いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『ギフテッド』鈴木涼美(著)の感想【母の死に際】(芥川賞候補)

母の死に際 主人公は、飲み屋で働く20代後半の女性です。 歓楽街やコリアンタウンの近くに住んでいます。 母の要望で、母は主人公の部屋に移り住みます。 しかし、すぐに入院してしまいました。 母の命は長くないです。母に付き添うため、主人公は飲み屋を辞…

『家庭用安心坑夫』小砂川チト(著)の感想【坑道に立つマネキン人形を盗む】(群像新人賞受賞、芥川賞候補)

坑道に立つマネキン人形を盗む タイトルの「家庭的安心坑夫」とは何でしょうか。 作中には明言されていません。 関連しているのは、主人公の実家近くのテーマパークの坑道にいる、ツトムというマネキン人形のことです。 ツトムはその坑道の中腹に立っている…

『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子(著)の感想【胸糞悪い『コンビニ人間』】(芥川賞受賞)

胸糞悪い『コンビニ人間』 『コンビニ人間』からユーモアを引いて、胸糞悪さを足したような小説です。 狭い職場の表面的な人間関係の裏にある感情を、さらけ出しています。 登場人物の誰一人にも魅力を感じませんでした。 支店長:「飯はみんなで食ったほう…

『あくてえ』山下紘加(著)の感想【悪態というコミュニケーション手段】(芥川賞候補)

悪態というコミュニケーション手段 タイトルの「あくてえ」とは、 悪口や悪態といった意味を指す甲州弁 で、主人公である19歳の女性は、悪態をつきます。 主人公が、同居の祖母を「ばばあ」と心の中で呼ぶのも悪態の一つです。 主人公は、 祖母 母 の三人暮…

【芥川賞予想】第167回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2022年上半期)

第167回芥川賞候補作発表 2022年6月17日(金)、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、7月20日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 小砂川チト『家庭用安心坑夫』群像6月号 初の候補入りです。 同作で群像新…

『N/A』年森瑛(著)の感想②【つらい人に掛ける言葉】(文學界新人賞受賞、芥川賞候補)

つらい人に掛ける言葉 感想①はこちらです。 主人公の友人であるオジロの祖父が、コロナにかかり、入院します。 オジロから直接報告を受けた主人公は、どのように声を掛けていいか、悩みます。 オジロにとって重要な友だちだから打ち明けてもらえたのであって…

『N/A』年森瑛(著)の感想①【かけがえのない他人】(文學界新人賞受賞、芥川賞候補)

かけがえのない他人 主人公の女子高生は、教育実習生の女子大生と付き合っています。 主人公は、「かけがえのない他人」に憧れていました。 ホットケーキを食べたりおてがみを送るような普遍的なことをしていても世界がきらめいて見えるような、他の人では代…

『小説家になって億を稼ごう』 松岡圭祐(著)の感想【億を稼ぐ小説の書き方】

億を稼ぐ小説の書き方 小説を書いて億を稼げるのでしょうか。 著者は稼げると言います。 実際に、著者が年収1億円を初めて超えた年の確定申告書の画像が、本書に載っています。 本書でご紹介するのは、小説家で「食べていく」のではなく「儲けて富を得る」方…

『ここはとても速い川』井戸川 射子(著)の感想【見逃してはいけない言葉】(野間文芸新人賞受賞)

見逃してはいけない言葉 主人公は、大阪の児童養護施設で暮らす小学5年生です。 主人公の視点で語られます。 祭りで買ったアメリカンドッグを食べていると、 根もとが白なった短い茶髪の毛が出てきた。引き抜いて、なかったことにするために大急ぎで食べ終わ…