、自分の考え(思想)を残す媒体として、適切だと感じました。

私が感想(思想)を書き、誰かの役に立てれば、遺物になるかもしれません。

今のままでは、満足できてません。

感想だけでは、思想とは言いがたいです。

感想に自分の人生が乗っかって初めて、思想と言えるのではないか。

本書を読んで、書籍のような、形として残したい欲が、自分にあると気づきました。