2024年に読んで良かった本ベスト10
私が2024年に読んだ本で、良かった本を10冊挙げます。
小説やビジネス書など、ジャンルは問わずです。
まずは結果から。
- 『生きのびるための事務』坂口恭平,道草晴子(著)
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』J.K.ローリング(著)
- 『後世への最大遺物』内村鑑三(著)
- 『減速して自由に生きる』髙坂勝(著)
- 『バリ山行』松永K三蔵(著)
- 『スカイ・クロラ』森博嗣(著)
- 『月ぬ走いや、馬ぬ走い』豊永浩平(著)
- 『しをかくうま』九段理江(著)
- 『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋(著)
- 『DTOPIA』安堂ホセ(著)
タイトル下の感想は、読書メーターで私が書いたものの引用です。
1位『生きのびるための事務』
タイトルに事務とあるが、事務職の話ではない。「事務のことを考える、というのは、つまりは、あなたが小さい頃から本心でやりたいと思ってることを実現するための方法」とある。どうやってやりたいことを実現するかの具体的方法が、著者の体験を元に語られる。ゆるっとした漫画形式なので読みやすく、書かれてる内容はシンプル。冒頭の、「できるだけ《労働》は切り詰めてください。《仕事》に支障がでるので」に痺れた。労働と仕事は一緒だと思っていた。労働は生活費を稼ぐこと、仕事は自分のやりたいこと(使命)。まずは、労働を切り詰める。
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2位『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
オーディブルで聴いた。感動して泣いた。ハリーポッターで泣くとは思わなかった。20年以上前に映画を観て、本も読んだ。ストーリーはおおむね覚えてた。当時はワクワクした。今回も終盤まではワクワクした。しかし最後、ハリーの必死さやダンブルドアの温かさにワクワクとは違うものを感じた。「スリザリンに入るべきだった」と言うハリーに、ダンブルドアは「それでも組分け帽子はグリフィンドールに入れた」と言う。「自分が本当に何者かを示すのは、持っている能力ではなく、自分がどのような選択をするか」というダンブルドアの言葉に痺れた。
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3位『後世への最大遺物』
著者は、後世に遺すべきものとして、金(寄付)、事業、思想(文学)、教育を挙げる。いずれも遺すべきものがなかったら、遺すものはないのかというと、違うと言う。「勇ましい高尚なる生涯」があると言う。弱いものを助ける、困難に打ち勝つ、品性を修練する、義侠心を実行する、情実(私情が絡んで公平な取り扱いができない関係や状態)に勝つ。これらは誰にでもできると言う。私が感じたのは、思想(文学)のハードルの低さだ。「実にあなたがたの心情をありのままに書いてごらんなさい、それが流暢なる立派な文学であります」。それが良かった。
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4位『減速して自由に生きる』
会社員を辞めて自由に生きる方法。村上龍さんの帯文が印象的。「減速すれば、景色が鮮明に見える。発見もある。」減速するとは、もっとゆっくりとしたペースで生活すること。減速するには、仕事の量を減らし、予定の量を減らす必要がある。著者は30歳で会社を辞め、バーを開いた。週休2日から始めて、週休3日にした。バーの開業後1年で、お米と大豆の自給を始めた。「食費が減らせるので、低収入でいくことが可能です。低収入でいいなら、仕事の選択肢が増えます。好きな仕事をしやすくなります。」著者はと言う。そのためにまず仕事を減らす。
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5位『バリ山行』
バリ山行(さんこう)と読む。バリの山に行く話かと思ったが、違った。バリは、バリエーションの略。通常の登山道でない道(難易度の高いル―トや廃道)を行くことを言う。よって、危険が伴う。主人公は、建物の外装を修繕する会社に勤めている。同僚にバリ登山をやってる人がいて、主人公はその人に頼んで連れて行ってもらう。道なき道を進むバリを知ることができたし、バリ登山について考えることができた。私はバリをやってみたいとは思わなかったし、バリに惹かれる人の気持ちも理解はできなかったが、ラストが良くて、読んで良かったと思った。
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6位『スカイ・クロラ』
著者最高傑作らしい本作。今まで読んだ森さんの小説(『喜嶋先生の静かな世界』『すべてがFになる』)では、一番面白かった。あらすじに、「永遠の生命を持つ子供たち「キルドレ」が地上で暮らす大人のために、戦争を請負う社会」とあり、重要なことがあっさり書かれている。永遠の生命を持った子供は、死んでも別の子供として生まれ変わり、再び戦いに従事される。子供たち当人が、死んでも生まれ変わることを確信していないところや、大人たちの平和を維持するために、戦う子供たちが存在してるところが、世界を成り立たせている。面白かった。
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7位『月ぬ走いや、馬ぬ走い』
読み方は、ちちぬはいや、うんまぬはい。第二次世界大戦から現代まで、断片が描かれる。断片の語り手はそれぞれ異なり、文体が描き分けられてる。例えば、男子小学生の語りから、戦時中の兵隊に変わる。断片と断片のつなぎ方がうまい。改行、空白を挟んで、語り手が切り替わる。作者の筆力の高さを感じる。断片を深めて一つの小説にすることもできそうだが、戦時中から現代までを断片でつなぐことで、壮大な物語に仕上がってる。タイトルの意味は「時をだいじにすべし」だが、その意味するところは読み取れなかった。群像新人文学賞受賞作。すごい。
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8位『しをかくうま』
結局、「しをかくうま」が何か、わからなかった。「シヲカクウマ」は競走馬。競馬実況者である主人公が愛してる馬。詩を書く馬なのか、死を欠く馬なのか。「しをかくうま」は人間か。意味を読み取ろうとしても、読み取れない。人間が馬に乗ってるのではなく、人間が馬に乗せられてるのか。だからどうした。登録馬の名前の文字数制限が9文字から10文字に変わる。だからどうした。主人公は異常と思う内容が、私には異常と思えない。理解できない。理解を阻む。解釈させない、どうとでも解釈できる、解釈を不要だと思わせる。でも最後まで読ませる。
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9位『サンショウウオの四十九日』
主人公は結合双生児の姉妹。はたから見れば一人に見えるが、違う半顔が少しずれて二つくっついている。特異な顔貌をした「障がい者」だとみられる。戸籍上は二人。意識はつながってないが、思考や感情、感覚を共有している。主人公が陰陽図(白と黒の勾玉を組み合わせたような図)を見たとき、黒と白のサンショウウオに見えた。「白黒サンショウウオはいつもお互いを食べようと回りはじめるのだ。一人でありたい」。結合双生児なので一人にはなれない。体は一つで、思考や感情や感覚は共有。自分たちの境遇がかわいそうだと、陥らないのが良かった。
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10位『DTOPIA』
読み方はデートピア。配信の恋愛リアリティーショーの番組名。フランス領ポリネシアの島で、一人の女性を巡り、多様な国から集められた男性10人が競う。その一人がMr.東京こと「おまえ」だった。二人称小説かと思ったが、「私」という一人称や三人称の視点も出るので、厳密には二人称小説ではないだろう。だが「君」や「あなた」でない「おまえ」が謎の存在として際立ってる。「おまえ」は中学生のころ、「私」の睾丸を摘出した。「私」の父親は、おまえががどう感じ、どう育つか、一番おぞましいと言う。同感だ。著者の作品で一番面白かった。
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再読は、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のみ(とはいっても20年以上前)で、他は初読の作品です。
順位付けについて、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は悩みました。
今さら感があり、上位に入れてもなと思ったので、最初はひっそりと10位に入れてました。
しかし、感銘を受けたのは事実です。
再読や出版時期を考慮して順位を操作するのはよくないと考えを改め、上位に変えました。
今年、本で泣いたのは、この作品だけです。
泣ければいい作品なのかと言われると、イコールではありません。
ただ、感動した理由が、あまりにも私の課題と地続きだったので(だから泣けたのだと思いますが)、上位にしました。
『生きのびるための事務』は、最初オーディブルで聴きました。
良かったので、その後、本でも読みました。
そして先日、本の感想をアップしました。
読んだばかりの作品を1位にするのもどうかと思いましたが、オーディブルで聴いたときから、この作品は本でも読もうと思うくらい衝撃を受けました。
オーディブルで聴く作品は感想を書かずに終わることが多いですが、『生きのびるための事務』『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は、感想を書かざるを得ないほど、印象に残りました。
2025年も感想を書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。