いっちの1000字読書感想文

平成生まれの社会人。小説やビジネス書中心に感想を書いてます。

★★★(超お気に入り本)

『無敵の犬の夜』小泉綾子(著)の感想【指がないこと】(文藝賞受賞)

指がないこと 最初の一文を読んだら、次の文、次の文と、読み進められます。 短文の畳みかけで、最後まで疾走感があります。 主人公は男子中学生。右手の小指と、薬指半分がありません。 4歳のとき、タンスで指を挟んだからです。 父と母とは別居で、祖母と…

『猿の戴冠式』小砂川チト(著)の感想【人と猿の交流】(芥川賞候補)

人と猿の交流 主人公は、女子競歩の選手です。 テレビ中継された大会で、失格になります。 失格になった主人公は、バッシングを受けます。 故意による妨害に見えたからです。 主人公は、家に引きこもります。 競歩のコーチも母も、頼りになりません。 コーチ…

『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』西林克彦 (著)の感想【部分が読めていない】

部分が読めていない 文章を正しく読みたいです。 本書は、『14歳からの読解力教室:生きる力を身につける』犬塚美輪(著)で紹介されてました。 よりよく読もうとするさいに、私たち読み手にとって最大の障害になるのが、自分自身の「わかった」という状態です…

『窓』古川真人(著)の感想【視覚障害者の兄と二人暮らし】

視覚障害者の兄と二人暮らし 主人公は、大学を中退した後、兄と一緒に住んでいます。 兄は目が見えないので、主人公が手助けしています。 兄弟の生計は、兄が立てています。 兄は仕事をし、主人公は家事をします。 兄は出勤前に、窓を開ける習慣があります。…

『列』中村文則(著)の感想①【列とは何か】

列とは何か 主人公は何かの列に並んでいます。 その列は長く、いつまでも動かなかった。 先が見えず、最後尾も見えなかった。 主人公は何のために列に並んでいるか、わかりません。 いつからか、列に並んでいます。 列に並んでいる前後の人たちと、会話はあ…

『それは誠』乗代雄介(著)の感想①【著者の最高傑作】(芥川賞候補)

著者の最高傑作 掲載されている文學界の表紙に、 4人の若者のかけがえのない生の輝きをとらえた、著者の最高傑作! と書かれています。 出版社側が最高傑作と謳った作品で、最高傑作だった試しがあるでしょうか。 ですが、心配無用です。 乗代さんの小説はほ…

『笑いのカイブツ』ツチヤタカユキ(著)の感想【夢を諦める前に】

夢を諦める前に 夢を諦める前に、読むべき本書。 本書を読めば、夢を諦めるべきかどうか、テストができます。 テスト「本書のツチヤさんより、努力しましたか?」 YES:夢を諦めてもOK NO:もうちょっと頑張ってもいいんじゃない? シンプルなテストです。 …

『改良』遠野遥(著)の感想【4回も読んでる】(文藝賞受賞)

4回も読んでる 私は過去3回、『改良』の感想を書いてます。 1回目は、2019年11月。 2回目は、2020年11月。 3回目は、2022年4月(読書メーターで記載)。 bookmeter.com 約1年ぶり、4回目の『改良』。 4回目の感想を書いてるということは、本書を4回読んでま…

『日曜日の人々』高橋弘希(著)の感想【自助グループの存在意義】(野間文芸新人賞受賞)

自助グループの存在意義 「日曜日の人々」とは、自助グループの冊子です。 自助グループとは、悩みや問題を抱えた人たちが集まる場です。 冊子には、メンバーの個人的な体験が書かれています。 拒食症 窃盗癖 不眠症 など、自身の悩みや問題が書かれています…

『カルチャーセンター』松波太郎(著)の感想①【切迫した感情が煮詰まった作品】

切迫した感情が煮詰まった作品 私小説に近いフィクションとして読みました。 マツナミという登場人物は、著者本人だと思われます。 カルチャーセンターは、小説を書いて、読んで、合評するスクールです。 本書は三部構成で、 マツナミが語り手。カルチャーセ…

『我が闘争』堀江貴文(著)の感想①【ホリエモンの自叙伝】

ホリエモンの自叙伝 一気に読みました。 これは僕が長野刑務所で服役していた時に書き始めたものだ。 生まれて最初の記憶から現在までを時系列で辿っていく、いわゆる自叙伝ということになる。 この書き出しに引き込まれました。 捕まる前の堀江さんと言えば…

「東京藝大ものがたり」 あららぎ菜名(著)の感想【3浪するほど情熱を注げるもの】

3浪するほど情熱を注げるもの 主人公の女性が、東京藝術大学に、3浪して入学するまでの話です。 主人公が浪人時代、友人から、 いつまでそんなことしているつもりなの と言われます。 主人公が東京藝術大学に行きたくて、と説明しますが、 みんな もう次のス…

『何もかも憂鬱な夜に』中村文則(著)の感想【芸術は人間を救えるか】

芸術は人間を救えるか ピースの又吉直樹さんの解説が良いです。 様々な作家が人間を描こうと多種多様な鍬(くわ)を持ち土を垂直に掘り続けてきた。随分と深いところまで掘れたし、もう鍬を振り下ろしても固い石か何かに刃があたり甲高い音が響くばかり。(…

『月10万円でより豊かに暮らすミニマリスト生活』の感想①【ものを減らして理想の人生を叶える】

ものを減らして理想の人生を叶える ミニマリストとは、ものを減らすことだけではありません。 ものが減れば部屋がすっきりして、生活しやすい空間になりますが、著者は、理想の人生を叶えるためだと言います。 ミニマリストとは、「持ち物の数」で決まるので…

『ルックバック』藤本タツキ(著)の感想【4コマ漫画を媒介にした世界】

4コマ漫画を媒介にした世界 小学4年生の主人公は、学級新聞に4コマ漫画を載せています。 ある日、担任の教師から、他の生徒の漫画も載せていいかと聞かれます。学校に来ていない生徒の作品のようで、主人公は、 学校にもこれない軟弱者に漫画が描けますかね…

『彼岸花が咲く島』李琴峰(著)の感想【正しいと思うことをする】(三島賞候補、芥川賞受賞)

正しいと思うことをする 主人公の少女は、流れ着いた島で、記憶をなくしていました。 島の海岸には、彼岸花が咲いています。 主人公を発見したのは、同い年くらいの少女でした。彼女の話す言葉を、主人公は理解できません。 「ノロ」という役割を担った女性…

『本物の読書家』乗代雄介(著)の感想【ミステリー純文学】(野間文芸新人賞受賞)

ミステリー純文学 主人公は、母から3万円を貰う代わりに、老人ホームへ向かう大叔父に同行します。 経路は上野駅から高萩駅までで、電車で向かいます。 主人公が、遠い親戚の大叔父から、 彼に送り届けてもらいたい と指名されたのは、自分が読書家だからと…

『1R1分34秒』町屋良平(著)の感想【自分の人生と照らし合わさずにはいられない】(芥川賞受賞)

自分の人生と照らし合わさずにはいられない プロボクサーの主人公は、初戦を勝利しましたが、その後は2敗1分けと、負け越しています。 主人公は21歳なので、私としては「まだまだこれから」と思ってしまうのですが、主人公は違います。敗戦後に頭部CTを撮っ…

『劇場』又吉直樹(著)の感想【第三者の介入で崩れる関係性】

第三者の介入で崩れる関係性 主人公は、売れない劇作家です。 家賃5万円を支払えず、専門学生の彼女の家に転がり込みます。 彼女の実家から送られた食材を食べる主人公は、 人の親から送られた食料を食べる情けない生きもの。子供の頃、こんな惨めな大人にな…

『首里の馬』高山羽根子(著)の感想【にくじゃが まよう からしの答え】(芥川賞受賞、三島賞候補)

選評を読んで 吉田修一さんは芥川賞の選評で、 高山さんはおそらく「孤独な場所」というものが一体どんな場所なのか、その正体を、手を替え品を替え、執拗に真剣に、暴こうとする作家 と書いています。 確かに、『首里の馬』の登場人物はみな孤独な場所にい…

『モモ』ミヒャエル・エンデ(著)の感想【時間は命】

時間は命 「モモ」は主人公の名前です。 親や兄弟はいなく、町のはずれにある劇場跡に一人で住む、浮浪少女です。 モモは「相手の話を聞く」ことに長け、彼女のそばには人が集まります。 モモの話を聞き方は、 じっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです…

『諦める力』為末大(著)の感想【勝つために諦める】

勝つために諦める 高校生の為末さんは、 100m 200m 400m の陸上選手でした。すべて全国トップクラスです。 ですが、インターハイで監督が100mのエントリーを取り消したことをきっかけに、 400m 400mハードル に、競技を絞ります。 なぜなら、 400メートルハ…

『土に贖う』河﨑秋子(著)の感想【三島賞候補】(繁栄し衰退した産業の歴史)

繁栄し衰退した産業の歴史 北海道を舞台に、繁栄・衰退した産業の歴史が描かれます。 描かれる産業は、 養蚕 ミンクの養殖 ハッカ油の生産 馬の装蹄 レンガ工場 などです。 それぞれが、一つの短編として構成された短編集です。 短編ごとに関連性はありませ…

『湯治』高橋弘希(著)の感想【体の傷と心の傷を癒す一人旅】

体の傷と心の傷を癒す一人旅 総合商社に勤める34歳の主人公は、足柄の民宿へ、湯治に行きます。 少年時代に、鉄棒から落ちたときの膝の古傷を癒すためです。 妻は会社を休めなかったので、主人公は一人で旅に出ます。 湯治に行くことにしたのは、同僚に勧め…

『首里の馬』高山羽根子(著)の感想【わからないことは怖い】(芥川賞受賞、三島賞候補)

わからないことは怖い 主人公は、中学生のときから10年以上、沖縄の資料館で資料整理をしています。 公的な資料館ではなく、補助金などの収入もありません。 知人が人知れず、情報を蓄積した場所です。 主人公は、資料の整理を無償で行っているため、他に仕…

『指の骨』高橋弘希(著)の感想【戦争の敗残者】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補、三島賞候補)

戦争の敗残者 太平洋戦争が舞台ですが、敵軍との戦闘がメインではありません。 赤道より南の半島で負傷した主人公が、野戦病院に運び込まれてからがメインです。 山裾に建てられた野戦病院には、 片足のない兵士 マラリアで衰弱した青黒い顔の兵士 顔中に包…

『午後の最後の芝生』村上春樹(著)の感想【初夏に読みたい短編】

初夏に読みたい短編 夏の匂いや暑い日ざしを感じるので、初夏の時期におすすめです。 ストーリーはシンプルで、芝刈りのアルバイトをする大学生の、バイト最終日の話です。 バイトを辞める理由は、遠距離に住む彼女に手紙で別れを告げられ、金をためる必要が…

『銃(小説)』中村文則(著)の感想【銃を見つけたら】(新潮新人賞受賞、芥川賞候補)

銃を見つけたら 道端で銃を見つけたらどうしますか? それを誰にも見られていないとして。 選択肢は3つです。 警察を呼ぶ(警察に届ける) 見て見ぬふりをして立ち去る 拾う 普通は、1か2ですよね。 この作品の主人公である大学生は、銃を拾います。 冒頭の…

『老人と海』ヘミングウェイ(著)の感想【ぶちのめされても負けない】

ぶちのめされても負けない 読むまでの印象は、 老人が、海で大きな魚を釣り上げる奮闘記 辛いことでも、我慢し苦労すれば、良い結果が得られる でした。全く違いました。 老人は、命を懸けてカジキマグロを釣り上げ、釣り上げた後も命がけだったのです。 特…

『勝ち続ける意志力』梅原大吾(著)の感想【勝ちを目的にしない生き方】

勝ちを目的にしない生き方 著者の梅原さんは、プロゲーマーです。 小学生の頃から、ゲームへの意識が並外れていました。 唯一の存在だったゲームを諦めたら、続けることをやめたら人生が終わる。 同級生でサッカーをする人が増えても、一人でゲームを続けま…