いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『老人と海』ヘミングウェイ(著)の感想【ぶちのめされても負けない】

ぶちのめされても負けない

読むまでの印象は、

  • 老人が、海で大きな魚を釣り上げる奮闘記
  • 辛いことでも、我慢し苦労すれば、良い結果が得られる

でした。全く違いました。

老人は、命を懸けてカジキマグロを釣り上げ、釣り上げた後も命がけだったのです。

特に釣り上げた後は、

  • 血のにおいを嗅ぎつけた鮫との攻防
  • 鮫を倒しても、新たな鮫がやってきて、それを倒しても……の繰り返し

鮫がやってくる度に、カジキマグロが少しずつ食べられていきます。

そして港の灯が見えた後、鮫の群れが襲い掛かります。

老人は対処できず、骨になるまでカジキマグロを食い尽くされてしまいました

命を懸けて、後に残ったのは、カジキの頭、尾、骨でした。

それでも老人は、

いい調子だ、と彼は思った。舟は無事だ。舵棒が折れただけで、あとは何でもない。そんなものは取り替えがきく。

(中略)

負けてしまえば気楽なものだ。こんなに気楽だとは思わなかった。さて、何に負けたのか。

「何でもない」と声に出した。「沖へ出すぎたんだ」

老人は負けたと思っていません。

一人で沖に出すぎたからと納得しています。

人間、負けるようにはできてねえ。ぶちのめされたって負けることはねえ

負けは気の持ちようで何とでもなると、言葉で言うのは簡単ですが、

手に入れた大物を失って、こんな清々しくいられる境地って何なのでしょう。

何かを頑張りたい人、頑張ってもだめだと思っている人におすすめです。

老人と海 (光文社古典新訳文庫)

老人と海 (光文社古典新訳文庫)

 

結果や周りで、接し方を変えない少年

老人は、84日間、一匹も釣れません。

40日目までは、漁に同行する少年がいました。

しかし、親に反対され、少年は老人に同行できなくなります。

全く釣れない老人には、周りから、冷やかしや同情が向けられます。

それでも少年は、老人にご飯や酒を準備をしたり、話し相手になったりします。

少年は、老人から漁をまだまだ教わりたいと思っています。

一人で海から帰ってきた老人は、カジキの頭、尾、骨を持ち帰ってきたことで、周りから驚かれます。

食い尽くされたとしても、釣った事実は変わりません

少年は、くたくたになった老人の世話をします。

少年は言います。

「また二人で漁に出られるよね」

「いや、おれには運がない。もう見放されたよ」

「そんなのどうでもいい」少年は言った。「僕の運を持っていく」 

食い下がる少年に、老人は準備の大切さを伝えます。

少年は、早くよくなってと、老人に言います。

次は、二人で海に出るのでしょう。

そしていつか、二人でカジキを釣り、鮫に食われずに帰ってくるはずです

私は、老人のような屈強な人間になれなくても、

少年のように、信じたものを、結果や周りに左右されずに信じていたいです。

老人と海 (光文社古典新訳文庫)

老人と海 (光文社古典新訳文庫)

 

調べた言葉

  • 沽券に関わる:体面や品位にさしつかえる
  • 氷室:氷を夏まで貯蔵しておくための部屋
  • 燐光(りんこう):光を当てられた物質から、残光が見られる現象
  • 軍艦鳥:全体黒色の大きな海鳥
  • 流感:流行性感冒。ウイルスの感染によって起こる急性・伝染性の風邪
  • プリズム:光学ガラスなどでできた透明な多面体
  • 曳航(えいこう):船が他の船を引いて航行すること
  • 艫(とも):船の後方
  • やおら:ゆっくり
  • 舷側(げんそく):船の側面