いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『小隊』砂川文次(著)の感想【北海道がロシアから攻められる】(芥川賞候補)

北海道がロシアから攻められる 北海道がロシア軍に攻められます。 自衛隊に所属する主人公は、初めての戦闘で、部下を指揮しています。 迫りくるロシア軍に備え、主人公は、民間人の母子に避難するよう働きかけますが、うまくいきません。 どこにも身よりは…

『推し、燃ゆ』宇佐見りん(著)の感想【既視感のある通過儀礼】(芥川賞候補)

既視感のある通過儀礼 推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。 で始まる物語は、勢いをそのままに、一気に駆け抜けます。 女子高生の主人公は、男女混合アイドルグループに所属する男性が、推しメンです。 推しが炎上し、 謝罪会見 グループ内選挙で推しが最…

『コンジュジ』木崎みつ子(著)の感想【ロックスターの配偶者】(芥川賞候補、すばる文学賞受賞)

ロックスターの配偶者 後半からの熱量が凄い作品です。 すばる文学賞の選評で、川上未映子さんは、 何よりもラストシーン。評価を忘れただ物語を読む者として深く胸打たれた と書いています。 主人公は11歳のとき、イギリスのロックバンドのボーカルに恋をし…

『旅する練習』乗代雄介(著)の感想【忍耐が限界を迎えると】(芥川賞候補)

忍耐が限界を迎えると 小説家の主人公と小学6年生の姪の、練習する旅です。 練習は、 主人公:風景を描くこと 姪:サッカーのドリブルとリフティング で、旅は、千葉の我孫子駅から鹿嶋市まで歩くことです。 姪は、歩きながらドリブルし、主人公が風景描写を…

『母影』尾崎世界観(著)の感想【純粋で繊細な言語感覚】(芥川賞候補)

純粋で繊細な言語感覚 主人公は、小学校低学年と思われる女の子です。 女の子の視点で語られるので、文章は柔らかく、読みやすいです。 部屋を区切るカーテンの手前で、主人公は、カーテンに映る影を見ています。 カーテンの向こう側では、母親はマッサージ…

2020年に読んで良かった本3選【小説】

2020年に読んで良かった本3選 2020年に読んだ小説で、良かった3冊を紹介します。 1『土に贖う』河﨑秋子(著) 土に贖う (集英社文芸単行本) 作者:河崎秋子 発売日: 2019/10/04 メディア: Kindle版 北海道で繁栄し、衰退した産業の歴史が描かれます。 描かれる…

『ふたりでちょうど200%』町屋良平(著)の感想【やさしい言葉でむずかしい内容】

やさしい言葉でむずかしい内容 『ふたりでちょうど200%』はパラレルワールドっぽい短編集です。 収録作品は、 『カタストロフ』 『このパーティ気質がとうとい』 『ホモソーシャル・クラッカーを鳴らせよ』 『死亡のメソッド』 で、『ふたりでちょうど200%』…

『10倍売る人の文章術』の感想【一文目を読んでもらうために】

一文目を読んでもらうために 文章を読むのは苦痛です。 私は小説を読むのは好きですが、基本的に文章を読むのは好きではありません。 例えば、新聞、雑誌、ビジネス書。それらを読むのは、情報を得るためです。 情報を得る手段について、文章を読むより、人…

『「山奥ニート」やってます。』石井あらた(著)の感想【働かないで生きる選択肢】

働かないで生きる選択肢 著者の石井さんは、和歌山の限界集落でニートをしています。 住んでいる場所は、最寄り駅から車で2時間かかる山奥の、廃校になった小学校の校舎です。 そこに、10代から40代の男女15人が住んでいます。 石井さんは、 浪人、留年、中…

『水と礫』藤原無雨(著)の感想【小説の外に広がる世界】(文藝賞受賞)

小説の外に広がる世界 磯﨑憲一郎さんは選評で、 小説とは、作者の思想信条や問題意識を披露する場ではないし、溜め込んだ苦悩を吐露するための媒体でもない、具体性を積み上げることで自らの外側に広がる世界を照らし出し、作品という形で現前させる言語芸…

『首里の馬』高山羽根子(著)の感想【にくじゃが まよう からしの答え】(芥川賞受賞、三島賞候補)

選評を読んで 吉田修一さんは芥川賞の選評で、 高山さんはおそらく「孤独な場所」というものが一体どんな場所なのか、その正体を、手を替え品を替え、執拗に真剣に、暴こうとする作家 と書いています。 確かに、『首里の馬』の登場人物はみな孤独な場所にい…

【芥川賞予想】第164回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年下半期)

第164回芥川賞候補作発表 2020年12月18日、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、2021年1月20日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 宇佐見りん『推し、燃ゆ』(文藝秋季号) 初の候補入りです。 前作『かか…

『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』神田桂一,菊池良(著)の感想【良い意味でジャンク】

良い意味でジャンク カップ焼きそばを作る様子が、文豪たちの作風で、描かれます。 村上春樹風の「はじめに」から始まり、 レイモンド・チャンドラー JK・ローリング 川端康成 相田みつを 西野亮廣 など、幅広いジャンルの方の作風を真似て、「カップ焼きそ…

『短篇小説講義 増補版』筒井康隆(著)の感想【短編小説の書き方】

短編小説の書き方 小説を書くには、「とにかく読み」「とにかく書く」ことが重要と聞いたことがあります。 著者の筒井さんは、 小説は、何を、どのように書いてもよい自由な文学形式である と言います。 だからこそ、本書を読んで、「とにかく読み」「とにか…

『文は一行目から書かなくていい』藤原智美(著)の感想【書けないときの対処法】

書けないときの対処法 著者の藤原さんは、「文は一行目から書かなくていい」と言います。 なぜでしょう。 理由は2つあるようです。まず思考の整理について。 人間の思考というのは断片的です。もちろんそれを文章にして伝えるためには一定の秩序を与えること…

『漫画家入門』浅野いにお(著)の感想【漫画家の厳しい現実】

漫画家の厳しい現実 漫画家になるためのノウハウ本ではありません。 「浅野いにお」という漫画家の日常を記した、エッセイです。 では、なぜタイトルが『漫画家入門』なのでしょうか。 「入門」というと、漫画家になるための第一歩というイメージです。 むし…

『あやうく一生懸命生きるところだった』ハ・ワン(著)の感想【勝ち負けにこだわらない生き方】

勝ち負けにこだわらない生き方 著者のワンさんは、イラストレーターと会社員のダブルワークをしていました。 ですが、40歳になる直前、会社を辞めました。 え、40歳で? って感じです。 ワンさんは、独身で一人暮らし。家は賃貸で、車は持っていないそうです…

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹(著)の感想【トラウマは掘り返さなくていい】

トラウマは掘り返さなくていい 主人公(多崎つくる)は、高校時代の親友4人(男2人、女2人)に、絶縁されます。 大学2年生のときでした。 理由を明かされず、親友たちから連絡を閉ざされます。 その結果、主人公は、死ぬことばかりを考え、死の淵をさまよい…

『破局』遠野遥(著)の感想【選評を読んで】(芥川賞受賞)

選評を読んで 受賞前の芥川賞の予想では、二度読みましたが、受賞はないと予想しました。 そのときの感想はこちらです。 歪な文章は、読んでいて不安になるし、 馬鹿げたような思想の垂れ流しがおかしかったからです。 例えば主人公の、 私はもともと、セッ…

『改良』遠野遥(著)の感想【読ませる文章】(文藝賞受賞)

読ませる文章 一気に最後まで読ませる文章です。 断片的に描かれる語りは乾いていて、 その断片が、のちに結びつくさまに、面白みを感じます。 例えば、小学生のときに通っていたスイミングスクールについて、 私は喘息持ちで、水泳をやらせると心肺機能が鍛…

『絶歌』元少年A(著)の感想②【元少年Aの「人を殺してはいけない理由」】

元少年Aの「人を殺してはいけない理由」 感想①はこちらです。 ――どうして人を殺してはいけないのか? もし元少年Aが、10代の少年に問われたら、以下のように答えると言います。 「どうしていけないのかは、わかりません。でも絶対に、絶対にしないでください…

『オブジェクタム』高山羽根子(著)の感想【中学校別、スカートの長さ比較】

中学校別、スカートの長さ比較 『首里の馬』で高山さんが芥川賞を受賞した際、『オブジェクタム』で受賞すべきだったという人の声を、ちらほら聞きました。 それで、読んでみました。 結論から言うと、 『首里の馬』より良い作品だとは思いませんでした。 『…

『僕の人生には事件が起きない』岩井勇気(著)の感想【日常を楽しめる角度】

日常を楽しめる角度 ハライチ岩井さんの初の著書(エッセイ)です。 日常で起きる些細な出来事を、独自の視点で描きます。 起こる出来事は、本書のタイトルどおり、「事件」とは言えないものばかりです。 例えば、 久々の同窓会で、マウントを取ってくる同級…

『絶歌』元少年A(著)の感想①【心は揺さぶられた】

心は揺さぶられた 1997年、酒鬼薔薇聖斗と名乗る人物は、少女1人と少年1人を殺害しました。 犯人は、14歳の少年でした。その少年(元少年A)の手記です。 書かれているのは、 少年Aの生い立ち 犯行に至るまで(ナメクジ切断、猫殺しなど) 犯行(少年少女の…

『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』乗代雄介(著)の感想【感服しました】

感服しました 乗代さんの何がすごいって、 高校時代、模試でわざと間違った答えを書き、点数を下げていた 大学時代、教授から長文メール(あなたの文章に惚れ込んでいますという内容)をもらった ことです。そんな人がいるのかと、唖然としました。 1につい…

【野間文芸新人賞予想】第42回候補作発表(2020年)

野間文芸新人賞候補作発表 2020年10月1日、野間文芸新人賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、2020年11月2日(月)です。 以下、候補作をまとめます。 『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李龍徳 第38回の候補『報われない人間は永遠に報われな…

『星の子』今村夏子(著)の感想【いじめられない理由】(野間文芸新人賞受賞、芥川賞候補)

いじめられない理由 主人公は、中学3年生の女子です。 両親は、ある宗教を信仰しています。 きっかけは、主人公が幼い頃にできた湿疹でした。 両親がどんな手を尽くしても、湿疹は良くなりません。 損害保険会社で働く父親が、何気なく同僚に口にしたところ…

『猫を棄てる』村上春樹(著)の感想②【父親の期待に背くこと】

父親の期待に背くこと 感想①はこちらです。 村上さんの父親は、戦場で生き残りました。 戦争から戻った父親は、京都帝国大学で文学を学びます。 村上さんの母は、 あなたのお父さんは頭の良い人やから と、よく言ったそうです。 父親に比べ、村上さんは、 学…

『猫を棄てる』村上春樹(著)の感想①【父親との確執】

父親との確執 村上さんが、父親について語ります。 思い出すのは、日常のありふれた光景だと言います。 父親とのエピソードに、「猫を棄てたこと」があります。 村上さんが小学校低学年の頃、父親と一緒に海岸へ行き、猫を棄てます。 「かわいそうだけど、ま…

第33回三島由紀夫賞受賞作発表(2020年)の感想

第33回三島由紀夫賞受賞作 2020年9月17日(木)に発表されました。 『かか』宇佐見りん(著)です。最年少での受賞だそうです。 かか 作者:宇佐見りん 発売日: 2019/11/14 メディア: 単行本 感想はこちらです。 正直、受賞するとは思いませんでした。 予想で…