いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2024-01-01から1年間の記事一覧

小川哲+町屋良平 対談「これから作家を目指すひとへ」の感想(『新潮』2024年11月号)

シーンを象徴にする 小川哲さんと町屋良平さんの対談です。 小川哲さんはエンタメの新人賞(ハヤカワSFコンテスト)出身で、直木賞受賞 町屋良平さんは純文学の新人賞(文藝賞)出身で、芥川賞受賞 小川さんのエレベーターに乗ったときの思考の跳躍に、驚き…

『ハイパーたいくつ』松田いりの(著)の感想【冒頭乗り切れば面白い】(文藝賞受賞)

冒頭乗り切れば面白い 冒頭を読んだとき、挫折しそうでした。 誰が何を語ってる何の話なのか、全くつかめなかったからです。 途中で、しんどさから解放されます。 主人公が経理の仕事をしており、相手先の会社に、本来の1000倍の金額を振り込んでしまったこ…

『光のそこで白くねむる』待川匙(著)の感想【幼馴染との脳内対話】(文藝賞受賞)

幼馴染との脳内対話 主人公は、お土産屋でバイトをしてます。 店が無期限休業することになり、主人公は仕事がなくなります。 出勤最終日に主人公は、店から7万円をもらいます。 時間と臨時収入を得た主人公は、故郷へ行くことにします。幼馴染の墓参りをする…

『ダンスはへんなほうがいい』新崎瞳(著)の感想【外れ値の友だち】(すばる文学賞佳作)

外れ値の友だち 主人公は27歳の男性です。 うつ状態を理由に、勤め先の広告代理店を休職します。 主人公が自宅で配達を頼むと、幼稚園の同級生という男性が、配達員として来ました。 主人公は、その同級生を覚えてませんでした。 その後、同級生は再びやって…

『泡の子』樋口六華(著)の感想【トー横キッズの末路】(すばる文学賞受賞)

トー横キッズの末路 読み方は、泡(あぶく)の子(こ)です。 主人公は、トー横(新宿東宝ビルの横)を生活の拠点としてます。 主人公が17歳のとき、トー横で同い年の友達ができました。 知り合いに、トー横を見下ろせる部屋に住んでる青年がいます。 青年は…

『さびしさは一個の廃墟』仁科斂(著)の感想【言葉は廃墟化する】(新潮新人賞受賞)

言葉は廃墟化する 同時受賞の『ダンス』とは異なり、新潮新人賞っぽい作品だと思いました。 文章が濃密で、簡単には読ませてくれません。 新人賞受賞作でなければ、途中で投げ出してたかもしれません。 私は二度読みました。 金原ひとみさんが選評で、 初読…

『ダンス』竹中優子(著)の感想【馴染めてない人たち】(新潮新人賞受賞)

馴染めてない人たち まず一文目が良いです。 今日こそ三人まとめて往復ビンタをしてやろうと堅く心に決めて会社に行った。 「三人まとめて」、「往復」ビンタに、私は引きつけられました。 三人まとめてってどういうことだろう ただのビンタではなく往復ビン…

小説「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の感想【感動して泣くとは思わなかった】

感動して泣くとは思わなかった ハリーポッターを読んで(聴いて)、泣くとは思いませんでした。 読んで(聴いて)と書いたのは、Amazonオーディブルを使ったからです。 Amazon.co.jp: Audibleオーディオブック 厚い本を読む時間や気力はありませんでしたが、…

『キャッチコピーのつくり方』川上徹也(著)の感想【言葉で心を動かす方法】

言葉で心を動かす方法 著者の川上さんは、新卒後、広告会社にコピーライターとして採用されたわけではありませんでした。 20代後半まで、営業職をしてたそうです。 その後、クリエイティブ局でCMプランナーをしましたが、会社勤めになじめず、退社してフリー…

『パーティーが終わって、中年が始まる』pha(著)の感想【中年クライシスなのか】

中年クライシスなのか 「パーティー」が終わって、「中年」が始まる。 「パーティー」とは、シェアハウスを運営して解散するまでのことで、 「中年」とは、シェアハウスを解散して一人暮らしを始めたことでしょう。 「中年」は、年齢よりも精神的なものだと…

『スマホ時代の哲学』谷川嘉浩(著)の感想【他人の頭を借りて考える】

他人の頭を借りて考える 難しかったです。 何が難しかったというと、私は結局どうしたらいいのか、わからなかったからです。 私は本(特にビジネス書)を読むとき、自然と「答え」を探していると、気づきました。 本に書かれた「答え」を読む 納得して「行動…

『次の時代を先に生きる』髙坂勝(著)の感想【ナリワイの見つけ方】

ナリワイの見つけ方 『減速して自由に生きる』が良かったので読みました。 感想はこちらです。 「次の時代を先に生きる」とは、どういうことでしょうか。 経済成長主義から卒業してこそ、やっと新しい生き方が始まり、次の時代が始まる。 「経済成長主義から…

『Dark Horse 好きなことだけで生きる人が成功する時代』の感想【個性に合った充足感の追及】

個性に合った充足感の追及 『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』で参考にされてたので読みました。 感想はこちらです。 ダークホースとは、 予想を覆して勝利する人々、今まで見向きもされなかったのに突然快進撃をはじめ勝者となる人のこと 「予想を覆…

『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』谷川嘉浩(著)の感想【偏愛を見つける】

偏愛を見つける タイトルに惹かれました。 「人生のレールを外れる衝動のみつけかた」 「人生のレールを外れる衝動」とは、 誰かに強制されたわけでもないのに、自分を何かに夢中にさせる衝動のこと と、著者の谷川さんは言います。 漫画『チ。』を例に挙げ…

『自由人の脳みそ』高橋歩(著)の感想【人生の残り時間は限られている】

人生の残り時間は限られている 高橋さんは自由人です。 大学を中退し、バーを開店 店を譲り、無職 自伝を出すため、出版社設立 出版社を譲り、無職 26歳で結婚、世界一周 帰国後、沖縄に移住(出身は東京) ハワイに移住 そんな自由人の思考が書かれてます。…

『きみは赤ちゃん』川上未映子(著)の感想【妊娠、出産、産後の実体験】

妊娠、出産、産後の実体験 川上さんの、妊娠から産後1年間までの実体験です。 あけすけに語ってる感じが伝わり、好感が持てます。 例えば、妊娠中の性交について書かれてます。 川上さんの産院で、妊娠中の性交は「ぜったいにダメ派」だったようで、 その瞬…

『働く人の夢 33人のしごと、夢、きっかけ』の感想【楽しみや生きがいのある仕事】

楽しみや生きがいのある仕事 『なぜ僕らは働くのか』で紹介されてたので、読みました。 感想はこちらです。 33人の働く人の、夢やきっかけが書かれてます。 私はそのどこかに、夢を探してました。 33人の夢があれば、感銘を受けるものがあると思いました。 …

『人生、何を成したかよりどう生きるか』内村鑑三、佐藤優(著)の感想【「後世への最大遺物」現代語訳】

「後世への最大遺物」現代語訳 本書は、 内村鑑三の講義「後世への最大遺物」の現代語訳 佐藤優の解説(「後世への最大遺物」を今読む人へ) の二部構成です。 以前、私は岩波文庫版の「後世への最大遺物」を読みました。 感想はこちらです。 こちらを読んで…

『おとなの進路教室。』山田ズーニー(著)の感想②【心が向かないものには動かない】

心が向かないものには動かない 感想①はこちらです。 著者の山田さんは、次のあてもなく、38歳で会社を辞めました。 どうやって社会にエントリーしていいかわからず、収入もなく、4年間は赤字の、先の見えない生活をしていた。 あてもなく退職 独立後4年間赤…

『おとなの進路教室。』山田ズーニー(著)の感想①【やりたいことの見つけ方】

やりたいことの見つけ方 約5年半ぶりに再読しました。 前回の感想はこちらです。 感銘を受けた部分は、前回読んだときと、さほど変わりませんでした。 それが良いことなのか、悪いことなのか。 今の私が、5年半前の自分と、そんなに変わってないということで…

『後世への最大遺物』内村鑑三(著)の感想【勇ましい高尚なる生涯】

勇ましい高尚なる生涯 本書は、『半農半Xという生き方』の著者、塩見直紀さんに影響を与えた本だそうです。 感想はこちらです。 「後世への最大遺物」というタイトルに、興味を惹かれました。 「最大遺物」とは何だろうか。 著者の内村鑑三は、後世へ遺すべ…

『半農半Xという生き方』塩見直紀(著)の感想【天与の才の見つけ方】

天与の才の見つけ方 本書は、髙坂勝さんの『減速して自由に生きる』で紹介されてました。 半農半Xのコンセプトに共感したので読みました。 一つは人生において農を重視し、持続可能な農のある小さな暮らしを大切にする方向だ。もう一つは与えられた天与の才…

『減速して自由に生きる』髙坂勝(著)の感想【会社員を辞めて生きる方法】

会社員を辞めて生きる方法 帯文が、村上龍さんです。 減速すれば、景色が鮮明に見える。発見もある。 どうして小説家の村上さんが、本書の帯文を書いてるんだろうと思ってました。 すると、作中で村上さんの言葉が引用されてました。 村上龍さんがかつて「今…

『手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~』喜多川泰(著)の感想【自己啓発的小説】

自己啓発的小説 本書は、『なぜ僕らは働くのか』という本で紹介されてました。 感想はこちらです。 本書は、おすすめキャリア本として挙げられてました。 「喜多川泰」という作家さんの名前は、Amazonでよく見ました。 作品を読むのは初めてでした。 自己啓…

『「どうせ無理」と思っている君へ』植松努(著)の感想【小さな成功と小さい自信】

小さな成功と小さい自信 本書は、『なぜ僕らは働くのか』という本で紹介されてました。 感想はこちらです。 その本で、本書がおすすめキャリア本として挙げられてたので、読みました。 『「どうせ無理」と思っている君へ』というタイトルに、ギクッとしまし…

『作家で億は稼げません』吉田親司(著)の感想【凡人が小説家として生き残る方法】

凡人が小説家として生き残る方法 似たようなタイトルで、『小説家になって億を稼ごう』という本があります。 感想はこちらです。 タイトルからして真逆です。 本書でも言及されてます。 ただ、『小説家になって億を稼ごう』を批判する内容ではありません。 …

『大解剖!文學界新人賞』の感想【純文学新人賞の獲り方】

純文学新人賞の獲り方 文學界編集部が出した、文學界新人賞の電子書籍です。 新人賞を実施してる編集部が出してるので、貴重な情報です。 私は過去に文學界新人賞に送ったことがありますが、選考を通過したことはありません。 最近は送っていませんが、有益…

『たった独りのための小説教室』花村萬月(著)の感想【小説家として生きる方法】

小説家として生きる方法 どうやって小説家として生きるかが、著者の経験をもとに、書かれてます。 この方の言葉は信用できると思いました。 例えば、 私は小説執筆を文学追及ではなく、独りで出来る職業として、つまり生活の糧=金銭を得る途として選択し、…

『遠くから来ました』白鳥一(著)の感想【遭難者が潜む喫茶店】(群像新人賞優秀作)

遭難者が潜む喫茶店 作品の舞台は、宮城県の田舎にある喫茶店です。 その喫茶店は昔、自転車屋でした。 喫茶店の店主の父が、自転車屋を営んでました。 父が亡くなり、娘が店主として、喫茶店を始めました。 その喫茶店には、遭難者と呼ばれる存在がいます。…

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』豊永浩平(著)の感想【タイトルの意味】(群像新人賞受賞、野間文芸新人賞受賞)

タイトルの意味 タイトルの読み方は、「ちちぬはいや、うんまぬはい」です。 沖縄の言葉で、意味を作中から引用すると、 馬さながらに歳月は駆け抜けてしまいますから、時をだいじにすべし、けれど苦悩は結局なくなるものとして抛ってしまいなさいな! 別の…