いっちの1000字読書感想文

平成生まれの30代。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』國友公司(著)の感想【日雇いと生活保護】

日雇いと生活保護

私は学生時代、西成に泊まったことがあります。

安かったからです。一泊1200円くらいでした。

治安が悪いことは、なんとなく知ってました。

一泊の値段が破格ですから、理由を調べます。

しかし、背に腹は代えられませんでした。

南千住の格安ホテルにも泊まったことがあったので、大丈夫だろうと思いました。

駅を降りてホテルへ向かう途中、男の怒号が聞こえました。

昼間から何事かと。

歩道で本や雑誌を売ってる人がいて、客と言い合いしてるようでした。

恐くなって、手前のコンビニに逃げ込みました。

夕飯のおにぎりやカップラーメン、飲み物などをまとめて買いました。

ホテルにチェックインしたら、もう外には出てはいけないと悟ったからです。

コンビニを出て外を伺うと、客はいなくなってました。

通行人が行き交ってます。

私はイヤホンをつけて、売り場の前を通りました。

声を掛けられた気もしましたが、イヤホンで聞こえないふりをしました。

ホテルにチェックインしました。

3畳の和室の部屋には、せんべい蒲団が敷かれてました。

大浴場がありましたが、他の客と対面するのが嫌で、行きませんでした。

翌朝まで部屋にこもりました。

外からの物音を消すため、テレビを垂れ流してました。

そんな西成の思い出があります。

本書の紹介で、

国立の筑波大学を卒業したものの、就職することができなかった著者は、大阪西成区のあいりん地区に足を踏み入れた

とあります。

足を踏み入れただけでなく、現場で働いてます。

現場での私といえば、鈍くさくて覚えが悪くてのろまなデキない奴だった頭を使う職業とドカタのどちらが上か、という問題ではないとにかく私はドカタには向いていなかった

著者は、土木現場やホテルのスタッフとして働きます

私が西成に一泊した話など、些末に感じます。

ドヤにはヒエラルキーがあったようです。

一番上は日雇い労働者、その下に生活保護がくる日雇い労働者は生活保護のことを「人生を途中で諦めたドロップアウト組」として見下しているし、生活保護はやはり負い目があり(中略)日雇い労働者の前では大きな顔はできない

土木現場で一緒に働いてた人(宮崎さん)が、生活保護を受給します。

生活保護を受給した宮崎さんと話すと、

毎日毎日、山奥の部屋で一日中テレビを見とるだけや。俺、もう気が狂いそうや。(中略)あのときの俺はイキイキしとったもう勘弁や生活保護を辞退して石垣島でもう一回肉体労働やるつもりや

著者はホテルスタッフでの仕事で、生活保護受給者を見てきました。

置物のようになった生活保護たちの姿を思い出す何もない山奥で置物になってしまった宮崎さんを想像すると、胸が痛んだ

大変な土木の仕事でも、生活保護を受給して置物になるよりは、ましなのかもしれません。

  • 誰にでもできる
  • 自分の代わりはいくらでもいる

そんな仕事であっても、ないよりはましなのかもしれません。

ほとんどの仕事が、誰にでもできるような仕事である自分が普段やっている原稿仕事だって、いくらでも替えが利くのではないかと思うもちろん、「自分にしか書けない原稿を」と思い、誇りを持ってやっているつもりではあるが、そんなのただのうぬぼれに過ぎない

私の仕事も、誰にでもできます。

なんでこんな仕事やってんだろうと、思うこともあります。

特に連休最終日は憂鬱です。

しかし今の仕事を続けてれば、西成で日雇い労働することはありません。

怒鳴り声が飛び交い、いつ死ぬかもわからない仕事をやるよりは、恵まれてる気がします。