いっちの1000字読書感想文

一応平成生まれ。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

芥川賞

『デッドライン』千葉雅也(著)の感想【3回読んでもわからなかった】(野間文芸新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

3回読んでもわからなかった 芥川賞、野間文芸新人賞の候補のときに2回 今回三島賞候補で1回 計3回読みました。 前回読んだときの感想はこちらです。 わからないことが多い小説です。 例えば、主人公が「○○くん」と呼ばれていること。固有名詞が与えられてい…

第163回芥川賞受賞作発表、会見、選評(2020年上半期)の感想

第163回芥川賞受賞作発表 2020年7月15日(水)、芥川賞の受賞作が発表されました。 ダブル受賞です。 高山羽根子『首里の馬』 遠野遥『破局』 首里の馬 作者:高山羽根子 発売日: 2020/07/27 メディア: Kindle版 破局 作者:遠野遥 発売日: 2020/07/04 メディ…

【第163回芥川賞予想】「大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想編)」の感想

第163回芥川賞予想 7月15日(水)に第163回芥川賞、直木賞が決まります。 「文学賞メッタ斬り!スペシャル」は、受賞作の決定前に、どの作品が受賞するかを予想するラジオ番組です。 予想する方 大森望(書評家、SF翻訳家) 豊崎由美(書評家) 芥川賞候補作…

『首里の馬』高山羽根子(著)の感想【わからないことは怖い】(芥川賞受賞、三島賞候補)

わからないことは怖い 主人公は、中学生のときから10年以上、沖縄の資料館で資料整理をしています。 公的な資料館ではなく、補助金などの収入もありません。 知人が人知れず、情報を蓄積した場所です。 主人公は、資料の整理を無償で行っているため、他に仕…

『アウア・エイジ(Our Age)』岡本学(著)の感想【塔の古い写真】(芥川賞候補)

塔の古い写真 40歳を過ぎた主人公は、離婚し、妻子と会わず数年経っていました。 ただひとり生存を続ける意義を見出せず、毎日を惰性に生きているようなていたらくだった。 そんな主人公のもとに、映画館から封書が届きます。 映写機の葬式をあげるから、ぜ…

『赤い砂を蹴る』石原燃(著)の感想【亡き母の代わりにブラジルへ】(芥川賞候補)

亡き母の代わりにブラジルへ 40代半ばの主人公は、亡き母の代わりに、母の友人とブラジルへ行きます。 母は、友人とブラジルに行くのを楽しみにしていました。 ですが、母に癌が見つかり、旅行どころではなくなりました。 母の友人は、ブラジルで育った日系…

『アキちゃん』三木三奈(著)の感想【大事なことを隠すズルさ】(文學界新人賞受賞、芥川賞候補)

大事なことを隠すズルさ 「アキちゃん」は、主人公が小学5年生のときの同級生です。 大人になった主人公が、過去を回想する形で、物語は進みます。 わたしはアキちゃんが嫌いだった。 (中略) これまでの人生において、これほど真剣に誰かを憎んだことはな…

『破局』遠野遥(著)の感想【不穏な語り手】(芥川賞受賞)

不穏な語り手 「信頼できない語り手」という言葉があります。 主人公の語りが信頼できなく(嘘のようで)、読み手を惑わすことです。 『破局』の語りは、信頼できないというより、読んでいると不穏を感じます。 主人公は、公務員試験を控えている大学4年生で…

【芥川賞予想】第163回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年上半期)

第163回芥川賞候補作発表 2020年6月16日、芥川賞の候補5作品が発表されました。 受賞作の発表は、7月15日(水)です。 以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。 『赤い砂を蹴る』石原燃 初の候補入りです。 石原さんは、劇作家で、太宰治のお…

『スティル・ライフ』池澤夏樹(著)の感想【世界はぼくを傷つけることができない】(芥川賞受賞)

世界はぼくを傷つけることができない 主人公は、定職に就かず、アルバイトで生計を立てています。 何をすればいいのだろう。仮に、とりあえず、今のところは、しばらくの間は、アルバイトでもして様子を見る。 淡々とバイトを続けていると、かつてのバイト仲…

『指の骨』高橋弘希(著)の感想【戦争の敗残者】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

戦争の敗残者 太平洋戦争が舞台ですが、敵軍との戦闘がメインではありません。 赤道より南の半島で負傷した主人公が、野戦病院に運び込まれてからがメインです。 山裾に建てられた野戦病院には、 片足のない兵士 マラリアで衰弱した青黒い顔の兵士 顔中に包…

『銃(小説)』中村文則(著)の感想【銃を見つけたら】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

銃を見つけたら 道端で銃を見つけたらどうしますか? それを誰にも見られていないとして。 選択肢は3つです。 警察を呼ぶ(警察に届ける) 見て見ぬふりをして立ち去る 拾う 普通は、1か2ですよね。 この作品の主人公である大学生は、銃を拾います。 冒頭の…

『苦役列車(小説)』西村賢太(著)の感想【日雇い労働なのは理不尽か】(芥川賞受賞)

日雇い労働なのは理不尽か 19歳の主人公は、中学卒業以来、日雇い労働で生計を立てています。 港の物流倉庫で荷物を運ぶ、肉体労働です。 毎日仕事に行くわけではなく、金に困ったときに仕方なく行きます。 稼いだ金は、食事や酒、風俗代に消えます。 1万円…

『共喰い(小説)』田中慎弥(著)の感想【血は争えないのか】(芥川賞受賞)

血は争えないのか 男子高校生の主人公は、父と再婚の母との三人暮らしです。 生みの母は、近所で魚屋をやっています。右手首から先は、戦争でなくしました。 父は性行為のときに相手の顔を殴ります。 殴られたことがあるのは、 生みの母 再婚の母 近所で体を…

『ベッドタイムアイズ』山田詠美(著)の感想【日本人女性と黒人兵の愛欲】(文藝賞受賞、芥川賞候補)

日本人女性と黒人兵の愛欲 主人公は、横須賀のクラブで、歌手やストリッパーとして働いています。 クラブでビリヤードに熱中する黒人男性を見つめていると、彼から目で合図を受けます。誘導されるがまま、誰もいないボイラー室へ行きます。 主人公が何か話そ…

『図書準備室』田中慎弥(著)の感想【働かない理由】(芥川賞候補)

働かない理由 主人公は、30歳を過ぎて働いていません。 一緒に住む母の金で、酒を飲んでいます。 自分の金で酒を飲むより、母の金で飲む酒の方が美味いと言っています。 父は、主人公が4歳のときに亡くなり、それ以降、祖父と母との三人暮らしでした。 その…

『限りなく透明に近いブルー』村上龍(著)の感想【乱交、ドラック、暴力】(群像新人賞受賞、芥川賞受賞)

乱交、ドラック、暴力 米軍基地が身近に存在する、若者たちの乱交、ドラック、暴力です。 主人公の名前、リュウは著者と同じです。 著者の経験が入った作品でしょう。 あとがきでは、ヒロインに向けて書かれています。 こんな小説を書いたからって、俺が変わ…

『土の中の子供』中村文則(著)の感想【山奥で埋められた子供】(芥川賞受賞)

山奥で埋められた子供 主人公は、27歳のタクシー運転手です。 幼少の頃、養親に山奥で埋められ、孤児院で育ちました。 その過去は、現在の行動に尾を引いているようです。 たむろしている男たちに向けて、吸い殻を投げる マンションの外壁から身を出して落ち…

『あひる』今村夏子(著)の感想【口に出してはいけないこと】(河合隼雄物語賞受賞、芥川賞候補)

口に出してはいけないこと 主人公と両親の三人暮らしの家で、あひるを飼うことになりました。 名前は「のりたま」 近所の子どもたちがあひるを見に来るので、家が賑わいます。 両親は、家に来る子どもたちのために、お菓子やお茶を出したり、勉強できるよう…

『影裏』沼田真佑(著)の感想【失踪した親友を探す】(文學界新人賞受賞、芥川賞受賞)

失踪した親友を探す 30代の主人公は、岩手に転勤し、一人暮らしをしています。 2年経っても、人との交流はほとんどありません。 主人公は釣り好きで、釣りのイベントに参加したのですが、 誰とも世間話ひとつできず、そんな自分に落胆します。 唯一、心を許…

『四時過ぎの船』古川真人(著)の感想【認知症の祖母と無職の孫】(芥川賞候補)

認知症の祖母と無職の孫 長崎の島を舞台に、 章ごとで、視点が交互に変わります。 認知症の祖母の視点 無職の孫の視点 また、語られる時間軸は同じではありません。 祖母の視点:孫が中学一年生 孫の視点:孫が30歳直前 よって、語られる内容も異なります。 …

『縫わんばならん』古川真人(著)の感想【退屈と評された芥川賞候補】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

退屈と評された芥川賞候補 芥川賞の選評で、これほど「退屈」と言われた作品はあるでしょうか。 私も読んでいて退屈でした。 ただ、つまらないと切り捨てられませんでした。 この作品は、四世代の一家の声が、多様な視点で語られており、 壮大な記憶を作り上…

『ビニール傘』岸政彦(著)の感想【大阪の街と若者のやるせなさ】(芥川賞候補、三島賞候補)

大阪の街と若者のやるせなさ 繁華街から少し離れた大阪の街が舞台です。 俺たちが暮らしているのはコンビニとドンキとパチンコと一皿二貫で九十円の格安の回転寿司でできた世界で、そういうところで俺たちは百円二百円の金をちびちびと使う。(p.45) そこで…

「大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(結果篇)」の感想【第162回芥川賞の選考委員をメッタ斬り】

番組概要 1月15日(水)に第162回芥川賞、直木賞が決まりました。 芥川賞:古川真人『背高泡立草』 背高泡立草 (集英社文芸単行本) 作者:古川真人 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2020/01/24 メディア: Kindle版 直木賞:川越宗一『熱源』 【第162回 直木…

第162回芥川賞・直木賞受賞作発表、会見、選評(2019年下半期)の感想

第162回芥川賞・直木賞受賞作発表 2020年1月15日(水)、芥川賞と直木賞の受賞作が発表されました。 芥川賞は、古川真人『背高泡立草』 【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草 作者:古川 真人 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2020/01/24 メディア: 単行本 雑…

「大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想篇)」の感想【第162回芥川賞、直木賞を徹底予想】

番組概要 1月15日(水)に第162回芥川賞、直木賞が決まります。 受賞作の決定前に、どの作品が受賞するかを予想するラジオ番組です。 出演者(予想する方) 大森望(書評家、SF翻訳家) 豊崎由美(書評家) 芥川賞候補作(5作品) 木村友祐『幼な子の聖戦』 …

『音に聞く』高尾長良(著)の感想【言葉か音か】(芥川賞候補)

言葉か音か 主人公(姉)は翻訳の仕事、妹は作曲をしています。 姉=言葉 妹=音 に、象徴されます。 主人公は、妹に良き指導者をと考え、 音楽理論の専門家である父に会いに、姉妹でウィーンへ行きます。 母と離婚した父は、ウィーンで暮らしていました。 …

『背高泡立草』古川真人(著)の感想【草刈りする理由】(芥川賞受賞)

草刈りする理由 主人公の母の実家に、使われないまま放置されている納屋があります。 納屋の周りには草が生い茂っており、その草を刈るため、親族が集まります。 主人公 母 母の姉 母の姉の子 母の兄 主人公は、草を刈る必要はないと思っています。 納屋は使…

『最高の任務』乗代雄介(著)の感想【卒業式後の家族旅行】(芥川賞候補)

卒業式後の家族旅行 主人公の女子大生は、卒業式に出たくありません。 卒業式に行くか行かないかぐらい自分で決める。お母さんだって来るわけじゃないんだし、それでいいでしょ(p.8) 母親は言います。 「行く」 「は?」 「家族みんなで」(p.8) 家族で卒…

『幼な子の聖戦』木村友祐(著)の感想【幼なじみの選挙を妨害】(芥川賞候補)

幼なじみの選挙を妨害 地元の村長選に、幼なじみが立候補しました。 現職の村長が、スキャンダルを期に辞任したからです。 村議会議員をしている主人公は、幼なじみを応援する予定でした。 ですが、村の有力者の応援を受けて対立候補が出馬し、その応援者か…