いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『改良』遠野遥(著)の感想【4回も読んでる】(文藝賞受賞)

4回も読んでる 私は過去3回、『改良』の感想を書いてます。 1回目は、2019年11月。 2回目は、2020年11月。 3回目は、2022年4月(読書メーターで記載)。 bookmeter.com 約1年ぶり、4回目の『改良』。 4回目の感想を書いてるということは、本書を4回読んでま…

『あなたの小説にはたくらみがない 超実践的創作講座』の感想【編集者視点の小説の書き方】

編集者視点の小説の書き方 著者は、新潮社の編集者です。 40年間、編集に携わり、5つの新人賞を立ち上げた経験があるようです。 小説を書こうとする方々に申し上げたいのは、好きなように書くのが身のためですよ、ということだ。これだけ小説の「物差し」が…

『大江健三郎自選短篇』(初期短篇)の感想【『空の怪物アグイー』と『個人的な体験』】

空の怪物アグイー 大江さんの初期短篇の読後感は、やるせないです。 頑張っても報われない 無駄な努力 予想外の裏切り など、ため息をついてしまう終わり方の作品が多いです。(それが良さでもあります) ただ、『空の怪物アグイー』は少し違います。 主人公…

『家』高橋弘希(著)の感想【老婆を殺して良心が痛むか】

老婆を殺して良心が痛むか 29歳の主人公は、ネット掲示板で募集の仕事に応募します。 仕事内容は、老婆の家の金庫にある2000万円を盗むことでした。 主人公の取り分は、半分の1000万です。 財布に250円しか入っていない主人公には、僥倖でした。 押し入った…

『音楽が鳴りやんだら』高橋弘希(著)の感想②【記事を書く個人に価値はない】

記事を書く個人に価値はない 感想①はこちらです。 主人公のバンドをインタビューする、雑誌記者がいます。 記者は主人公のバンドのファンでもあり、仕事熱心です。 しかし、その記者は異動します。 異動先は、ゴシップを取り扱う週刊誌でした。 記者は、主人…

『世界地図、傾く』黒川卓希(著)の感想【選評を読んで】(新潮新人賞受賞)

選評を読んで 新潮新人賞には、2630作品の応募があったそうです。 本作がその頂点にふさわしいかというと、そうは思いませんでした。 何の話かよくわからなく、読み通すのが苦痛でした。 新人賞か芥川賞候補作でなければ、途中で読むのをやめています。 しか…

『日曜日の人々』高橋弘希(著)の感想【自助グループの存在意義】(野間文芸新人賞受賞)

自助グループの存在意義 「日曜日の人々」とは、自助グループの冊子です。 自助グループとは、悩みや問題を抱えた人たちが集まる場です。 冊子には、メンバーの個人的な体験が書かれています。 拒食症 窃盗癖 不眠症 など、自身の悩みや問題が書かれています…

『音楽が鳴りやんだら』高橋弘希(著)の感想①【本気で音楽をやる代償】

本気で音楽をやる代償 主人公は、音楽の才能に恵まれます。 地元の友達と組んだバンドで、レコード会社からデビューの声がかかります。 デビューの条件は、ベースのメンバーを変えること。 レコード会社の社員は言います。 本気で音楽をやりたいのなら、代償…

『荒地の家族』佐藤厚志(著)の感想【明るい未来が見えなくても】(芥川賞受賞)

明るい未来が見えなくても 「荒地」の家族。 タイトルが重いです。 帯のキャッチコピーに、 あの災厄から十年余り、男はその地を彷徨いつづけた。 とあり、読む前から気が重いです。 「荒地」とは、東日本大震災の被害を受けた土地です。 主人公は、宮城県で…

『この世の喜びよ』井戸川射子(著)の感想【二人称で書く意味】(芥川賞受賞)

二人称で書く意味 主人公は、ショッピングセンター内の喪服売り場で働く女性です。 「あなた」という二人称で書かれます。 本作の一文目は、 あなたは積まれた山の中から、片手に握っているものとちょうど同じようなのを探した。 なぜ、二人称で書かれる必要…

『グレイスレス』鈴木涼美(著)の感想【なぜAV女優にならないのか】(芥川賞候補)

なぜAV女優にならないのか 「グレイスレス」の言葉の意味がわかりませんでした。 辞書では、 品のない 見苦しい 恐れのない 不快な など、多様な意味が書かれていました。 作中に「グレイスレス」という言葉は出てきません。 主人公は、AV業界で化粧の仕事を…

村上春樹の新刊をなぜ買ってしまうのか【長編という情報だけで買う理由】

長編という情報だけで買う理由 村上さんの新作長編が、4月13日に発売されます。 www.shinchosha.co.jp 新作の長編は、『騎士団長殺し』以来、6年ぶりです。 公表されているのは、 発売日(4月13日) 長編小説(672ページ) 値段(2970円) 公表されていない…

『異言』グレゴリー・ケズナジャット(著)の感想【与えられた役割を演じる】

与えられた役割を演じる 異言というタイトル。聞きなれない言葉です。 辞書には、 「その人の態度や事実と、言うこととが違うこと」 とあります。 主人公は、幼少のときに行った教会で、異言を目にします。 洗礼を受けた少女が、今までの態度と別人のように…