いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

新人賞

『うどん キツネつきの』高山羽根子(著)の感想【タイトルの意味】(創元SF短編賞佳作)

タイトルの意味 タイトルに、ぞわぞわします。 「うどん キツネつきの」 倒置法です。 「キツネつきのうどん」ではありません。 なぜ、倒置法なのか 「キツネ」はうどんに乗せる揚げなのか さらに副題が付けられています。 「Unknown Dog Of Nobody」 「誰に…

『アキちゃん』三木三奈(著)の感想【大事なことを隠すズルさ】(文學界新人賞受賞、芥川賞候補)

大事なことを隠すズルさ 「アキちゃん」は、主人公が小学5年生のときの同級生です。 大人になった主人公が、過去を回想する形で、物語は進みます。 わたしはアキちゃんが嫌いだった。 (中略) これまでの人生において、これほど真剣に誰かを憎んだことはな…

『指の骨』高橋弘希(著)の感想【戦争の敗残者】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

戦争の敗残者 太平洋戦争が舞台ですが、敵軍との戦闘がメインではありません。 赤道より南の半島で負傷した主人公が、野戦病院に運び込まれてからがメインです。 山裾に建てられた野戦病院には、 片足のない兵士 マラリアで衰弱した青黒い顔の兵士 顔中に包…

『銃(小説)』中村文則(著)の感想【銃を見つけたら】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

銃を見つけたら 道端で銃を見つけたらどうしますか? それを誰にも見られていないとして。 選択肢は3つです。 警察を呼ぶ(警察に届ける) 見て見ぬふりをして立ち去る 拾う 普通は、1か2ですよね。 この作品の主人公である大学生は、銃を拾います。 冒頭の…

『ベッドタイムアイズ』山田詠美(著)の感想【日本人女性と黒人兵の愛欲】(文藝賞受賞、芥川賞候補)

日本人女性と黒人兵の愛欲 主人公は、横須賀のクラブで、歌手やストリッパーとして働いています。 クラブでビリヤードに熱中する黒人男性を見つめていると、彼から目で合図を受けます。誘導されるがまま、誰もいないボイラー室へ行きます。 主人公が何か話そ…

『限りなく透明に近いブルー』村上龍(著)の感想【乱交、ドラック、暴力】(群像新人賞受賞、芥川賞受賞)

乱交、ドラック、暴力 米軍基地が身近に存在する、若者たちの乱交、ドラック、暴力です。 主人公の名前、リュウは著者と同じです。 著者の経験が入った作品でしょう。 あとがきでは、ヒロインに向けて書かれています。 こんな小説を書いたからって、俺が変わ…

『冷たい水の羊』田中慎弥(著)の感想【いじめられたと思わない】(新潮新人賞受賞)

いじめられたと思わない 中学2年生の主人公は、クラスメイトからいじめを受けています。 殴られるのは日常茶飯事で、 筒型の風呂で冷水や尿をかけられたり、尻の穴にモップの柄を入れられたりします。 主人公は、独自の「論理」を持ち込んで耐えます。 いじ…

『影裏』沼田真佑(著)の感想【失踪した親友を探す】(文學界新人賞受賞、芥川賞受賞)

失踪した親友を探す 30代の主人公は、岩手に転勤し、一人暮らしをしています。 2年経っても、人との交流はほとんどありません。 主人公は釣り好きで、釣りのイベントに参加したのですが、 誰とも世間話ひとつできず、そんな自分に落胆します。 唯一、心を許…

『二人組み』鴻池留衣(著)の感想【教えを口実に胸を揉む】(新潮新人賞受賞)

教えを口実に胸を揉む 主人公は中学3年生で秀才です。 ただ授業態度が悪いので、テストの点数は良くても、通知表は2や3ばかりです。 ある日、主人公は、身体測定で廊下に並ぶ女子生徒たちの前を通ります。 下着を取っているため、胸の形をジャージで隠す生徒…

『縫わんばならん』古川真人(著)の感想【退屈と評された芥川賞候補】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

退屈と評された芥川賞候補 芥川賞の選評で、これほど「退屈」と言われた作品はあるでしょうか。 私も読んでいて退屈でした。 ただ、つまらないと切り捨てられませんでした。 この作品は、四世代の一家の声が、多様な視点で語られており、 壮大な記憶を作り上…

『犬のかたちをしているもの』高瀬隼子(著)の感想【他人が産んだ子を育てるか】(すばる文学賞受賞)

他人が産んだ子を育てるか 他人が産んだ子とは、養子のことではありません。 主人公の彼氏に、お金を払って会っている女性がいました。その女性の産む子です。 彼氏は浮気をしていただけでなく、相手を妊娠させていたのです。 主人公は、卵巣の腫瘍を切除し…

『尾を喰う蛇』中西智佐乃(著)の感想【介護と戦争がリンク】(新潮新人賞受賞)

介護と戦争がリンク 主人公は35歳の介護福祉士で、病院に勤めています。 入居者の老人が、女性の身体に触れたり、暴力をふるったりすることに、苛立っていました。 老人が暴れたとき、主人公は力で抑えます。 そして、相手を暴力で封じ込むことに味をしめま…

『改良』遠野遥(著)の感想【美しくなりたい男の凶器めいた語り】(文藝賞受賞)

美しくなりたい男の凶器めいた語り 主人公の大学生は、女装をします。 一度買ったウィッグが気に入らないから買い直したり、メイクを研究したりと、ストイックです。 男が好きなのかな? と思いますが、そうではありません。 私は、美しくなりたいだけだった…

『かか』宇佐見りん(著)の感想【かか弁という新しい方言】(文藝賞受賞、三島賞受賞、野間文芸新人賞候補)

かか弁という新しい方言 「かか」とは、母親です。 「かか弁」は、母親の使う独特な言葉です。 東北弁ではなく、博多弁でも関西弁でもありません。 最初は読みにくいですが、次第にこの語りに慣れます。 かかは、ととの浮気したときんことをなんども繰り返し…

『いかれころ』三国美千子(著)の感想【選考委員が絶賛】(新潮新人賞受賞、三島賞受賞)

選考委員が絶賛 新潮新人賞、三島由紀夫賞のダブル受賞です。 新潮新人賞を受賞したときに、一度手に取りましたが、冒頭で読むのをやめました。 理由は、 4歳の少女視点なのに、達観した言葉づかい 4歳の少女視点なのに、父母を名前で表記(「父は」ではなく…

『そこどけあほが通るさかい』石倉真帆(著)の感想【村社会に耐える】(群像新人賞受賞)

村社会に耐える 村社会は人間関係が密です。 それが嫌なら村を出ればいいのですが、主人公は学生なのでそうはいきません。 頭が良いわけでも、スポーツもできるわけでもない女子生徒です。 将来やりたいことがあるわけでもありません。 ただ今の環境が嫌で、…

『風の歌を聴け』村上春樹(著)の感想【Happy Birthday and White Christmas】(群像新人賞受賞、芥川賞候補)

Happy Birtday and White Christmas 『Happy Birthday and White Christmas』は、村上春樹さんが本作を応募したときのタイトルです。 受賞の段になり、タイトルが『風の歌を聴け』に変更されたそうです。 なぜ、変更されたのかはわかりません。 確かに『風の…

『青が破れる』町屋良平(著)の感想【言いにくいことを人に伝えるときに】(文藝賞受賞)

ひらがな、カタカナを多用する文体 「あいつ、ながくないらしいんよ」 とハルオはいった。 ハルオの彼女の見舞いにいったかえりだった。 おれは、 「ビョーキ?」 ときいた。(p.9) 本来、漢字で書くところを、ひらがなやカタカナが使われています。 その文…

『レンファント』田村広済(著)の感想【生まれた子が重い皮膚病だったら】(文學界新人賞受賞)

子どもを可愛がれない 育児休暇を取った男性が、子の重い皮膚病と、妻との関係に悩みます。 妻は、子どもを可愛がっていました。 しかし、子が皮膚病とわかり、強い薬を塗っても治らない現状を見て、可愛がらなくなりました。妻の言葉です。 あんなに苦しん…

『逃げ水は街の血潮』奥野紗世子(著)の感想【自意識過剰な地下アイドル】(文學界新人賞受賞)

自意識過剰な地下アイドル 地下アイドル、SNS、裏アカウントなどを素材に、一気に突っ走る文章です。 キモいオタは最悪。でもキモいオタから「顔かわいい料」をもらって生きているわたしはもっと最悪のイマジナリー便所。 安いファミレスで、女子高生がぐわ…

『インストール』綿矢りさ(著)の感想【音楽のように流れる文章を読みたい人に】(文藝賞受賞)

17歳で文藝賞受賞 綿矢りささんは、本書『インストール』で文藝賞(純文学系の新人賞の1つ)を受賞しました。 彼女が世に生み出した最初の作品です。 デビュー作というのは、作家の象徴だと思います。 1500から2000くらいの応募の中から選ばれる…