いっちの1000字読書感想文

平成生まれの社会人。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』上田啓太(著)の感想【タイトル詐欺だが面白い】

タイトル詐欺だが面白い

タイトルに惹かれて読みました。

著者のことは存じ上げませんでした。

ウェブメディアで連載していた記事の書籍化のようです。

  • 人は
  • 2000連休与えられると
  • どうなるか

主語が「人は」なので、

無職になった人の話だと思いました

私の認識では、2000連休=無職=収入なしだからです。

仕事がなくなり(もしくは会社から休みを与えられ)、

残っているお金でやりくりせねばならないときの、

人間の心理(焦り、諦め)が描かれていると、期待していました。

装丁を見てください。

膝抱えて、汗かいてるじゃないですか。

もし自分が無職になったらどうなるか。

そんな疑問を解消してくれる本だと思ったからです。

ですが違いました。

「人は2000連休を与えられるとどうなるか」という一般的な話ではなく、

「2000日以上出勤しなくても生きていけた人」の個人的な体験です

上田さんは、自分から仕事(チェーン店のカフェ)を辞めています。

「連休を与えられる」のではなく、自ら休んだのです(タイトルと矛盾します)。

なぜ、上田さんは、2000日以上出勤しなくても生きていけたのでしょうか

上田さんの生活は、

  • 家賃3万(折半。光熱費は同居人負担)
  • 月収8~10万(週刊誌の大喜利コーナーへの投稿)
  • 同居人と猫の存在

上田の生活は簡素だ。京都の古い平屋に住み、一畳半の物置で暮らしている大喜利の回答を作って収入を得ている日常には杉松と三匹のネコがいて、他の人間とは会話をしていない

月収が家賃と食費を上回っていれば、生活はできます。

というか、月収あるんですね。

私の認識だと、2000連休してる人に月収はありません。

貯金を食いつぶし、徐々に焦って、仕方なく働くしかない、という展開を期待していました。

それを読むことで、私のやりたくない労働を正当化しようと目論んでいました。

本書には私の人生の踏み台になってもらおうと思っていたのに。

全く違いました。

上田さんはフリーランスで生きていける人です

そう思うと、勝手に抱いていた親近感が消えます。

なんだ、上田さんはそっち側の人なんですね。

そっち側とは、会社で働かなくても生きていける人のことです。

ある程度収入を期待できることを前提に、週刊誌に投稿するのは労働でしょう。

休みではありません。2000連休って嘘じゃん……。

休みの認識が、上田さん(出版社)と私でずれていました。

上田さんにとって、休日ではない日とはどういうときでしょうか。

原稿料をもらって記事を書くことが少しずつ増え、しめきりを意識して生活するようになり、休日の意識は徐々に薄れていった

  • 原稿料をもらって記事を書く:休日ではない
  • 大喜利の回答を作って収入を得る:休日

どちらも労働に思えますが。現在は大喜利連載は終了しているそうです。

やはりタイトルには納得できません。

ただ、読んで損したかというと、そういうわけではありません。

タイトルにつられて結果面白かったならいいじゃんと思うかもしれませんが、違います。著者及び出版社への信頼が薄れます。

面白い箇所は次回書きます。

一つだけ抜粋します。上田さんの卒業アルバムです。

小学校六年の自分は、好きな言葉の欄に「真実」、将来の夢の欄に「正直者」と書いていた

将来の夢を聞かれたら、職業名を書く人が大半でしょう。私もそうでした。

「将来何になりたいの?」の聞き手は、「既存にある仕事」を期待しているからです。

「正直者」と書く小学6年生。恐るべし。