新人賞
他人の家の風呂を借りる老夫婦 感想①はこちらです。 他人の家の風呂を借りる旅をしてる老夫婦の話が、ちょっとしたエピソードで出てきます。 本書を読んだ後にも、どこか頭に残ってました。 不動産屋で働く青年の、子どもの頃に起きた話です。 小学生の彼が…
声だけ残される存在 男子校の教室は、静まり返ってます、 二年E組の人気生徒だった山田が、交通事故で亡くなったからです。 担任が、気分転換に席替えを提案したとき、山田の声がどこからか聞こえます。 いくら男子校の席替えだからって盛り下がりすぎだろ …
冒頭乗り切れば面白い 冒頭を読んだとき、挫折しそうでした。 誰が何を語ってる何の話なのか、全くつかめなかったからです。 途中で、しんどさから解放されます。 主人公が経理の仕事をしており、相手先の会社に、本来の1000倍の金額を振り込んでしまったこ…
幼馴染との脳内対話 主人公は、お土産屋でバイトをしてます。 店が無期限休業することになり、主人公は仕事がなくなります。 出勤最終日に主人公は、店から7万円をもらいます。 時間と臨時収入を得た主人公は、故郷へ行くことにします。幼馴染の墓参りをする…
外れ値の友だち 主人公は27歳の男性です。 うつ状態を理由に、勤め先の広告代理店を休職します。 主人公が自宅で配達を頼むと、幼稚園の同級生という男性が、配達員として来ました。 主人公は、その同級生を覚えてませんでした。 その後、同級生は再びやって…
トー横キッズの末路 読み方は、泡(あぶく)の子(こ)です。 主人公は、トー横(新宿東宝ビルの横)を生活の拠点としてます。 主人公が17歳のとき、トー横で同い年の友達ができました。 知り合いに、トー横を見下ろせる部屋に住んでる青年がいます。 青年は…
言葉は廃墟化する 同時受賞の『ダンス』とは異なり、新潮新人賞っぽい作品だと思いました。 文章が濃密で、簡単には読ませてくれません。 新人賞受賞作でなければ、途中で投げ出してたかもしれません。 私は二度読みました。 金原ひとみさんが選評で、 初読…
馴染めてない人たち まず一文目が良いです。 今日こそ三人まとめて往復ビンタをしてやろうと堅く心に決めて会社に行った。 「三人まとめて」、「往復」ビンタに、私は引きつけられました。 三人まとめてってどういうことだろう ただのビンタではなく往復ビン…
遭難者が潜む喫茶店 作品の舞台は、宮城県の田舎にある喫茶店です。 その喫茶店は昔、自転車屋でした。 喫茶店の店主の父が、自転車屋を営んでました。 父が亡くなり、娘が店主として、喫茶店を始めました。 その喫茶店には、遭難者と呼ばれる存在がいます。…
タイトルの意味 タイトルの読み方は、「ちちぬはいや、うんまぬはい」です。 沖縄の言葉で、意味を作中から引用すると、 馬さながらに歳月は駆け抜けてしまいますから、時をだいじにすべし、けれど苦悩は結局なくなるものとして抛ってしまいなさいな! 別の…
アライ女性に邪魔される 選評を読んで、「アライ」という言葉を知りました。 アライとは、 LGBT(中略)の当事者ではない人が、LGBTに代表される性的マイノリティを理解し支援するという考え方 (「人事労務用語辞典」から抜粋) 主人公は、社会人二年目のゲ…
受精卵が堕胎に向かう旅 私は無人島。強烈なタイトルです。 私は人間なのに、無人島とはどういう意味か。 考えながら読みました。 主人公は、都内のタワーマンションに住んでる女性です。 占い師をしています。 夫はおりますが、子どもはいません。 主人公に…
選評を読んで 「おわりのそこみえ」は、「終わりの底見え」と書けます。 終わりの底が見えたとき、希望なのか、絶望なのか。 タイトルがひらがなの理由は、わかりません。 ただ、ひらがなだと、柔らかい印象を受けます。 漢字だったら、怖い印象を受けます。…
選評を読んで タイトルでクイズの話かと思いましたが、全然違いました。 主人公は27歳。名前は怜王鳴門(れおなるど)。 生まれてからこの部屋を出たこともない 主人公は、パソコンに表示された文章を読みます。 文章は、主人公について書かれた内容でした。…
指がないこと 最初の一文を読んだら、次の文、次の文と、読み進められます。 短文の畳みかけで、最後まで疾走感があります。 主人公は男子中学生。右手の小指と、薬指半分がありません。 4歳のとき、タンスで指を挟んだからです。 父と母とは別居で、祖母と…
殺意と自殺の理由 感想①はこちらです。 読み終わってからも、頭に残ります。 観念的な内容が多く、私が読み解けてないから、頭に残ってる気がします。 いつもなら、感想を書いたら次の作品を読むのですが、この作品がこびりついて、次の作品へ移行できません…
選評を読んで 著者は17歳で、史上最年少受賞とのことです。 どんな小説を書くのだろうと読み始めたら、厳かな文章という印象を持ちました。 人物の描写では、 目鼻立ちの、運命に苛まれているような美貌は思わず息を呑むほどで、傑出した細長い眉、翳りのあ…
選評を読んで シャーマンとは、 神や精霊との直接接触からその力能を得、神や精霊との直接交流によって託宣、予言、治病、祭儀などを行う呪術・宗教的職能者(日本大百科全書) とあります。 作中でシャーマンを託されてるのは、主人公です。 主人公は、南米…
タイトルの意味 最初は読みにくかったです。 誰が誰か、わからない 誰が何を言ってるのか、わからない 途中で読むのをやめようかと思いました。 私は新人賞受賞作を読む際には、 受賞作 選評 の順で読みます。 なぜ、こんな読みにくい作品が受賞したのかを知…
ご指摘いただいた点について 本書について、以前読書メーターで感想を書きました。一部抜粋します。 ラストのわかりにくさの原因は、主人公と同じ名前の女性が、女子大生で風俗で働いてるからだろう。病気で入院してる今までの話は何だったのかと。 この感想…
膨大な読書量に裏付けされた感覚 作者が18歳というのが、どうしても目についてしまいます。 若い感性で書かれた小説ね、と思ってしまいます。 よくない先入観です。早計でした。 言葉の引き出しが凄まじい作品でした。 作品を読んで、 選評を読んで、 対談を…
敵と見なす勇気 ジャクソンは、アフリカのどこかの国と日本のハーフで、ゲイです。 日本で言うところの、マイノリティの中のマイノリティ。 ジャクソンに似ている人間が、他に3人集まります。 4人が集まった場所で、4人の心情も描かれるので、これは誰の心情…
あの少女と呼ぶ理由 読むのは3回目です。 2021年2月に感想を書いてます。 今回読み返して、読み間違いが見つかりました。 前回の感想では、 回想形式の作品ですが、現在の主人公は、物語に登場しません。 と書いています。 しかし、現在の主人公は、書き手と…
選評を読んで アラフォーの女性2人が、ルームシェアをします。 主人公は38歳で、経理の仕事をしています。 同居人は、仕事で知り合った女性です。 仲良くなったきっかけは、推しの男性アイドルグループが同じだったことです。 主人公と同居人が推すメンバー…
選評を読んで 主人公は女子高生で、 母は不妊症 父は母の再婚相手 物語でありそうな家族ものです。 選考委員の柴崎由香さんは、 全般に、語り手や中心となる人物が狭い範囲から出ることがなく、小説の深層で揺らぎが起きにくかったのではないか。 「全般に」…
選評を読んで 舞台は、都会の賃貸マンションの一室です。 一人暮らし用の部屋で、入居者が頻繁に入れ替わります。 その部屋に住む人たちの生活が描かれます。 文章は読みやすく、最後まで一気に読めました。 「もぬけの考察」は、本作の一つの章のタイトルで…
殺すために孕もうとする障害者 芥川賞を受賞したので再読しました。 前回読んだときの感想はこちらです。 主人公は、嫌っています。 例えば、ものに対して。 博物館や図書館や、保存された歴史的建造物が、私は嫌いだ。完成された姿でそこにずっとある古いも…
選評を読んで ハプニングバーの潜入記事から始まります。 いきなり性的な表現からか……。 読み始めの印象はそうでした。 しかし、それは入院している人間が執筆している架空の記事だとわかります。 体験ではなく、創作か。 小説自体、創作なのですが、体験を…
選評を読んで 新潮新人賞には、2630作品の応募があったそうです。 本作がその頂点にふさわしいかというと、そうは思いませんでした。 何の話かよくわからなく、読み通すのが苦痛でした。 新人賞か芥川賞候補作でなければ、途中で読むのをやめています。 しか…
京都に帰りたい 主人公は、英語圏で生まれ育ちました。 きみが初めて京都を訪れたのは十六歳のときだ。この時点できみはすでに二年間、日本語を学習している。 本作は、「きみ」という二人称の語りです。 主人公は、 16歳で初京都 大学卒業後、英語を教える…