いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『氷柱の声』くどうれいん(著)の感想【三月十二日を忘れない】(芥川賞候補)

三月十二日を忘れない 主人公の女子高生は、東日本大震災を経験しました。 2011年(被災、美術部での活動) 2016年~2021年(仙台での大学生活、フリーペーパーの編集者) 高校で美術部に所属する主人公は、高校最後のコンクールで「滝」を描きます。主人公…

『水たまりで息をする』高瀬隼子(著)の感想【風呂に入らない夫】(芥川賞候補)

風呂に入らない夫 35歳になる夫は、 風呂には、入らないことにした と、主人公に宣言します。 なぜ、風呂に入らないのか、わかりません。 夫に聞いても、 くさくない? (中略) あとちょっと痛い と、よくわからない理由です。 夫は以前、ずぶ濡れで会社か…

『大家さんと僕』矢部太郎(著)の感想【Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)のおすすめ】(手塚治虫文化賞)

Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)のおすすめ 『大家さんと僕』、一気読みしました。 なぜ、一気読みできたかというと、 上品な大家さんが魅力(挨拶が「ごきげんよう」、伊勢丹によく行く) 芸人だがうまく喋れない僕が魅力(矢部さん本人) 周りの…

『1%の努力』ひろゆき(著)の感想【AmazonオーディオブックAudibleのおすすめ】

AmazonオーディオブックAudibleのおすすめ 初めてオーディオブックを聞きました。 オーディオブックとは、簡単に言うと、本の朗読サービスです。本に書かれた文字を、ナレーションの方が読み上げてくれます。 本を手に取って読めば、身体を拘束されます。で…

『孤独論 逃げよ、生きよ』田中慎弥(著)の感想【死ぬよりは逃げる道を選ぶ】

死ぬよりは逃げる道を選ぶ 著者の田中さんは、大学受験に失敗して15年、仕事をせず家にいました。 朝起きて、食事をして、たまに母や祖父と言葉を交わし、テレビを眺め、窓越しの景色を眺め、本を読み、文章を書く―― そんな生活です。 29歳のときに、書いた…

『マジックミラー』千葉雅也(著)の感想【いつか必ず失われる姿】(川端康成文学賞受賞)

いつか必ず失われる姿 マジックミラーは、男性同士の性的交流の場(ハッテン場)の入り口に置かれています。 狭い玄関だった。例によって正面にマジックミラーとスリットがある。どこのハッテン場でも同じだ。 主人公は、新宿二丁目のバーで、過去の出来事を…

『穴』小山田浩子(著)の感想【穴は誰かとつながる存在】(芥川賞受賞)

穴は誰かとつながる存在 主人公は、夫の転勤に伴い、夫の実家の隣に住むことになりました。 田舎で、何もありません。 仕事の求人はなく、主人公は専業主婦になりました。 引っ越しの荷物が片付くと、私は何の予定も宿題もない夏休みを与えられたような気持…

『オーバーヒート』千葉雅也(著)の感想【『デッドライン』のその後】(芥川賞候補)

『デッドライン』のその後 2018年、主人公が大阪に住んでいるときの話がメインです。 主人公は、京都にある大学の准教授ですが、大阪に住んでいます。 長い間東京に住んでいた主人公にとって、 京都は「沈鬱な地方都市」 大阪は「関西の東京」 だと思ったか…

『嫌われる勇気』の感想【読書感想文ブログの運営方針】

読書感想文ブログの運営方針 本書で書かれていることは強烈です。 例えば、 トラウマは、存在しない すべての悩みは「対人関係」 あなたは世界の中心ではない ワーカホリックは人生の嘘 人はいま、この瞬間から幸せになることができる などです。 中でも私が…

『星月夜』李琴峰(著)の感想【子どもに依存する親】

子どもに依存する親 主人公は台湾人の女性で、日本の大学で日本語を教える非常勤講師です。 教え子の女性に、恋人のような存在がいます。 教え子は新疆ウイグル自治区出身で、日本の大学に通いながら、大学院を目指しています。 教師と教え子が、どのように…

『道化むさぼる揚羽の夢の』金子薫(著)の感想【この世界には道化のみ似つかわしい】

この世界には道化のみ似つかわしい 主人公は、さなぎの形の拘束具に閉じ込められています。 首から上は外に出ていますが、身体は拘束されています。よって、糞尿垂れ流しです。 やっとのことで解放された主人公は、工場で揚羽(アゲハ)蝶を作るよう命じられ…

【芥川賞予想】第165回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年上半期)

第165回芥川賞候補作発表 2021年6月11日、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、2021年7月14日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 石沢麻依『貝に続く場所にて』(群像6月号) 初の候補入りです。 同作で群…

『空が青いから白をえらんだのです』寮美千子(編)の感想【少年刑務所受刑者の詩集】

少年刑務所受刑者の詩集 本書は、奈良少年刑務所の受刑者が書いた詩で、構成されています。 タイトルの「空が青いから白をえらんだのです」も、受刑者の書いた詩です。 詩を書いた受刑者の人となりを、編者の寮さんが補足します。 残念ながら私は、57編の詩…

『生き方の問題』乗代雄介(著)の感想【従弟と従姉の生き方】

従弟と従姉の生き方 24歳の主人公は、2歳年上の従姉に、長文の手紙を出します。 作品全体が主人公の手紙で構成されているので、長い手紙です。 長文の理由を、主人公は、 僕は貴方との数少ない思い出を絞って一滴残らず文字に変え、その冷たい艶を潤滑油に、…

『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰(著)の感想【新宿二丁目の女性専用バー】(芸術選奨新人賞受賞)

新宿二丁目の女性専用バー 「ポラリス」とは、新宿二丁目にある、女性専用のバーです。 バーに集まるのは、主にレズビアンの女性たち。 本作は、店主やバイト、客の、7人が語り手となります。 本作で特に良いと感じたのは、 同じ言葉が、後になって別の意味…