いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『日本エッセイ小史』酒井順子(著)の感想【エッセイスト、随筆家になるには】

エッセイスト、随筆家になるには エッセイの書き方を学びたくて、手に取りました。 タイトルに「小史」とあるとおり、エッセイの簡単な歴史が書かれてます。 エッセイ賞の選考委員を務めた井上ひさしさんは、 エッセイとは自慢話のことである と、選評に何度…

『本を書く』アニー・ディラード(著)の感想【誰にも必要とされてないのに書くなら】

誰にも必要とされてないのに書くなら 私の人生の目標に、「本を書く」があります。 自費出版ではなく商業出版です。 公募の賞に出したことはありますが、受賞には程遠い状況でした。 本書のタイトル「本を書く」は、本を書きたい私に合う内容の本だと思って…

『プールサイド』村上春樹(著)の感想【35歳問題と主人公が泣いた理由】

35歳問題と主人公が泣いた理由 宮崎智之さんの『平熱のまま、この世界に熱狂したい』で、35歳問題として本作が取り上げられてたので、読みました。 35歳問題は、私にとってタイムリーな話題でした。 35歳になった春、彼は自分が既に人生の折りかえし点を曲っ…

『平熱のまま、この世界に熱狂したい』宮崎智之(著)の感想【〇を作る理論】

〇を作る理論 〇を作る理論が良かったです。 読み方は、丸ではなくゼロです。ゼロを作る理論。 僕はお年寄りや女性など、明らかに腕力の差がある人と買い物をする際、袋に入った商品を全部持つことにしている (中略)五対五でつらさを分配するよりも、一〇…

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士(著)の感想【野良猫は自殺をしない】

野良猫は自殺をしない モノの時給を考えるというのが面白かったです。 うちで言えば、MacBook Airがエースだ。文章を書くだけでなく、映画を見たり、音楽を聴いたりすべてをこなしてくれる。生涯賃金はそれなりに高額だが、毎日数時間、すでに何年も使ってい…

第172回芥川賞受賞作発表、選評(2024年下半期)の感想

第172回芥川賞受賞作発表 2025年1月15日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 DTOPIA 作者:安堂ホセ 河出書房新社 Amazon ゲーテはすべてを言った 作者:鈴木 結生 朝日新聞出版 Amazon 『DTOPIA』は予想当たりましたが、『ゲーテはす…

「2024年に読んで良かった本ベスト10」とその感想

2024年に読んで良かった本ベスト10 私が2024年に読んだ本で、良かった本を10冊挙げます。 小説やビジネス書など、ジャンルは問わずです。 まずは結果から。 『生きのびるための事務』坂口恭平,道草晴子(著) 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』J.K.ローリング(…

『ダンス』竹中優子(著)の感想②【他人の家の風呂を借りる老夫婦】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

他人の家の風呂を借りる老夫婦 感想①はこちらです。 他人の家の風呂を借りる旅をしてる老夫婦の話が、ちょっとしたエピソードで出てきます。 本書を読んだ後にも、どこか頭に残ってました。 不動産屋で働く青年の、子どもの頃に起きた話です。 小学生の彼が…

『生きのびるための事務』坂口恭平,道草晴子(著)の感想【労働と仕事を切り分ける】

労働と仕事を切り分ける 事務と書かれた本が売れてるので、気になりました。 本書でいう事務は、事務職とは関係ありません。 では、事務とは何か。 事務のことを考える、というのは、つまりは、あなたが小さい頃から本心でやりたいと思ってることを実現する…

『死んだ山田と教室』金子玲介(著)の感想【声だけ残される存在】(メフィスト賞受賞)

声だけ残される存在 男子校の教室は、静まり返ってます、 二年E組の人気生徒だった山田が、交通事故で亡くなったからです。 担任が、気分転換に席替えを提案したとき、山田の声がどこからか聞こえます。 いくら男子校の席替えだからって盛り下がりすぎだろ …

【芥川賞予想】第172回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2024年下半期)

第172回芥川賞候補作発表 2024年12月12日(木)、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、2025年1月15日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 安堂ホセ『DTOPIA』文藝秋季号 『ジャクソンひとり』(第168回候補…

『ゲーテはすべてを言った』鈴木結生(著)の感想【名言の出典を求めて】(芥川賞候補)

名言の出典を求めて 主人公は、ドイツ文学を研究する大学教授です。 日本におけるゲーテ研究の第一人者とされてます。 主人公が学生時代、ドイツに留学してたときに、隣人の美大生は言いました。 ドイツ人はね(中略)名言を引用するとき、それが誰の言った…

『DTOPIA』安堂ホセ(著)の感想【睾丸を摘出する少年】(野間文芸新人賞候補、芥川賞候補)

睾丸を摘出する少年 「DTOPIA」の読み方は、「デートピア」です。 「DTOPIA」は、配信の恋愛リアリティーショーの番組名です。 舞台は、フランス領ポリネシアのボラ・ボラ島。 ヒロインの女性一人を巡って、多様な国から集められた男性10人が競います。 フラ…

『字滑り』永方佑樹(著)の感想【文字が消えて使えなくなる現象】(芥川賞候補)

文字が消えて使えなくなる現象 字滑り(じすべり)とは、突然、文字が消えて使えなくなる現象です。 例えば、漢字やひらがなやカタカナが、消えて、使えなくなります。 見る・聞く・話す言葉が、消えます。 どの言葉が消えたり、使えなくなったりするのかは…

『二十四五』乗代雄介(著)の感想【リアリティのあるなし】(芥川賞候補)

リアリティのあるなし 主人公は、弟の結婚式に出るために、新幹線で仙台へ行きます。 新幹線から降りるとき、就活帰りの女子大生から声を掛けられます。 タイトルにもあるとおり、主人公は、24、5歳の女性です。 女子大生は、自分の読みたかった漫画を主人公…

小川哲+高瀬準子 対談「小説家は嘘をつく」の感想(『新潮』2024年2月号)【作家になる方法】

作家になる方法 小川哲さんと町屋良平さんの対談が面白かったので、こちらも手に取りました。 町屋さんとの対談の感想はこちらです。 高瀬さんとの対談も、「これから作家を目指すひとへ」というタイトルでも合うと思いました。 高瀬さんは小説の登場人物を…

小川哲+町屋良平 対談「これから作家を目指すひとへ」の感想(『新潮』2024年11月号)

シーンを象徴にする 小川哲さんと町屋良平さんの対談です。 小川哲さんはエンタメの新人賞(ハヤカワSFコンテスト)出身で、直木賞受賞 町屋良平さんは純文学の新人賞(文藝賞)出身で、芥川賞受賞 小川さんのエレベーターに乗ったときの思考の跳躍に、驚き…

『ハイパーたいくつ』松田いりの(著)の感想【冒頭乗り切れば面白い】(文藝賞受賞)

冒頭乗り切れば面白い 冒頭を読んだとき、挫折しそうでした。 誰が何を語ってる何の話なのか、全くつかめなかったからです。 途中で、しんどさから解放されます。 主人公が経理の仕事をしており、相手先の会社に、本来の1000倍の金額を振り込んでしまったこ…

『光のそこで白くねむる』待川匙(著)の感想【幼馴染との脳内対話】(文藝賞受賞)

幼馴染との脳内対話 主人公は、お土産屋でバイトをしてます。 店が無期限休業することになり、主人公は仕事がなくなります。 出勤最終日に主人公は、店から7万円をもらいます。 時間と臨時収入を得た主人公は、故郷へ行くことにします。幼馴染の墓参りをする…

『ダンスはへんなほうがいい』新崎瞳(著)の感想【外れ値の友だち】(すばる文学賞佳作)

外れ値の友だち 主人公は27歳の男性です。 うつ状態を理由に、勤め先の広告代理店を休職します。 主人公が自宅で配達を頼むと、幼稚園の同級生という男性が、配達員として来ました。 主人公は、その同級生を覚えてませんでした。 その後、同級生は再びやって…

『泡の子』樋口六華(著)の感想【トー横キッズの末路】(すばる文学賞受賞)

トー横キッズの末路 読み方は、泡(あぶく)の子(こ)です。 主人公は、トー横(新宿東宝ビルの横)を生活の拠点としてます。 主人公が17歳のとき、トー横で同い年の友達ができました。 知り合いに、トー横を見下ろせる部屋に住んでる青年がいます。 青年は…

『さびしさは一個の廃墟』仁科斂(著)の感想【言葉は廃墟化する】(新潮新人賞受賞)

言葉は廃墟化する 同時受賞の『ダンス』とは異なり、新潮新人賞っぽい作品だと思いました。 文章が濃密で、簡単には読ませてくれません。 新人賞受賞作でなければ、途中で投げ出してたかもしれません。 私は二度読みました。 金原ひとみさんが選評で、 初読…

『ダンス』竹中優子(著)の感想①【馴染めてない人たち】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

馴染めてない人たち まず一文目が良いです。 今日こそ三人まとめて往復ビンタをしてやろうと堅く心に決めて会社に行った。 「三人まとめて」、「往復」ビンタに、私は引きつけられました。 三人まとめてってどういうことだろう ただのビンタではなく往復ビン…

小説「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の感想【感動して泣くとは思わなかった】

感動して泣くとは思わなかった ハリーポッターを読んで(聴いて)、泣くとは思いませんでした。 読んで(聴いて)と書いたのは、Amazonオーディブルを使ったからです。 Amazon.co.jp: Audibleオーディオブック 厚い本を読む時間や気力はありませんでしたが、…

『キャッチコピーのつくり方』川上徹也(著)の感想【言葉で心を動かす方法】

言葉で心を動かす方法 著者の川上さんは、新卒後、広告会社にコピーライターとして採用されたわけではありませんでした。 20代後半まで、営業職をしてたそうです。 その後、クリエイティブ局でCMプランナーをしましたが、会社勤めになじめず、退社してフリー…

『パーティーが終わって、中年が始まる』pha(著)の感想【中年クライシスなのか】

中年クライシスなのか 「パーティー」が終わって、「中年」が始まる。 「パーティー」とは、シェアハウスを運営して解散するまでのことで、 「中年」とは、シェアハウスを解散して一人暮らしを始めたことでしょう。 「中年」は、年齢よりも精神的なものだと…

『スマホ時代の哲学』谷川嘉浩(著)の感想【他人の頭を借りて考える】

他人の頭を借りて考える 難しかったです。 何が難しかったというと、私は結局どうしたらいいのか、わからなかったからです。 私は本(特にビジネス書)を読むとき、自然と「答え」を探していると、気づきました。 本に書かれた「答え」を読む 納得して「行動…

『次の時代を先に生きる』髙坂勝(著)の感想【ナリワイの見つけ方】

ナリワイの見つけ方 『減速して自由に生きる』が良かったので読みました。 感想はこちらです。 「次の時代を先に生きる」とは、どういうことでしょうか。 経済成長主義から卒業してこそ、やっと新しい生き方が始まり、次の時代が始まる。 「経済成長主義から…

『Dark Horse 好きなことだけで生きる人が成功する時代』の感想【個性に合った充足感の追及】

個性に合った充足感の追及 『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』で参考にされてたので読みました。 感想はこちらです。 ダークホースとは、 予想を覆して勝利する人々、今まで見向きもされなかったのに突然快進撃をはじめ勝者となる人のこと 「予想を覆…

『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』谷川嘉浩(著)の感想【偏愛を見つける】

偏愛を見つける タイトルに惹かれました。 「人生のレールを外れる衝動のみつけかた」 「人生のレールを外れる衝動」とは、 誰かに強制されたわけでもないのに、自分を何かに夢中にさせる衝動のこと と、著者の谷川さんは言います。 漫画『チ。』を例に挙げ…