第163回芥川賞候補作発表
2020年6月16日、芥川賞の候補5作品が発表されました。
受賞作の発表は、7月15日(水)です。
以下、候補作と掲載誌をまとめ、受賞予想をいたします。
『赤い砂を蹴る』石原燃
初の候補入りです。
石原さんは、劇作家で、太宰治のお孫さんだそうです。
受賞したらかなり話題になりそうですね。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
『アウア・エイジ(Our Age)』岡本学
初の候補入りです。
岡本さんは、「大学教員」との兼業だそうです。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
『首里の馬』高山羽根子
同作は第33回三島賞の候補にもなっています。
第160回の候補『居た場所』、第161回の候補『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』に続いて3度目の候補です。
その後の『如何様』は、第41回野間文芸新人賞の候補になりましたが、第162回芥川賞の候補にはなりませんでした。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
『破局』遠野遥
初の候補入りです。
前作『改良』で文藝賞を受賞しました。
単行本はこちらです。
感想はこちらです。
『アキちゃん』三木三奈
初の候補入りです。
同作で文學界新人賞を受賞しました。
感想はこちらです。
受賞予想
受賞作を○△×で予想しました。
- 『赤い砂を蹴る』石原燃:○
- 『アウア・エイジ(Our Age)』岡本学:△
- 『首里の馬』高山羽根子:○
- 『破局』遠野遥:×
- 『アキちゃん』三木三奈:×
前回の候補作と比べて、今回の候補作は読みやすいです。
その中でも、ぐいぐい先を読ませるのは、
- 『アウア・エイジ(Our Age)』
- 『アキちゃん』
です。
いずれも「謎」が読み手を引っ張ります。
ただ、
- 『アウア・エイジ(Our Age)』は、謎の解決が作為的に感じられる点、
- 『アキちゃん』は、重要なことを不必要に叙述トリックで隠している点
を指摘する選考委員はいるでしょう。
私の予想は、
- 『赤い砂を蹴る』石原燃
- 『首里の馬』高山羽根子
のダブル受賞です。
『赤い砂を蹴る』は、書かなければならないという作家の熱を一番感じました。
大切な人の死はどうすることもできないのは承知の上で、それでも考え続ける自分を肯定する点が良いです。
『首里の馬』は、宇宙、海底、戦場にいる人との交流を描きながら、個人のささやかな生活にも目を向けており、それらが連動しています。
クイズや個人資料館、宮古馬という、一見役に立たなそうなものが、個人の生活で重要性を帯びている点が良いです。
作品には関係ないですが、気になったのが『首里の馬』の作中に掲載されている広告です。
芥川賞の選考委員の作品が、二作続けて広告に掲載されていました。
芥川賞を受賞し掲載誌が売れれば、選考委員の作品も目にする人も増えるという出版社側の忖度だと思ってしまいました。選考に影響はないでしょうが。
ちなみに前回の受賞作(古川真人『背高泡立草』)、前々回の受賞作(今村夏子『むらさきのスカートの女』)は予想が当たりました。
前回の予想はこちらです。
前回の結果はこちらです。
第163回芥川賞・直木賞を予想した番組、ラジオ日本『大森望×豊崎由美 文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想編)』の感想はこちらです。
第163回芥川賞の結果発表、会見、選評の感想はこちらです。