いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

三島賞

『首里の馬』高山羽根子(著)の感想【わからないことは怖い】(芥川賞候補、三島賞候補)

わからないことは怖い 主人公は、中学生のときから10年以上、沖縄の資料館で資料整理をしています。 公的な資料館ではなく、補助金などの収入もありません。 知人が人知れず、情報を蓄積した場所です。 主人公は、資料の整理を無償で行っているため、他に仕…

『指の骨』高橋弘希(著)の感想【戦争の敗残者】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

戦争の敗残者 太平洋戦争が舞台ですが、敵軍との戦闘がメインではありません。 赤道より南の半島で負傷した主人公が、野戦病院に運び込まれてからがメインです。 山裾に建てられた野戦病院には、 片足のない兵士 マラリアで衰弱した青黒い顔の兵士 顔中に包…

『悪意の手記』中村文則(著)の感想【人を殺した後の人生】(三島賞候補)

人を殺した後の人生 15歳の主人公は、死に至る難病におかされていました。 死の恐怖から免れるため、主人公は憎悪を抱きます。 自分も含めた全ての人間をくだらないものであるとし、そのくだらないものが生きている人生をくだらないと考えた。人間を見る度に…

【三島賞予想】第33回三島由紀夫賞候補作発表(2020年)

三島賞候補作発表 2020年4月21日、三島由紀夫賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、今秋(予定)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめます。 今回は、全員初の候補入りです。 『土に贖う』河﨑秋子 Wikipediaによれば、河﨑さんは「羊飼い」と「…

『ビニール傘』岸政彦(著)の感想【大阪の街と若者のやるせなさ】(芥川賞候補、三島賞候補)

大阪の街と若者のやるせなさ 繁華街から少し離れた大阪の街が舞台です。 俺たちが暮らしているのはコンビニとドンキとパチンコと一皿二貫で九十円の格安の回転寿司でできた世界で、そういうところで俺たちは百円二百円の金をちびちびと使う。(p.45) そこで…

『かか』宇佐見りん(著)の感想【かか弁という新しい方言】(文藝賞受賞、三島賞候補)

かか弁という新しい方言 「かか」とは、母親です。 「かか弁」は、母親の使う独特な言葉です。 東北弁ではなく、博多弁でも関西弁でもありません。 最初は読みにくいですが、次第にこの語りに慣れます。 かかは、ととの浮気したときんことをなんども繰り返し…

『図書室』岸政彦(著)の感想【忘れていた思い出が蘇る】(三島賞候補)

忘れていた思い出が蘇る 読んでいて、自分自身の思い出が蘇りました。 今まで思い出したことがない、小さな出来事です。 どこか遠くなつかしい風景が、記憶を呼び覚ましたのかもしれません。 主人公は一人暮らしの50歳女性で、小学生時代を回想します。 当時…

『いかれころ』三国美千子(著)の感想【選考委員が絶賛】(新潮新人賞受賞、三島賞受賞)

選考委員が絶賛 新潮新人賞、三島由紀夫賞のダブル受賞です。 新潮新人賞を受賞したときに、一度手に取りましたが、冒頭で読むのをやめました。 理由は、 4歳の少女視点なのに、達観した言葉づかい 4歳の少女視点なのに、父母を名前で表記(「父は」ではなく…

『壺中に天あり獣あり』金子薫(著)の感想【閉じ込められた世界で没頭する】(三島賞候補)

閉じ込められた世界 主人公は、広大なホテルの中をさまよいます。 どんなに歩いても、 廊下が一直線に続き、 部屋のドアがずらっと並び、 螺旋階段が上下に伸びています。 ホテルの外へは出られません。 部屋のドアを開けると、ベッドがあったり、バーや資料…

『デッドライン』千葉雅也(著)の感想【締め切りに追われるゲイの大学院生】(野間文芸新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

締め切りに追われるゲイの大学院生 デッドライン=修士論文の締め切りです。 主人公は、哲学を研究する大学院生です。 とりあえず惰性でモースの研究を続けていた。それでいいのかどうかはまだよく考えていなかった。(p.10) モースの研究をするのは、流さ…

『青痣』宮下遼(著)の感想【母に一人残された少女】(野間文芸新人賞候補、三島賞候補)

母に一人残された少女 二人暮らしの家から、母が消えます。 母の最後の言葉です。 「ジターヌを切らしてるみたいなの」 (中略) 「だから、ちょっと買いに行ってくるわ」(p.37) ジターヌ(煙草)を買いに、少女から離れる母。 少女は、子を預かっている貸…

『無限の玄』古谷田奈月(著)の感想【非現実を現実的に思わせる濃密な文章】(三島賞受賞、野間文芸新人賞候補)

野間文芸新人賞がきっかけ 私は芥川賞受賞作は読みますが、非公募型の純文学系新人賞の残り二つ、三島賞と野間文芸新人賞の作品はあまり読んできませんでした。 ですが、2018年の野間文芸新人賞受賞作が面白かったので、手を伸ばすことにしました。 受賞…