第169回芥川賞候補作発表
2023年6月16日(金)、芥川賞の候補5作品が発表されました。
受賞作の発表は、7月19日(水)です。
以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。
石田夏穂『我が手の太陽』群像5月号
第166回の候補『我が友、スミス』に続き、2度目の候補です。
感想はこちらです。
市川沙央『ハンチバック』文學界5月号
初の候補入りです。
同作で文學界新人賞を受賞しました。
感想はこちらです。
児玉雨子『##NAME##』文藝夏季号
初の候補入りです。
千葉雅也『エレクトリック』新潮2月号
第165回の候補『オーバーヒート』に続き、3度目の候補です。
乗代雄介『それは誠』文學界6月号
第166回の候補『皆のあらばしり』に続き、4度目の候補です。
感想はこちらです。
受賞予想
『ハンチバック』は、主人公に魅力を感じませんでした。
嫌いなものばかり挙げ、世の中を嫌悪してます。
目新しさはありますが、読後感は良くありませんでした。
『エレクトリック』は、ラストが気になりました。
友人に持ち去られたアンプが、なぜか社長の手元にあります。
主人公の整備していたアンプが、どういう経緯で社長の手元にあるのか、説明されないまま、終わります。
こちらも、読後感が良くありませんでした。
『##NAME##』は、名前の存在について、考えることになります。
名前より、そのものの本質の方が重要なはずなのに、名前で目立ってしまう。
問題提起を与える作品で、良かったです。
『我が手の太陽』は、ラストが争点になりそうです。
最後の検査員は何だったのか。どうして主人公の左手が治っていたのか。
わかりにくくする必要性は、私には感じませんでした。
『それは誠』は、出版社の言うとおり、乗代さんの最高傑作だと思います。
修学旅行の班分けで、ほとんど余りもののような男子メンバーたち。
ただのクラスメイトが、友達になりかける感じ。良かったです。
自由行動の終わった翌日のディズニーランド編も、読みたいと思いました。
『それは誠』の単独受賞と予想します。
『我が手の太陽』も良かったです。
溶接工という職人のプライドを描き切っていますし、専門的な描写は、石田さんの職人芸だと感じました。
ただ、文章のユーモアさが欠けていたことと、ラストが分かりにくかったことで、△にしました。
前回までの芥川賞の予想結果
第168回:井戸川射子『この世の喜びよ』、佐藤厚志『荒地の家族』予想できず
第168回芥川賞受賞作発表と、近年の受賞作で一番良かった作品
第167回:高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』はずれ
【芥川賞予想】第167回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2022年上半期)
第166回:砂川文次『ブラックボックス』当たり
【芥川賞予想】第166回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年下半期)
第165回:李琴峰『彼岸花が咲く島』当たり、石沢麻依『貝に続く場所にて』はずれ
【芥川賞予想】第165回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2021年上半期)
第164回:宇佐見りん『推し、燃ゆ』はずれ
【芥川賞予想】第164回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年下半期)
第163回:高山羽根子『首里の馬』当たり、遠野遥『破局』はずれ
【芥川賞予想】第163回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2020年上半期)
第162回:古川真人『背高泡立草』当たり
【芥川賞予想】第162回芥川賞候補作発表、掲載誌まとめ(2019年下半期)
第161回:今村夏子『むらさきのスカートの女』当たり