いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『太陽の側の島』高山羽根子(著)の感想【戦時中の不思議な体験】(林芙美子文学賞受賞)

戦時中の不思議な体験 戦地に行った夫 日本で待つ妻 の手紙のやりとりがメインです。 手紙では、お互いの不思議な体験が交わされます。 夫:戦地での体験 妻子:内地での体験 夫は、南の島らしき場所で、現地の土地を耕しています。 日本との違いに、夫は違…

『7つの習慣 人格主義の回復』の感想【自分の死から人生を考える】

自分の死から人生を考える 目標を立てるとき、 ○○大学合格 ○○会社内定 と、具体的な目標を設定し、達成方法を考える人が多いと思います。 私もその一人です。 ですが、間違っていました。 もっと大きなスケールで考える必要がありました。 自分の死から考え…

『諦める力』為末大(著)の感想【勝つために諦める】

勝つために諦める 高校生の為末さんは、 100m 200m 400m の陸上選手でした。すべて全国トップクラスです。 ですが、インターハイで監督が100mのエントリーを取り消したことをきっかけに、 400m 400mハードル に、競技を絞ります。 なぜなら、 400メートルハ…

『渋谷ではたらく社長の告白』藤田晋(著)の感想【21世紀を代表する会社をつくる】

21世紀を代表する会社をつくる 藤田さんは、高校3年生で起業家を志しました。 ですが、大学ではバーでのバイトに明け暮れます。 バーの先輩からは、大学に行ってないなら社員にならないかと誘われます。 誘いを断ると、先輩から「将来の夢は何か」と聞かれま…

『自分を愛する力』乙武洋匡(著)の感想【自己肯定感を育む方法】

自己肯定感を育む方法 乙武さんは、生まれつき手足がありません。 手足のない体で生まれたことを、一度も恨んでいないと言います。 なぜでしょう。 自己肯定感があったからだと乙武さんは言います。 自己肯定感とは、「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえ…

『こんな僕でも社長になれた』家入一真(著)の感想【逃げた先で次の策を考える】

逃げた先で次の策を考える やり手の実業家のイメージがある家入さん。 かつては引きこもりの学生で、高校を中退していました。 高校中退後に大検を取り、住み込みで新聞配達のアルバイトをしながら芸大を目指します。 ですが、センター試験の申込みを忘れ、…

『土に贖う』河﨑秋子(著)の感想【三島賞候補】(繁栄し衰退した産業の歴史)

繁栄し衰退した産業の歴史 北海道を舞台に、繁栄・衰退した産業の歴史が描かれます。 描かれる産業は、 養蚕 ミンクの養殖 ハッカ油の生産 馬の装蹄 レンガ工場 などです。 それぞれが、一つの短編として構成された短編集です。 短編ごとに関連性はありませ…

『デッドライン』千葉雅也(著)の感想【3回読んでもわからなかった】(野間文芸新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

3回読んでもわからなかった 芥川賞、野間文芸新人賞の候補のときに2回 今回三島賞候補で1回 計3回読みました。 前回読んだときの感想はこちらです。 わからないことが多い小説です。 例えば、主人公が「○○くん」と呼ばれていること。固有名詞が与えられてい…

『pray human』崔実(著)の感想【話を聞いてくれた人のことは忘れない】(三島賞候補)

話を聞いてくれた人のことは忘れない 27歳の主人公は、精神病院で同室だった「君」に、語ります。 主人公が17歳、「君」が22歳のときに、二人は精神病院で出会いました。 主人公が「君」に語る内容は、 現在の主人公の話 同じ精神病院に入院していた「安城さ…

『湯治』高橋弘希(著)の感想【体の傷と心の傷を癒す一人旅】

体の傷と心の傷を癒す一人旅 総合商社に勤める34歳の主人公は、足柄の民宿へ、湯治に行きます。 少年時代に、鉄棒から落ちたときの膝の古傷を癒すためです。 妻は会社を休めなかったので、主人公は一人で旅に出ます。 湯治に行くことにしたのは、同僚に勧め…

『うどん キツネつきの』高山羽根子(著)の感想【タイトルの意味】(創元SF短編賞佳作)

タイトルの意味 タイトルに、ぞわぞわします。 「うどん キツネつきの」 倒置法です。 「キツネつきのうどん」ではありません。 なぜ、倒置法なのか 「キツネ」はうどんに乗せる揚げなのか さらに副題が付けられています。 「Unknown Dog Of Nobody」 「誰に…

第163回芥川賞受賞作発表、会見、選評(2020年上半期)の感想

第163回芥川賞受賞作発表 2020年7月15日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 高山羽根子『首里の馬』 遠野遥『破局』 首里の馬 作者:高山羽根子 発売日: 2020/07/27 メディア: Kindle版 破局 作者:遠野遥 発売日: 2020/07/04 メディ…

【第163回芥川賞予想】「大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想編)」の感想

第163回芥川賞予想 7月15日(水)に第163回芥川賞、直木賞が決まります。 「文学賞メッタ斬り!スペシャル」は、受賞作の決定前に、どの作品が受賞するかを予想するラジオ番組です。 予想する方 大森望(書評家、SF翻訳家) 豊崎由美(書評家) 芥川賞候補作…

『逃亡者』中村文則(著)の感想【悪魔の楽器トランペット】

悪魔の楽器トランペット フリージャーナリストの主人公は、熱狂と称されるトランペットを隠し持っていました。 そのトランペットは、第二次世界大戦中、劣勢だった日本軍を熱狂させ、米軍に奇襲を食らわせたという逸話がありました。 魔力的な音色を奏でるト…

『猿を焼く』東山彰良(著)の感想【選択肢を増やす重要性】

選択肢を増やす重要性 「猿を焼く」、強烈なタイトルです。 俊満はその猿を角材で殴り殺した。それでおしまいのはずだった。でもそれではぼくの気がすまなかった。 ぼく(主人公)の気がすまなかったから、猿を焼きました。 猿を焼いた動画を、俊満がインタ…

『リリアン』岸政彦(著)の感想【虫と呼ばれた女の子】

虫と呼ばれた女の子 30代後半の主人公は、音楽で生計を立てています。 夜の店で歌の伴奏 音楽教室の講師 で、月20万円くらい稼ぎます。 主人公が本当にやりたいのは、ジャズクラブでの演奏ですが、ギャラは1回1000円ほどなので、伴奏と講師が主な収入です。 …

『木になった亜沙』今村夏子(著)の感想【純粋に欲を追求した結果】

純粋に欲を追求した結果 主人公の亜沙は、自分が差し出した物を食べてもらいたいのですが、食べてもらえません。 例えば、 ひまわりの種:園児に、本当に食べられるものかと訝しがられる クッキー:小学生に、クッキー嫌いだからと突き返される というように…

『首里の馬』高山羽根子(著)の感想【わからないことは怖い】(芥川賞受賞、三島賞候補)

わからないことは怖い 主人公は、中学生のときから10年以上、沖縄の資料館で資料整理をしています。 公的な資料館ではなく、補助金などの収入もありません。 知人が人知れず、情報を蓄積した場所です。 主人公は、資料の整理を無償で行っているため、他に仕…

『アウア・エイジ(Our Age)』岡本学(著)の感想【塔の古い写真】(芥川賞候補)

塔の古い写真 40歳を過ぎた主人公は、離婚し、妻子と会わず数年経っていました。 ただひとり生存を続ける意義を見出せず、毎日を惰性に生きているようなていたらくだった。 そんな主人公のもとに、映画館から封書が届きます。 映写機の葬式をあげるから、ぜ…

『赤い砂を蹴る』石原燃(著)の感想【亡き母の代わりにブラジルへ】(芥川賞候補)

亡き母の代わりにブラジルへ 40代半ばの主人公は、亡き母の代わりに、母の友人とブラジルへ行きます。 母は、友人とブラジルに行くのを楽しみにしていました。 ですが、母に癌が見つかり、旅行どころではなくなりました。 母の友人は、ブラジルで育った日系…

『アキちゃん』三木三奈(著)の感想【大事なことを隠すズルさ】(文學界新人賞受賞、芥川賞候補)

大事なことを隠すズルさ 「アキちゃん」は、主人公が小学5年生のときの同級生です。 大人になった主人公が、過去を回想する形で、物語は進みます。 わたしはアキちゃんが嫌いだった。 (中略) これまでの人生において、これほど真剣に誰かを憎んだことはな…

『破局』遠野遥(著)の感想【不穏な語り手】(芥川賞受賞)

不穏な語り手 「信頼できない語り手」という言葉があります。 主人公の語りが信頼できなく(嘘のようで)、読み手を惑わすことです。 『破局』の語りは、信頼できないというより、読んでいると不穏を感じます。 主人公は、公務員試験を控えている大学4年生で…

『沈黙のWebライティング』の感想【感動する文章より情報】

感動する文章より情報 記事を書いても、検索で上位に表示されず、全然読んでもらえない……。 そんな人におすすめです。私もその一人です。 本書には、 検索上位に表示される記事を書く方法 最後まで読んでもらえる文章を書く方法 読んだ人を行動に移す文章を…

『坂下あたるとしじょうの宇宙』町屋良平(著)の感想【文学が好きな人に】

文学が好きな人に タイトルの「坂下あたる」は、主人公の憧れの存在です。 小説投稿サイトに投稿する高校生で、新人賞の最終選考に残ったこともあります。 あたるには才能がありますが、主人公には才能がなく、劣等感を抱きます。 それでも主人公は、あたる…

【芥川賞予想】第163回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年上半期)

第163回芥川賞候補作発表 2020年6月16日、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、7月15日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 『赤い砂を蹴る』石原燃 初の候補入りです。 石原さんは、劇作家で、太宰治のお…

『ヤー・チャイカ』池澤夏樹(著)の感想【大人になったら英雄はいらない】

大人になったら英雄はいらない 「ヤー・チャイカ」はロシア語で、意味は「わたしはカモメ」です。 世界で最初の女性宇宙飛行士、テレシコワのコールサインが、「わたしはカモメ」だったそうです。 ちなみに、人類で最初の宇宙飛行士ガガーリンのコールサイン…

『スティル・ライフ』池澤夏樹(著)の感想【世界はぼくを傷つけることができない】(芥川賞受賞)

世界はぼくを傷つけることができない 主人公は、定職に就かず、アルバイトで生計を立てています。 何をすればいいのだろう。仮に、とりあえず、今のところは、しばらくの間は、アルバイトでもして様子を見る。 淡々とバイトを続けていると、かつてのバイト仲…

『指の骨』高橋弘希(著)の感想【戦争の敗残者】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

戦争の敗残者 太平洋戦争が舞台ですが、敵軍との戦闘がメインではありません。 赤道より南の半島で負傷した主人公が、野戦病院に運び込まれてからがメインです。 山裾に建てられた野戦病院には、 片足のない兵士 マラリアで衰弱した青黒い顔の兵士 顔中に包…

本を読んだときに気を付けている3つのこと

1.もっと早く読めば良かった 本を読んだときに、最も気を付けている感想は、 もっと早く読めば良かった 学生時代に読みたかった です。 そのような感想を持ってしまうと、 今読めた自分を否定してしまいます。 さらに、読んだ本から学ぶ意識が薄れてしまい…

『午後の最後の芝生』村上春樹(著)の感想【初夏に読みたい短編】

初夏に読みたい短編 夏の匂いや暑い日ざしを感じるので、初夏の時期におすすめです。 ストーリーはシンプルで、芝刈りのアルバイトをする大学生の、バイト最終日の話です。 バイトを辞める理由は、遠距離に住む彼女に手紙で別れを告げられ、金をためる必要が…