いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『スカイ・クロラ』森博嗣(著)の感想【著者最高傑作のとおり】

著者最高傑作のとおり

著者最高傑作らしい本作。

森さんが自分の作品で最高傑作と言ったようです。

そのとおりだと思いました。

読めて良かったです。

本作を読めたのは、森作品を読む順番が関係してます。

  1. 『喜嶋先生の静かな世界』
  2. 『すべてがFになる』
  3. 『スカイ・クロラ』

この順で読みました。

もし、『すべてがFになる』を最初に読んでたら、他の森作品は読まなかったかもしれません。

『すべてがFになる』がつまらないわけではありません。

『すべてがFになる』がミステリ作品なので、森さんをミステリ作家だと思って、ミステリは今はいいかなと、敬遠した可能性があるからです。

『喜嶋先生の静かな世界』と『スカイ・クロラ』は、ミステリ作品でないことを知らずに。

今はいいかなという考えは、ある意味危険です。

いつか読もうと思っても、そのいつかが来ることは、あまりないからです。可能性はかなり低いです。

本作をあらすじから抜粋すると、

永遠の生命を持つ子供たち「キルドレ」が地上で暮らす大人のために、戦争を請負う社会

重要なことが、あらすじにあっさり書かれてます。

  • 永遠の生命を持つ子供たち「キルドレ」
  • 子供は複数いる
  • 子供たちは大人のために戦争を請け負ってる
  • 戦争が社会として根付いてる

特に、永遠の生命については、作品の根幹です。

子供たち当人は、自分たちが永遠の生命だと、はっきりとはわかっていないようです。

飛行機の感触はしっかり憶えているが、任務を憶えていない

子供の頃の記憶も、定かではありません。

永遠の生命に気づいた同僚は、主人公に言います。

もう一度、再生して、新しい記憶を植えつけて、貴方が作られたのよ

主人公も、漠然とは気づいてたかもしれません。

  • 死んだ子供は、別の子供として生まれ変わる
  • 生まれ変わった子供は、戦争に従事するため、飛行機に乗る
  • 飛行機の操縦ノウハウは引き継がれるので、子供に飛行機の感触はある

とはいえ、子供は大人のために戦ってるわけではないでしょう。

戦ってるのが、結果的に大人のためにはなってるだけで。

どう役立ってるのか。

戦いを間近にすることで、大人自身が平和を実感できます。

本当に死んでいく人がいて、それが報道されて、その悲惨さを見せつけないと、平和を維持していけない

平和を維持するため、戦いを維持します。

戦いを維持するため、子供は生まれ変わって飛行機を操縦します。

同僚は言います。

自然に生まれた人間は戦っちゃいけないけれど、戦うために人工的に作られた人間なら、それが許されるという理屈?

難しい問いです。平和を維持するため、人工的に作られた子供に戦いを強いることが、良いのか悪いのか。

私はわかりませんでした。

作られた子供の選択肢は、

  • 神に祈るか
  • 殺し合いをするか

のどちらかです。

僕は戦うことを選び、飛ぶことを選んだ何故なら、神に祈ったところで、きっといつかは精神が崩壊してしまう、祈ることで、生と死の秘密の関係に近づけるとは思えない

神に祈る選択をとった子供の生きざまも、読みたいと思いました。

戦うことを選んだ主人公は、上司を銃で撃ちます。

上司は死にたがってました。

上司が自殺するくらいなら、代わりに主人公が射殺するという論理は正しいのか。

目の前の子供を殺しても、別の子供として再生されるだけです。

それなら、死んだ子供を再生させてる本部を叩くべきだと思いました。

目の前の子供を殺しても、何も変わりません。

しかし主人公は、変えたいと思わなかった可能性があります。

上司が死にたいと言ってる目の前の苦痛からは逃れたいけど、根本から変える気力はないとしたら。

その場限りの対処だけを考えたら、良い選択です。先のことは先に考えればいい。

それなら私も同じだと思いました。

目の前のことだけを対処して、先のことは先々考えればいい。先延ばしです。

読む順番は重要だと再認識しました。

おかげで『ヴォイド・シェイパ』も読もうと思えます。

『ヴォイド・シェイパ』はAmazonのレビューで最高傑作と書いてる人がいました。

『スカイ・クロラ』より面白いのか、楽しみです。