いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いています。

新人賞

介護と戦争がリンクする 中西智佐乃『尾を喰う蛇』(新潮新人賞受賞)の感想(1000字)

介護と戦争がリンク 主人公は35歳の介護福祉士で、病院に勤めています。 入居者の老人が、女性の身体に触れたり、暴力をふるったりすることに、苛立っていました。 老人が暴れたとき、主人公は力で抑えます。 そして、相手を暴力で封じ込むことに味をしめま…

美しくなりたい男の凶器めいた語り 遠野遥『改良』(文藝賞受賞)の感想(1000字)

美しくなりたい男の凶器めいた語り 主人公の大学生は、女装をします。 一度買ったウィッグが気に入らないから買い直したり、メイクを研究したりと、ストイックです。 男が好きなのかな? と思いますが、そうではありません。 私は、美しくなりたいだけだった…

かか弁という新しい方言 宇佐見りん『かか』(文藝賞受賞)の感想(1000字)

かか弁という新しい方言 「かか」とは、母親です。 「かか弁」は、母親の使う独特な言葉です。 東北弁ではなく、博多弁でも関西弁でもありません。 最初は読みにくいですが、次第にこの語りに慣れます。 かかは、ととの浮気したときんことをなんども繰り返し…

選考委員が絶賛 三国美千子『いかれころ』(新潮新人賞受賞、三島賞受賞)の感想(1000字)

選考委員が絶賛 新潮新人賞、三島由紀夫賞のダブル受賞です。 新潮新人賞を受賞したときに、一度手に取りましたが、冒頭で読むのをやめました。 理由は、 4歳の少女視点なのに、達観した言葉づかい 4歳の少女視点なのに、父母を名前で表記(「父は」ではなく…

ムラ社会で耐えた君は 石倉真帆『そこどけあほが通るさかい』(群像新人賞受賞)の感想(1000字)

ムラ社会で耐える ムラ社会は人間関係が密です。 それが嫌ならムラを出ればいいのですが、主人公は学生なのでそうはいきません。 頭が良いわけでも、スポーツもできるわけでもない女子生徒です。 将来やりたいことがあるわけでもありません。 ただ今の環境が…

Happy Birthday and White Christmas 村上春樹『風の歌を聴け』(群像新人賞受賞、芥川賞候補)の感想(1000字)

Happy Birtday and White Christmas 『Happy Birthday and White Christmas』は、村上春樹さんが本作を応募したときのタイトルです。 受賞の段になり、タイトルが『風の歌を聴け』に変更されたそうです。 なぜ、変更されたのかはわかりません。 確かに『風の…

言いにくいことを人に伝えるときに 町屋良平『青が破れる』(文藝賞受賞)の感想(1000字)

ひらがな、カタカナを多用する文体 「あいつ、ながくないらしいんよ」 とハルオはいった。 ハルオの彼女の見舞いにいったかえりだった。 おれは、 「ビョーキ?」 ときいた。(p.9) 本来、漢字で書くところを、ひらがなやカタカナが使われています。 その文…

生まれた子が重い皮膚病だったら 田村広済『レンファント』(文學界新人賞受賞)の感想(1000字)

子どもを可愛がれない 育児休暇を取った男性が、子の重い皮膚病と、妻との関係に悩みます。 妻は、子どもを可愛がっていました。 しかし、子が皮膚病とわかり、強い薬を塗っても治らない現状を見て、可愛がらなくなりました。妻の言葉です。 あんなに苦しん…

自意識過剰な地下アイドルの暴走 奥野紗世子『逃げ水は街の血潮』(文學界新人賞受賞)の感想(1000字)

地下アイドルの過剰な自分語り 地下アイドル、SNS、裏アカウントなどを素材に、一気に突っ走る文章です。 キモいオタは最悪。でもキモいオタから「顔かわいい料」をもらって生きているわたしはもっと最悪のイマジナリー便所。(p.14) 安いファミレスで、女…

音楽のように流れる文章を読みたい人に 綿矢りさ『インストール』(文藝賞受賞)の感想(1000字)

17歳で文藝賞受賞 綿矢りささんは、本書『インストール』で文藝賞(純文学系の新人賞の1つ)を受賞しました。 彼女が世に生み出した最初の作品です。 デビュー作というのは、作家の象徴だと思います。 1500から2000くらいの応募の中から選ばれる…