選評を読んで
ハプニングバーの潜入記事から始まります。
いきなり性的な表現からか……。
読み始めの印象はそうでした。
しかし、それは入院している人間が執筆している架空の記事だとわかります。
体験ではなく、創作か。
小説自体、創作なのですが、体験をベースに書くのと、想像力で書くのとでは、印象が違います。
私が新人賞の掲載誌を読む順番は、
- 受賞作紹介ページ(作家プロフィール、受賞の言葉)
- 受賞作
- 選評
作家プロフィールに、
筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者
とあり、主人公と同じでした。
タイトルの「ハンチバック」は、せむし(背骨が弓なりに曲がり、前かがみになる病気)を示しています。
主人公と作家が似ているのは、この小説の迫力をもってしては、仕方ないことかもしれません。
ただ、体験をベースにした小説か、と思いました。
ラストの展開について、選評で争点になっていたようです。
金原ひとみさんは、
ラストにのみ、詰めの甘さを感じ
阿部和重さんは、
最終章の位置づけが不明瞭で混乱を招く内容にとどまっている
と書いています。
村田沙耶香さんは、
この部分がなければもっとよかったという気持ちと、この部分がないこの小説に対して読み手が感じる「良さ」はあまりにも傲慢なのではないかという気持ち
「この部分がないこの小説に対して読み手が感じる「良さ」はあまりにも傲慢」とは、何でしょうか。
この小説は、ラストまで含めてこの小説なのに、ラストを削った小説を良いとするのは、読み手として傲慢ではないか、ということだとしたら、
私は傲慢ではないと思います。読み手は自由ですから、「ラストがなければもっと良かったのに」と言うのは一つの意見ですし、悪くないでしょう。
ちなみに私は、ラスト部分がなければもっとよかったという印象はありませんでした。
言われてみれば、なくてもいいかもしれないな、って感じです。
中村文則さんはラスト部分について、「よくないと感じた」と書いています。
実はさっきまでの物語は空想だったのか、もしくは、ここから主人公が書いた小説なのかもわかりにくく、意図もわかりにくかった。本編にあった明確な強度に対し、このわかりにくいラストは合っていないと感じた。
ラスト部分を読み返してみると、確かにわかりにくいかもしれない、と思いました。
何がわかりにくいのかを考えると、
主人公(釈華)と同じ名前(漢字は違う)の女性(紗花)が、女子大生で風俗で働いていることです。
私は、冒頭のハプニングバーの潜入記事と同じで、WEBメディア記事の文章かと思いましたが、よくわかりません。
私が雇われているWEBメディアでは、男性向けは風俗店体験談やナンパスポット20選といった記事(中略)女性向けは圧倒的に復縁神社20選
これではラストの文章とは合っていません。
ラストを考えるほど、わかりにくくなってしまいました。
感想②はこちらです。